least common multiple

優未

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 ネットで調べた情報によると、3回目くらいのデートで付き合うかどうかを判断するらしい。ちなみに今日がその3回目だったりする。もし久田くんに返事を求められた場合、どう答えればいいだろうか。もしくは、今日で久田くんの中でも答えが出ただろうか。

 頭の中で考えていることと、実際に取る行動が異なるのはよくあることだ。地味な私と久田くんは別世界の人間であって、そもそも交わるはずもないと決めつけていた。恋愛の対象かどうかなんて思いすらしていなかったのに。素敵な人が目の前に現れたからといって好きになるとは限らない。なんて考えはすっかりどこかへ行ってしまっていた。恋愛に不慣れな人間が、彼のような人に好かれて好意を持たないなんて無理ではないだろうか。

 私はちょろい。

 毎日連絡を欠かさず、自分を好きだと言ってくれる。休日を一緒に楽しく過ごせて、強引なわけでもなく、こういうことに不慣れな私に合わせてくれているのも分かる。やっぱり私が相手じゃなくてもいいんじゃないか。彼が与えてくれるものに対して、私が返せるものがあるのか…と思っていたところでその時は来た。

「俺と付き合うか考えてくれた?」

 やはり目安は3回らしい。久田くんは私と付き合ってもいいと思ってくれているようだ。

「そろそろ返事がほしいなって思って」

 恋愛に関して負け知らずだろう彼が自信のなさそうな顔を見せる。みいちゃんの言う通り、主導権は私にあるらしい。

「一緒にいると楽しいし、久田くんのことは好きだと思う」
「じゃあ」
「でもね」

 違う世界だと思っていた人と向き合うことで惹かれてしまったのは事実だが、このまま付き合っていいのかと考えると最初の自分の考えがストップをかけてくる。そのまま飛び込んでしまえばいいと分かっているのに、冷静な自分が邪魔をしてくる。

「私じゃ釣り合わないよ」

 もっといい相手がいる。ちゃんと努力して自分を向上していける人が。私は釣り合うための努力はきっとできない。

「それは俺を振る為の体のいい断り文句?」
「違う。久田くんみたいなちゃんとした人と」
「俺がちゃんとしているように見えるんだったら、そういう俺にしてくれたのは詩織だから」
「私が?」

 何か彼にきっかけを与えるような行動をした覚えがない。

「友達と話していたでしょ。勉強できる男がかっこいいって。あと、人に合わせて進路決めるなんてありえないとか。いい大学行っていい会社に入って」
「……」
「?」
「あれはその。マンガの感想で」

 これは昔から友達とよくする会話で。覚えしかない。まさか聞かれていたなんて恥ずかしすぎる。

「でも、本心でしょ」
「そうは思うけど、他人に強要する気はなくて」
「分かってるよ。俺が勝手にそうしたかっただけ」

 それで実現できてしまうなんてすごい人だ。いや、もちろん努力もあるが元々の能力が桁違いだ。

「自分で理想の男を作ったんだから、釣り合わないとか言わないで。それともまだ何か足りない?」
「むしろ有り余っています」
「ふっ…何それ」
「理想を聞かれたら色々言っちゃうけど、全部を満たす必要もないというか。久田くんはそれ以上というか」
「ちゃんと俺のこと見てくれてるんだ。嬉しいな」

 最初の自信なさげな顔はどこへ行ったのか。余裕たっぷりの表情でこちらに微笑みかけている。

「落合詩織さん、あなたのことが好きです。俺と付き合ってください」
「お手柔らかにお願いします」


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