アリスちゃんねる 〜もっと淫れさせて〜

秋元智也

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49話

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長谷部誠が帰ってくるまでずっと家に引きこもっていた。
たまに家政婦さんが話し相手になってくれたが、夕方には帰って
いった。

残されるのは慣れている。
一人の食事はいつもの事だし、最近はまともな食事など久しぶり
だった。

セックス漬けの日常はゼリーと点滴だけの質素なもので常に尻か
ら色々なものを飲み込まされた記憶しかない。
それに比べたら快適な生活だった。

「ただいま~」

ドアが開き、声が聞こえるとすぐに玄関に駆け出した。

「あ…あの…」
「出迎えてくれるのか?ありがとう」
「あ…いえ…おかえり…なさい」
「ただいま」

ぎゅっと抱きしめると額にちゅっとキスを落とした。

「嫌だったかい?」
「いえ…そんな事は…」
「優、食事の時、一緒にいてくれるかい?」
「あ…先に、食べちゃった……」
「いや、いいよ。ただ、私が食べている時にそばにいてほしいん
 だ。」

こんな事言われた事ない。
ただ、そばにいてほしいなんて、まるで頼られてるみたいで嬉し
かった。

「今日は何をしたんだい?」
「えーっと、今日はお手伝いさんと話して…それで………」

どんな事を話しただの、昼寝していた事などを話した。

「そうか、いい子だ。今度通信制の高校の手続きをしようか。
 分からないところがあったら私に聞くといい。」
「でも…忙しいんじゃ…」
「構わない。優の事ならなんでも頼ってほしいんだ。」

信じられないほどに穏やかだった。
順調に高校の過程を勉強し、分からないところは夜に誠に聞いた。

やれば出来る。
ちゃんと学ぶ機会さえあれば、普通に出来た。
もうバイトもしなくていいせいで、時間に余裕もできた。

前のようにエロい動画配信もしなくていい。
もう、あの人にも合わなくて済むと言うのが一番嬉しかった。
ラビット…倉沢社長と言っていた。

多分結構お金持ちなのだろう。

あんなに高級なマンションをワンフロア全部を部屋として使って
いたのだ。

毎晩悲鳴を漏らしても誰も不思議とも思わない。
それは、下のフロアも買い取っている可能性があるからだった。

「逃げれたんだよな……あの人、大丈夫かな」

病院で優を心配してくれた唯一の人。
抱きしめらた時、暖かかった。

何度も酷く抱かれたけど、それでも、あの人だけは自分を優しく
扱ってくれた。

「誠さんに聞いてみよっと…」

何の気なしに思った事だった。
だが、それは言ってはいけなかった。

帰って来た誠にそれを話した瞬間機嫌が悪くなったからだ。

「あのね…その矢崎って人だけは俺の事……」
「それは会いたいと言う意味ですか?今の暮らしは気に入らない
 って事ですか?」
「そんな事は…でも…」
「もういい。その話はやめてくれ。食べ終わってるなら部屋に戻
 っていなさい」
「でも…誠さん。聞いてっ…」
「もういい。疲れてるんだ…」
「はい…」

もう、それ以上話もできなかった。

少し寂しく思えた。
こんな事言うんじゃなかった。
そう、自分が全部悪いんだ…と。



その頃、長谷部誠も後悔していた。
あんなキツく言うつもりはなかった。

ただ、自分を監禁して陵辱していた男を心配するなど、そんなお
人よしではダメだと思い怒ったのだが、それはただの八つ当たり
でしかないと反省している。

「はぁ~、私も心が狭いかったんだな…明日ちゃんと話をしないと」

長谷部誠も優の事を少しでも理解しようと努力しているのだった。
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