1 / 13
誰もがお姫様だった
しおりを挟む
自分の狭い世界しか知らなかった頃は、この部屋は確かに素敵なお城だった。
お気に入りのものに囲まれて、私はお姫様だと思っていた。
それが勘違いだと教えてくれる大人はいなかった。
私が物語の主役ではないと知ったのは王子様の婚約者を決めるパーティーだった。
「ラナキュラス家のご令嬢か」
「リリー様素敵」
「メラルダ様はダメだったか」
周りの声など全く聞こえてこなかった。幸せそうに見つめあう2人の姿がにじんで見える。私は選ばれなかったわけではない、その目に入りすらしなかった。この会場に入った時から気が付いていた。私以外のすべてが輝いて見えた。
私は自分が好きなことをしていただけで努力なんてしなかった。そのままの自分を愛してもらえるなんて当たり前のことではない。相手の好みを知ろうとか、自分のことを知ってもらおうと何か行動をしたわけでもない。そもそも、王子様という存在に憧れただけで好きというわけでもなかった。お姫様だから選ばれるはず。そんな傲慢な考えしかなくて。
私はただの参加者Aでしかなかったのに。
「ミクリィ?」
涙を流す娘を心配して両親が声をかける。
「お2人がとても素敵だから感動してしまって」
これもまた事実で。まるで物語から抜けてきたのではないかというくらい眩しかった。私も大人になったら、もっと勉強を頑張ったら、綺麗なドレスを身に着けたらあんな風になれるだろうか。いつか王子様が迎えにきてくれるかもしれない。
幼い頃の私はどこまでも夢を見る子供だった。この日を境に自分にできることは何でも頑張った。しかし、努力すればするほど分かったことがある。
私はやはりお姫様にはなれないのだ。
お気に入りのものに囲まれて、私はお姫様だと思っていた。
それが勘違いだと教えてくれる大人はいなかった。
私が物語の主役ではないと知ったのは王子様の婚約者を決めるパーティーだった。
「ラナキュラス家のご令嬢か」
「リリー様素敵」
「メラルダ様はダメだったか」
周りの声など全く聞こえてこなかった。幸せそうに見つめあう2人の姿がにじんで見える。私は選ばれなかったわけではない、その目に入りすらしなかった。この会場に入った時から気が付いていた。私以外のすべてが輝いて見えた。
私は自分が好きなことをしていただけで努力なんてしなかった。そのままの自分を愛してもらえるなんて当たり前のことではない。相手の好みを知ろうとか、自分のことを知ってもらおうと何か行動をしたわけでもない。そもそも、王子様という存在に憧れただけで好きというわけでもなかった。お姫様だから選ばれるはず。そんな傲慢な考えしかなくて。
私はただの参加者Aでしかなかったのに。
「ミクリィ?」
涙を流す娘を心配して両親が声をかける。
「お2人がとても素敵だから感動してしまって」
これもまた事実で。まるで物語から抜けてきたのではないかというくらい眩しかった。私も大人になったら、もっと勉強を頑張ったら、綺麗なドレスを身に着けたらあんな風になれるだろうか。いつか王子様が迎えにきてくれるかもしれない。
幼い頃の私はどこまでも夢を見る子供だった。この日を境に自分にできることは何でも頑張った。しかし、努力すればするほど分かったことがある。
私はやはりお姫様にはなれないのだ。
2
あなたにおすすめの小説
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
全てから捨てられた伯爵令嬢は。
毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。
更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。
結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。
彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。
通常の王国語は「」
帝国語=外国語は『』
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる