白と黒の呪い戦線

界 あさひ

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白と黒の邂逅

003 ミナミ

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 何の躊躇いもなく銃を撃ち、高笑いした真っ黒な女に対して、大柄の賊のリーダーは、
「何を笑ってやがるこのアマぁ!!」
と怒鳴り散らかした。
 銃で撃ち抜かれたと思われたこの大男は、寧ろピンピンしていた。ナガトは、この男の「呪い」は「硬化」であるのを知っていた。
 全身をバキバキに固めた大男は、手足を縛られ、横向きで倒れているナガトの上にドサっと腰を下ろした。
「うっ」
 バキバキとなった大男に乗られ、ナガトの口から思わず声が溢れる。
 大男は口を開いた。
「俺の名は、カイド。俺が「呪い」を見せて生き残った奴はこのガキ含めて2人だけだ。尤も、このガキも今から死ぬが、お前を殺してからなぁ!!!」
 カイドと名乗った賊のリーダーはミナミに向かって吠えた。
その余りの迫力にナガトはビビったが、ミナミは「ふん」と鼻で笑い、
「知ってるか?雑魚ほどよく吠えるんだ」
と一蹴した。目の前に突如現れた女が、まるで余裕であったのがナガトには信じられなかった。
 カイドは憤り、
「その減らず口、後悔させてやる。」
とミナミに向かって走り出した。カイドは全身を硬化させたままミナミを殴り続けた。
 が、ミナミはその全てを避け、受け流し、躱した。
 ナガトはその体捌きに息を呑んだ。身体強化の呪いを持つ自分以上と思うほどだった。しかし、ナガトはミナミが不利であると考えた。カイドの「呪い:硬化」は攻防一体というべき代物だ。仮にミナミがナガトの攻撃を全て避けても、銃ですら傷をつけられなかったナガトにミナミは攻撃をすることはできないだろう。つまり、ミナミに勝ちはないと考えた。
 しかし、ナガトのこの考えは全くの杞憂に終わる。
 カイドのラッシュを避けながら、懐から取り出したナイフで、ラッシュの合間に二、三小突いたように、ナガトには見えた。
 たかがナイフは硬化には無駄であるとナガトが考えたその時、カイドの体から血飛沫が上がった。何が起こった!!?
 ミナミが口を開いた。
「もし仮に、全身の全てを硬化させていたなら、あんなに素早くは動けまい。早く動くためには必ず硬化出来ない場所がある。そう、例えば肘の内側や膝の裏側、つまり関節の裏だ。」
 そう言って、距離を取ったカイドに、右目大きく開き口角をこれでもかと上げ、笑ってみせた。まるで悪魔の形相だ。
 カイドはゾクっと怖気付いたのか、更に距離をナガトの元まで下がり、手足をロープで縛られたナガトを人質に取り、カイド自身の硬化した右手をナガトの首に突き当てた。
「こいつを殺されたくなければ!そこを動くな!!」 

 はぁ!!!!!!?勘弁してくれ!あの女は俺を助けにきたわけじゃないだろう!?こんなスラムの奴らは人のことなんか気にしない。俺の事を見捨てる!!
 頼む!動かないでくれ!助けてくれ!誰でもいいから!

 ナガトはそう懇願したが、ミナミはこちらに銃を向けていた。
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