No seek, no find.

優未

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「副隊長、待ってるわよ」

 定時に仕事を終えると、同僚から告げられた言葉に少し緊張する。話とは何だろう。心に決めた相手がいるからもう2人会うのはやめよう?それなら朝の結婚だの捨てないでといった発言の数々がおかしくなる。あの時の女性にフラれたから手近なところで済ませようとしている?あの必死さが不思議すぎる。本当に私のことを…。

「お疲れ様」
「…お疲れ様です」
「行こうか」

 彼のあとをついていくと、いつものようなレストランではなく、落ち着いた雰囲気の喫茶店に辿り着いた。個室に通されて2人きりになる。

「戻ったら伝えたいことがあるって言ったよね」
「はい」
「この前、副隊長になったんだ」
「おめでとうございます」

 伝えたかったのは昇進のこと?それならとっくに職場で周知されている。わざわざ個人的に伝えてもらわなくてもいい。喜ぶべきことだろうに何やら少し打ちひしがれている。

「昇進とあわせて君にプロポーズしようと思っていたんだけど」
「はい?」
「俺は…俺達は付き合っていると思っていて」
「あの女性は?」
「女性?」
「遠征前に女性と一緒にいるのを見かけたんです」

 流石に忘れたとは言わせない。何故かと言うと―――

「2人で宝石店から出てきたのを」

 何でもない関係で行くような店ではないはずだ。

「あぁ。なるほどね」
「他にお相手のいる人とは付き合えません」
「誤解だよ。その人は俺の姉だ」
「お姉さん?」
「うん、その店で働いているんだ。今から行ってみる?」
「そんな突然…」

 しかもご家族と会うだなんてどうかしている。だが彼は乗り気のようだ。

「元々予定があったし丁度いいかも」
「いや、でも」
「いいから、行こう」

 朝と同じように振りほどけない力で手を握られて喫茶店を出る。普段はここまで強引な人ではないはず。一体どうしたというのだ。今日みたいな彼を私は知らない。

 戸惑っているうちに、あの時彼を見かけた宝石店に辿り着いた。思えば仕事終わりにここまで来たわけだが、一応身なりに気を使っていてもこのお店に入っても平気なのだろうか。不安になってきた。日を改めてもらうよう言おうとするも、店の扉が開いてしまった。

「いらっしゃいませ…あら。オーガスタ…と」

 あの時見かけた女性が目の前に現れた。遠目に見た時には気が付かなかったが、目元の感じが似ているし、何よりこのキラキラ感は血筋を感じさせる。

「あなたがアマラさんね?」
「はい」
「2人で来てくれたってことは、プロポーズは上手くいった…ってわけではないのかしら」
「姉さんのせいで勘違いされたんだ。事情を説明したい」
「あらあら」

 お姉さんが店の裏から何かを持って戻ってくる。私のことを見ながらニコニコしている。

「結婚したい子がいるから指輪を用意したいって言ってね」
「好みもあるだろうから目星だけ付けておいたんだ…」
「アマラさんはどれが好きかしら」

 気が付けば流されるまま指輪を選び、店を後にする。

「アマラ、俺と結婚してくれる?」
「そもそも私達は付き合ってもいないですし」
「俺はもう十分だと思うけど」
「じゃ、じゃあ結婚前提にお付き合いしてください」
「喜んで」

 この時の私は知らなかった。信じられないスピードで外堀を埋められ、半年後には式を挙げることになるだなんて。


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