imitation

優未

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王子様の傷心

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「観劇は楽しかった?」

「はい!私のご贔屓の方のお役がまさに理想の騎士様といった凛々しいお姿で。舞台写真も思わず購入したのですが、見てくださいこの鋭い眼差しを…申し訳ありません」

 アスター様も騎士様に負けないくらいの鋭い眼差しを舞台写真に向けている。メラルダ様との感想戦が予定より短かったせいで興味のない人にべらべらと話してしまった。これは怒っているだろうか。

「家に帰ったらいくらでも見ていいから。今はしまってもらえるかな」

「失礼しました」

「君は王子様とか騎士様が好きなの?」

「あくまで物語の登場人物として好きと言いますか」

「物語の王子様みたいな男が現実にいたら?例えば…マクレーンとか」

「……」

「泣くほど好きだったんでしょ?」

「?」

「マクレーンを。彼の婚約者のお披露目パーティーに僕もいたんだ」

「……違います!」

 あのパーティーの後、彼の婚約者候補から外れた令嬢たちに婚約を申し込む為に多くの令息が集まっていたのは覚えている。アスター様は気に入った方がいらっしゃらなかったのかしら。

「じゃあどうして泣いていたの。声をかけようとしたらもう会場に姿はなかったし。家名も分からないし…」

 ん?そもそも私の涙がなかなか止まらなかったせいで会場から離れて、そこで同じく泣きはらしたメラルダ様と会って何故か意気投合してそのまま帰路について……アスター様を見かけた記憶すらない。

「それは自分が情けなくなったといいますか。世間知らずの子供だったのです。何も分からず自分が選ばれるものだと思い込んで…あの頃特にお姫様に憧れていたんです。自分に酔っていただけで恋愛感情はありませんでした」

 思い出すだけで顔が赤くなってしまう。早く家に帰りたい。

「でもあの方に感謝もしているんです。このままではいけないと気付かせてもらえて。それまでサボっていた勉強や習い事も真面目に取り組むようになって…努力したところで限界はあって私は平民上がりの貴族でしかないですけど」

「君のことをそんな風に思っていたら、あんなに求婚してくる男はいないよ」

「それは我が家の」

「財産目当ての男ならもっといるはずだ。お父上に聞いてみるといい。縁談の申し込みはたくさん来ていたんじゃないかな」

 父が私の意志を尊重して断ってくれていた?

「僕は君が勘違いしてくれて助かったけど、もっと努力の成果と君自身の魅力に自信を持ってほしい」

「こんなに誰かに褒めてもらったのは初めてです」

「本当かなぁ…でも自覚しちゃうと…あぁ…」

 この日のアスター様は何となくいつもの彼らしくなくて、ぼそぼそと何か呟いては溜息をつくことが多かった。
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