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第六十五話 過去の失態
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休み休み馬車は、呑気に峠を越えていく。
長距離移動用の馬車なのだが、この世界ではイスは
ベンチ式で、硬い木材で作られている。
旅をする人は、それが普通と思っているのか誰一人
文句は出ない。
俺だって魔法は使える。
ただ回復魔法だけが苦手なだけなのだ。
そもそも、回復系や呪解の魔法や、解毒魔法などは
魔術師の分野外だからだ。
神官などが使う魔法で、それなりの徳を積まないと
使えないと言っていた。
だが、俺からしたら回復系だけが使えないという事
でしかない。
色んな攻撃魔法を使えるか、回復特化かといわれた
ら、もちろん前者を選ぶだろう。
錬金術という便利なものもあるし、回復ポーション
さえ作れば問題ないからだった。
錬金術は魔力と知識があれば誰でも出来る。
だから過去の俺は必死に学んだのだ。
俺を嫌って、回復してくれない聖女レイネがいるの
で、必須だったのだ。
野宿を挟んで、二日後やっとツィーゲオの街に辿り
ついたのだった。
確か、前に会ったカップルの男性がツィーゲオの
領主邸で働くと言っていた気がする。
「なぁ~誠治、あの時のカップルって確か領主の
所で労働させられるって言ってなかったか?」
「うん、そうだね。確か父の事業で負った負債分
を働いて返すって言ってたはずだよ?」
「ちょうどいいから、挨拶に行こうぜ?」
「……陸?」
確か、あの時に領主邸で働くと人格が変わってし
まうという話をしていた。
そこでユニコーンを一緒に見てお互いの愛を確か
め合ってから向かうと言っていたのだった。
今、領主はどうなっているのかを確かめるチャン
スだと思ったのだ。
「ナオ、ちょっといいか?今から領主に会いに行
くから……」
「なら、私は別行動だな。勇者と一緒にはいけな
いだろう?」
「待った、ナオに重要なお願いがあるんだよ。領主
が人間なのかを見てほしい」
「はぁ?それは……分かった。一緒に行って教え
ればいいのか?」
「あぁ、そう言う事だ」
俺が『人間かどうかを見て欲しい』と言った事で
モンドも気がついたようだった。
「陸、領主がおかしいって言うのはそう言う…」
「あぁ、多分な。おかしいじゃなくて、もう遅い
かもしれないがな」
街に着いて早々に宿を取ってから領主へと会いに
行く。
勇者が挨拶に行くのは、普通の事だったから誰か
らも咎められる事はなかった。
ただ、勇者パーティーにフードを被った怪しげな
人物がいる他は何も問題なかった。
門番の前で勇者である証を見せた。
「勇者様御一行ですね。我が主人に伝えて参りま
すので、少々お待ちください。そちらのフード
の方は……?」
「僕の仲間だよ?ちょっと怪我をしてしまってね
顔は見せられないんだ」
「そうですか!ご苦労様です」
誠治が落ち着いた声で話すと、門番は納得したの
かすぐに屋敷の中へと走っていった。
帰って来ると、すぐに中へと通されたのだった。
中庭には花が咲き乱れ綺麗なはずなのに、なぜか
不気味に感じた。
『ニクノクサッタニオイ……イッパイスル』
「肉が腐った臭いって……やっぱりか……」
俺の中で声がすると、つい口に出していた。
「陸、臭うの?」
「いや、俺の中のアレスがそう言ってたんだ」
「やっぱり魔物だと鼻も効くんだね。この屋敷に
生きた人間は何人いるか聞いてくれる?」
「アレス、わかるか?」
『ヤシキノナカ…ゴヒキ死体…ヒトリハマゾクダ』
「おっけおっけー、俺ら以外は全員死体だ」
「なるほど、さっきの門番もって事だね。気が乗
らないけど、さっさと始末した方がいいかな」
誠治は勇者として今やるべき事をする気でいたの
だった。
通された客間では、豪華な装飾品が並べられてい
た。
領主が生きていた時に集めたものだろう。
そこには、家族の肖像画が飾られていた。
「あれ……この子……」
「陸、どうかしたの?」
「いや……ナオ、ちょっと頼みたい事があって…」
誠治を無視してナオに頼み事を話した。
「分かった。だが、それでいいんだな?」
「あぁ、俺の記憶が正しければ……もしかしたら」
「陸っ!僕には説明なしかい?」
「そうよ、私達を無視してその魔族と会話してる
なんて、勇者パーティーの資質を疑うわ」
「おいおい、そこまで言わなくても、陸だって何
か考えがあるかもしれないだろう?なぁ~?陸」
レイネの批判に、モンドは陸を庇う。
俺が記憶しているのが、この後ここで起こる戦闘
についてだった。
ここ、ツィーゲオ領はアゾビエンテの餌場なのだ。
領主をはじめゆっくりと街の住民を生きた屍にし
ていき、最終的には街全体が眷属と化していた。
だが、それはもう少し後の事だった。
前回と数ヶ月のラグが出来ていた。
そのせいで、街全体まではまだ侵食されていない
事を願っている。
ここで、領主に取り憑いているアゾビエンテを殺
したはずだったのだ。
あの時は完全に領主の身体を燃やしたのだ。
だが、実際は別の肉体に心臓を移していた。
それが、俺の失態だったのだ。
長距離移動用の馬車なのだが、この世界ではイスは
ベンチ式で、硬い木材で作られている。
旅をする人は、それが普通と思っているのか誰一人
文句は出ない。
俺だって魔法は使える。
ただ回復魔法だけが苦手なだけなのだ。
そもそも、回復系や呪解の魔法や、解毒魔法などは
魔術師の分野外だからだ。
神官などが使う魔法で、それなりの徳を積まないと
使えないと言っていた。
だが、俺からしたら回復系だけが使えないという事
でしかない。
色んな攻撃魔法を使えるか、回復特化かといわれた
ら、もちろん前者を選ぶだろう。
錬金術という便利なものもあるし、回復ポーション
さえ作れば問題ないからだった。
錬金術は魔力と知識があれば誰でも出来る。
だから過去の俺は必死に学んだのだ。
俺を嫌って、回復してくれない聖女レイネがいるの
で、必須だったのだ。
野宿を挟んで、二日後やっとツィーゲオの街に辿り
ついたのだった。
確か、前に会ったカップルの男性がツィーゲオの
領主邸で働くと言っていた気がする。
「なぁ~誠治、あの時のカップルって確か領主の
所で労働させられるって言ってなかったか?」
「うん、そうだね。確か父の事業で負った負債分
を働いて返すって言ってたはずだよ?」
「ちょうどいいから、挨拶に行こうぜ?」
「……陸?」
確か、あの時に領主邸で働くと人格が変わってし
まうという話をしていた。
そこでユニコーンを一緒に見てお互いの愛を確か
め合ってから向かうと言っていたのだった。
今、領主はどうなっているのかを確かめるチャン
スだと思ったのだ。
「ナオ、ちょっといいか?今から領主に会いに行
くから……」
「なら、私は別行動だな。勇者と一緒にはいけな
いだろう?」
「待った、ナオに重要なお願いがあるんだよ。領主
が人間なのかを見てほしい」
「はぁ?それは……分かった。一緒に行って教え
ればいいのか?」
「あぁ、そう言う事だ」
俺が『人間かどうかを見て欲しい』と言った事で
モンドも気がついたようだった。
「陸、領主がおかしいって言うのはそう言う…」
「あぁ、多分な。おかしいじゃなくて、もう遅い
かもしれないがな」
街に着いて早々に宿を取ってから領主へと会いに
行く。
勇者が挨拶に行くのは、普通の事だったから誰か
らも咎められる事はなかった。
ただ、勇者パーティーにフードを被った怪しげな
人物がいる他は何も問題なかった。
門番の前で勇者である証を見せた。
「勇者様御一行ですね。我が主人に伝えて参りま
すので、少々お待ちください。そちらのフード
の方は……?」
「僕の仲間だよ?ちょっと怪我をしてしまってね
顔は見せられないんだ」
「そうですか!ご苦労様です」
誠治が落ち着いた声で話すと、門番は納得したの
かすぐに屋敷の中へと走っていった。
帰って来ると、すぐに中へと通されたのだった。
中庭には花が咲き乱れ綺麗なはずなのに、なぜか
不気味に感じた。
『ニクノクサッタニオイ……イッパイスル』
「肉が腐った臭いって……やっぱりか……」
俺の中で声がすると、つい口に出していた。
「陸、臭うの?」
「いや、俺の中のアレスがそう言ってたんだ」
「やっぱり魔物だと鼻も効くんだね。この屋敷に
生きた人間は何人いるか聞いてくれる?」
「アレス、わかるか?」
『ヤシキノナカ…ゴヒキ死体…ヒトリハマゾクダ』
「おっけおっけー、俺ら以外は全員死体だ」
「なるほど、さっきの門番もって事だね。気が乗
らないけど、さっさと始末した方がいいかな」
誠治は勇者として今やるべき事をする気でいたの
だった。
通された客間では、豪華な装飾品が並べられてい
た。
領主が生きていた時に集めたものだろう。
そこには、家族の肖像画が飾られていた。
「あれ……この子……」
「陸、どうかしたの?」
「いや……ナオ、ちょっと頼みたい事があって…」
誠治を無視してナオに頼み事を話した。
「分かった。だが、それでいいんだな?」
「あぁ、俺の記憶が正しければ……もしかしたら」
「陸っ!僕には説明なしかい?」
「そうよ、私達を無視してその魔族と会話してる
なんて、勇者パーティーの資質を疑うわ」
「おいおい、そこまで言わなくても、陸だって何
か考えがあるかもしれないだろう?なぁ~?陸」
レイネの批判に、モンドは陸を庇う。
俺が記憶しているのが、この後ここで起こる戦闘
についてだった。
ここ、ツィーゲオ領はアゾビエンテの餌場なのだ。
領主をはじめゆっくりと街の住民を生きた屍にし
ていき、最終的には街全体が眷属と化していた。
だが、それはもう少し後の事だった。
前回と数ヶ月のラグが出来ていた。
そのせいで、街全体まではまだ侵食されていない
事を願っている。
ここで、領主に取り憑いているアゾビエンテを殺
したはずだったのだ。
あの時は完全に領主の身体を燃やしたのだ。
だが、実際は別の肉体に心臓を移していた。
それが、俺の失態だったのだ。
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