Rock You

sforzando

「今度ライブやるんだ。興味があったら来て。チケット渡しておくから」

手だけを振って別れたはずのガクが息を切らしながら渡してくれたチケットを眺める。

私にとってギターやライブというものは、自分を悲しくさせるものだった。

多忙な父と一緒に過ごした記憶があまりない。

学校の行事も、ピアノの発表会も来てくれたことはない。

周りの人から父について聞かれることもあるが、自分よりもよっぽど詳しいではないか。

ガクだってその1人だ。

父と関わらない道を進もうと決めていたのに、いつのまにか父の影響を受けた人間と一緒にいる。

「ありがとう。予定もないし行ってもいい？」

「もちろん！俺が誘ったんだから」

我ながらちょっとした反抗心か、なんとなく避けてきた場所。

私の立つステージはこんなに騒がしくはない。

音楽で全身を包まれて、観客が熱狂して大きなうねりになる。

騒々しいはずなのに、神経が研ぎ澄まされるような不思議な感覚がした。

ひきつけられるただ一点に。

涙で視界がにじんでくる。

あなたと私はあまりにも別世界の人間だ。

それが少し寂しくもあった。