俺がモテない理由

秋元智也

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第六十四話 馬車での旅路

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ナオはハッキリと言い放ったのだった。
いわば素直なのだが逆を言えば融通が利かない。
お世辞は言わないし、人間に惚れることもない。
まぁ、魔族なのだから敵に絆される事もないのだ
ろう。

そして、今回はナオの両親も生きている。
俺たちが恨みを買う理由もなくなったのだ。

そして何よりも、サキュバスの魔眼持ちが仲間に
加わった事が一番大きい。

「頼りにしてるぜ!ナオ」
「期待されても私は戦うのは苦手だが?」
「それでもいいよ。君には戦闘ではなく、その目
 で見てほしいんだよ」
「そうそう、魔眼はサキュバス特有のものだし、
 俺たちにはその魔眼で奴の心臓の場所を見て欲
 しいんだからさ。それに……ナオは魔王様に直
 接あって聞きたいんだろ?俺たちといれば絶対
 に会えるからさ」

魔族は末端までは魔王様に拝謁できない。
だから、末端の魔族は幹部に騙されやすく、前線
で使い捨てにされる事が多いのだ。

「見返してやるんだろ?ナオなら出来ると思うぞ」
「なっ……人間なんかに言われても嬉しくない…」

ひねくれたような言い方だったが、確実に響いて
いる気がする。

まぁ、大人しくしていてくれれば問題ない。
俺は、誠治を振り返ると頷いたのだった。

カンカンカンカンッと出発の合図が鳴った。
乗り合い馬車は座席の分だけチケットを売る。

今回俺らが5席取ったので、残りは少なかったの
だろう。

数人の旅人が乗り込んでいく。

「そろそろ出発するぞ~」

業者の声がすると、俺たちは慌てて馬車へと乗り
込んだのだった。

揺れる度にお尻が浮き硬い椅子に当たる。
これは、実に痛い。
道も舗装されておらず凸凹の開拓道を通る。

「これって休憩あったっけ?」
「陸、大丈夫か?」

心配そうに聞いてくるモンドに苦笑いを浮かべた。
筋肉でできているモンドや、状態異常無効の勇者
は平然とした顔で座っていた。

「モンドは痛くないのか?」
「あぁ、これくらいは慣れているからな。まる一日
 乗っていても平気だぞ?」
「……まじか」

誠治の方をチラッと見ると、目が合った。

「陸、お尻が痛いなら、服でも敷く?」

そう言うと誠治は上着を脱ぐと渡して来た。
そんなやわじゃない。
と言いたかったが、どうにも腰や尻にゴンゴンと
当たるせいか、段々不快になっていく。

「そうだな……借りる……」

少し恥ずかしいが、自分の上着を腰に巻きつけ腰
をカバーし、誠治の上着を尻に敷いた。

これで少しはマシになった。
半日、ずっと座りっぱなしで馬車は進んでいく。

お昼を少し過ぎた所で、馬の餌と水分補給で休憩
となる。
その間は、近くなら離れても平気だった。

「ん~~~ずっと座ってると結構辛いな…」
「陸はもっと身体を鍛えたらどうだ?」

モンドは当たり前のように伸びをすると、言って
きた。

「普通じゃない鍛え方している人に言われたくは
 ねーけどな……」
「勇者はピンピンしてるようだぞ?」
「あいつは別格だろ?」
「なら…聖女も?」
「それは……自分で回復魔法かけてるだろ?」

俺が当たり前のように言うと、レイネは当然とで
も言うように胸を張った。

「人間は弱いのか?それともお前だけが弱い?」
「それは断じて違うからっ!俺がデリケートなだ
 けだからっ!」

ナオが追い打ちをかけるように言うので、俺は
全力で否定したのだった。



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