白と黒の呪い戦線

界 あさひ

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白と黒の邂逅

004 ナガト

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 首筋にはカイドの硬化した指が当てられ、ミナミに銃口を向けられ、改めて死の淵に立たされた。まるで、今にも崩れそうな、断崖絶壁の崖の端に立たされた気分である。
 腐ってもスラムの出身である。今まで何度も死線を超えてきた。死にかけたこともあった。吐き気を堪えて、何とか自分を鼓舞した。
 絶対にここから生きて帰る!!

 ナガトの目を見て、ミナミはまた「ふん」と鼻で笑うと銃を改めて構え直した。
 
 ナガトは少し先の銃を自分に向けた女と目があったのがわかった。目があった、というよりは、アイサインを貰った気がした。戦えと、ただ戦えと語りかける様な目だった。

 ミナミが引き金を引いた。銃声が響くのと同時に、ナガトの足を縛っていたロープが、チッという音を立てて銃弾によってちぎられた。
 両手は後手に縛られたままであるが、これで足は自由になった。ナガトは瞬時に全身に力を入れる。赤い眼が光を帯びる。両足に力を入れてカイドの側に翻る。
 一瞬の出来事に、反応が遅れたカイドは「なっ」と声を漏らし、顔を引きつらせた。が、すぐに対応して、殴りかかってきた。
 ナガトは強化した身体能力を以って、カイドの右の大振りを躱し、みぞおちに狙いを定め、本気の回し蹴りを放った。バキン!!という音と共に、強化された蹴りの衝撃でカイドはズザザと後ろへ体を持っていかれた。
 硬化相手に真正面からの蹴りは流石に悪手である事は理解していたが、想像以上に痛い。骨がイカれた気がする。ナガトの目に涙が滲んだ。が、死ぬよりはよっぽどマシだと自分を奮い立たせ、目の前の敵と距離を取り、何者かもわからない黒い女、ミナミの元まで下がった。
「上出来だ。やるじゃねぇかガキ。」
不意にミナミに褒められたナガトは、照れ隠しにか、キレながら
「うるせぇ!もし銃弾が俺に当たってたらどうするつもりだったんだバカ!!」
と返した。誰かに褒められるのはいつぶりだろう。こんな時なのに少し嬉しくて、気恥ずかしい感じがした。
 
 ミナミが一歩前に出て言った。
「さぁ、終幕だ。
 が、お前のくだらん自己紹介に免じて、この私も最後に名乗ってやろう。
 私はミナミだ!」
 その名を聞いた瞬間、立ち上がっていたカイドの目の色が変わった。
「なっ!!?ミナミだと!?まさか、お前が!?王国一の天才犯罪者!!なぜこんな所に!!?」
 ナガトには全く何のことか分からなかったが、ミナミはまた「ふん」と鼻を鳴らして
「やれやれ、有名人で参ったな」 
と満更でもない様にいつしかの悪魔の様な笑みを浮かべた。
 立ち上がったカイドに向かってナイフを再び取り出して、完全に蚊帳の外となったナガトを傍目にミナミは言い放った。

「さぁ、チェックだ。」
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