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優未

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魔法騎士は基本的にどこにも所属を持たない独立した存在である。単独での任務もあれば、どこかの隊に合流するなど任務の形式を問わない。ただし、人員に限りがあることからどの任務へ割り振るかの裁量は主に王族に委ねられている。カルミエ様から任務の依頼を受けたのは、リナリアと出会った夜会の後だった。

「クレマチスの娘と面識があると聞いた。あの家には不正など黒い噂が絶えない。婚約者のふりをして調査をしてくれないか」

「かしこまりました」

「お前が私についていると知ったらエンレも驚くだろうな」

「魔法騎士に所属はありません。任ぜられるままに動くのみです」

第一王子カルミエと第二王子エンレの王位継承争いは激化の一途をたどっている。

能力、血筋の正統性、魔力の強さ、性格―――それぞれの派閥が己の正義をもって主張を繰り広げているが、どちらにつくかなんて選択肢はそもそもない。

一刻も早くこの争いを収束させなければならない。

クレマチス家はエンレ殿下派の筆頭というわけではない。権力を持つ立場にもなく、本来は警戒されるような人物とは言えない。何故これほど敵視しているのか…



「調査書に目を通しましたが、クレマチスは無実かと」

「それはサフィールの提出したものだろう。婚約者の家族に対して判断が鈍ったんじゃないか、信用できない」

「少なくとも、娘のリナリアは何も関与していないはずです」

「国家反逆罪の場合、そうも言っていられない」

クーデターの計画が発覚し、クレマチス親子は投獄されたが疑問の残る点が多い。国の要職者が集まったものの、派閥ごとに見解が分かれ、一向に結論が出そうにない。平行線をたどる話し合いに終止符を打ったのは、隣国より急遽帰国した第二王子エンレ殿下だった。


「俺の実力を認めないやつが悪い!」

不快な叫び声がこだまする。もうこの場にいる必要はないと判断し、リナリアが捕えられている牢に向かう。今にも消えてしまいそうな声で婚約者の名を呼んだ。

「逃げてしまえばよかっただろう」

「父の罪を暴くために動いた彼に、私を逃がすなんて不正をさせるわけにはいかないでしょう」

「君は無実だ」

「国家反逆罪はそうはいかないわ」

こんな時まで一途である必要はないというのに。

「最後くらい会いに来てくれるかなって期待していたんです。だって、あの時とても悲しそうな顔をしていたから」

最期まで、彼女は婚約者のことを愛おしそうな表情で心配していた。


「今のは…?」

急に意識を取り戻す。魔力量の回復と共に、変な夢を見る回数が明らかに増えている。だが夢と呼ぶにはあまりにも鮮明な映像が脳内に流れ込んでくる。

―――彼女はサフィールのことなど知らないはずだ

自分は魔力以外にも何か大事なものを失っている。そんな気がした。
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