No seek, no find.

優未

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「俺とのことは遊びだったの」

 通勤途中に、職場の人間も大勢いるなかで、しかも大声でこの男はなんてことを言うのだ。

「お見合いなんてしないで。結婚なら俺としよう」

 周囲がざわついているのが嫌でも分かる。一刻も早くこの場から去りたい。そう思うのに、絶対に振りほどけない力で左手を掴まれている。男女による力の差はもちろん、相手は騎士だ。私にはどうすることもできない。

「こんな目立つところでやめてください。離してっ」
「それなら避けるのをやめてくれ」
「別に避けてなんていないです」

 そもそも関わるべきではなかったのだ。私たちは元の形に戻っただけにすぎない。それなのに縋るような眼差しでこちらを見てくる。

「お願い、俺を捨てないで」

 捨てるも何も彼は私のものではない。話すこともないしさっさと解放してほしい。私たちの様子をうかがう人の数がどんどん増えてきている気がする。

「これから仕事なんです。あなたもそうでしょう。不真面目な人は嫌いです」

 そう伝えればしぶしぶ左手は解放された。

「仕事が終わったら迎えに行くから。話をしよう。先に帰らないでね」

 それだけ告げると彼は去っていった…と同時に私たちのやりとりを見ていただろう同僚が声をかけてくる。もっと早く割り込んでくれればよかったのに。

「副隊長のこと振ったってこと?付き合っていたなんて知らなかった」
「最近副隊長がキラキラしていないって思っていたのよ」
「それじゃあ今度僕と食事に行きませんか」
「あんたは黙ってなさい」

 皆が一斉に話し出すものだから何が何だか分からない。私は目立たず日々黙々と仕事をこなしてきたというのに。朝の騒動は自分の部署以外にも話が広がり、昼休みにはたくさんの人に囲まれることになった。何故かただの痴話喧嘩だと思われているようだ。

「だから違うんです。そもそも私たちは付き合っていませんから。そうでないとお見合いなんてしません」
「まだ正式な話なわけじゃないし、一旦保留にしておくね」

 紹介を頼んだ上司がまさかの発言である。昨日までノリノリだったではないか。私はそろそろ結婚相手を見つけたい。そう思っていただけなのに。

 どうしてこうなった!?
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