俺がモテない理由

秋元智也

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第七十三話 焦る理由

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陸とナオが地下に侵入した頃、誠治はアゾビエンテと
対立していた。

眷属はいくら切っても起き上がってくる。

聖剣での攻撃だったが、ダメージがあまり通ってい
なかった。

さっき割れた窓ガラスは元に戻っており、外は真っ
暗になっていた。

まだ昼前だったはずだが……。

「どうして陽の光が入らないのかと思っているので
 すか?それはですね、この屋敷自体が我がテリト
 リーだからですよ?ん?地下に侵入者ですね?」
「お前の相手は僕だろう?」
「勇者の相手もいいですが………私の魔術師君は
 どこにいるんでしょうかね~。自分から我が体
 内にはいって来ようとは……」

誠治は眉を顰めると、一気に大技の為に力を貯め
だす。

「あぁ、いくら倒しても無駄ですよ?私は不死身
 そして、この身体は簡単に再生し……っ……!」

一瞬、言葉に詰まった。
大きな音が響いてきて、屋敷全体が揺れた気がす
る。

「なぜだ……なぜ降りてくるっ……」

少し焦った表情を浮かべると、身体がバラバラと
崩れて蝙蝠になると誠治の横をすり抜けようとし
たのだった。

誠治はポケットに入れておいた紙を出すと、放り
投げた。

それには魔法陣が描かれており、開いた瞬間に
ドアの前を塞いだのだった。

それだけに終わらず、部屋を包み込んだ。

蝙蝠になったとしても、隙間すらない空間を抜
け出る事は出来なかったらしい。

「そんなに慌ててどこへ行く気だ?」

人へと姿を戻すと、忌々しそうに顔を歪ませた
のだった。
さっきまでの余裕が無くなったのだ。

きっと陸たちが何かをしたのだろう。
もしかしたら、心臓をみつけたのかもしれない。

では、なおさら誠治はこいつを叩き潰す必要が
あった。

今ある心臓の位置をずらさせない為に、こちら
に集中させる必要があったのだった。

眷属もさっきより動きが鈍くなった気がする。

廊下の奥で再び大きな音がして地面が揺れる。

「もう、終わりか?」
「人間のくせに生意気な………」

アゾビエンテは自分の血を変形させると槍を作り
出していた。
激しい攻防が続いたが、どちらも引かなかった。

もちろん疲れ知らずの魔族と違って勇者は人間な
のだ。
ずっと動き続けるにも限度があった。
と言っても、バケモノ並みの体力と持久力を合わ
せもつ勇者にはさほど苦ではない。

「忌々しい人間だ…」
「それは僕からも言わせてもらうよ。僕のモノに
 手を出すのなら生かしておく理由はないからね」

珍しく誠治は感情的になっていた。
何物にも執着しない勇者が、唯一欲するのが仲間
の一人だったのだ。

常に一緒にいるのに、手が出せない相手なのだ。
いつものように接しても決して自分に惚れない
相手なのだ。

「あいつを惚れさせるのは僕だけだから…」

何度もスキルを連発するが、すぐに再生してしま
う。
さっきの揺れはきっと、陸かモンドが起こしたも
のだろう。

「慌ててる理由は他にあるのかな………」

誠治からは今の状況が分からなかったのだった。
だが、さっきの揺れの後、慌てるアゾビエンテの
表情から、陸たちが奴の心臓をみつけたのだと理
解する事ができたのだった。

「おのれ…おのれ……おのれぇ~~~」
「心臓は屋敷の中にあったようだね?隠しに行き
 たい?まぁ……僕はここを通す気はないけどね」

アゾビエンテにとっては、たった一匹でいい。
この部屋からぬけだせればいい。

だが、勇者によって自分が屋敷に閉じ込めている
はずが、逆に部屋から出られない状態にされてし
まったのだ。

あまりに予想外だった。

そもそも勇者パーティーと正面から戦う気などな
かった。
どこからかぎつけたのか、心臓の隠し場所に勇者
が訪れたのだった。

領主はとうに眷属化し、自らが成り代わっている。
使用人から、街の一部の人間までは支配下に置い
ておいた。

だが、まだ街ぐるみとまではいっていない。

眷属よりも低位な存在であるゾンビなら、簡単に
作れる。

眷属に噛ませればいいのだ。
眷属の唾液には特殊な細菌がまざっており、身体
を素早く腐敗させ、脳を衰退化させた。

ただ単に力と再生能力だけを強化させたものな
のだ。



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