間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第二十二話 感染

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鎮まりかえった村の人々。

食事へと女将さんのところへ行くとテーブルに突っ伏したように客達が
眠っているように見えた。

「これって酒に潰れてるわけじゃ…ないよな?」

隣の椎名に聞くが、返事はすぐに出た。
ゆっくりと起き上がる客達の顔色は土気色に染まっており、生きている
ようには見えなかった。
口からは体液を垂れ流しながら起き上がるとこちらへと近づいてくる。

「これって…やっぱり…」
「もう、人間じゃねーだろ?」

椎名が言うと剣を構えた。
動きは鈍いがその中にはさっきまで言葉を交わしていた女将さんもいた。

「うっ…嘘だろ…」
「これが現実だ。逃げてても仕方ないんだ、ここで始末するぞ」

椎名はNPCに向けて剣を構え、振り下ろしていた。
次から次へと向かってくる人の形をした何かに春は切るのを躊躇っていた。
もちろん向かってくるモノに関してはシールドで応戦はするが剣があっても
切りたくはないようだった。

モンスターと違って、さっきまで会話していた人間の成れの果てなら、尚更
だろう。
しかし、そんな甘い事を言っていられる状況じゃないかった。

町中に溢れたソレはまるでゾンビのようなモノであった。
腕と足を落としても這ってでも向かってくる。

頭を落とせばそこで機能を停止した。

「頭を狙って叩け!」
「でもさ…これって人殺しになるんじゃ…」
「やらなきゃヤられる、そうだろ?」
「そうだけど…」

きっと優しい春には決められないのかもしれない。
割り切りができなければ、躊躇ってしまう。

ギルド職員が駆けつけてきた時には死体の山が作られていた。
村の半数以上を椎名が殺していた。

「君達、大丈夫か!」
「はい、しかしこの状況では…」
「あとは俺たちが受け持つ。早く避難しなさい」
「はい、行くぞ春!」
「待って、奥に女将さんの娘さんが…」
「もう手遅れだって…春!」

春の手を引こうとすると奥の部屋へと入って行ってしまった。
慌てて後を追うとそこには小さな女の子がベッドに眠っていた。
春は抱き上げるとそのまま連れて行こうとした。

「春、待って!本当に人間かどうかわからないうちはダメ!」
「でも…大丈夫かもしれないじゃん」
「少し待ってって」

ベッドに寝かすと肩を揺すってみる。
何度も揺するとゆっくり目を覚ました。

「お兄ちゃんと、お姉ちゃん…苦しいっ…」
「もう大丈夫だからな!」
「待ってって!」

女の子の目から血が流れ落ちていくと、顔色が一気に変わっていく。
目を見張るとすぐに飛びかかろうとして、女の子の首が宙を舞った。
椎名が切り捨てたのだ。

「どう…して…」
「いくぞ…早く立ってっ…」

椎名に急かされるように立ち上がると走り出した。
足手まといというのはわかっている。でも…あの子は…。

「もう手遅れだった。春のせいじゃないよ」
「あぁ、そう…だな」

落ち込むように暗い顔をする春を放置できない。
でも村をこのままにもできなかった。

「俺はギルドの人の手伝いしてくるから、春はここで隠れてて」
「待ってよ…全員殺すのか?」
「しかたないよ。もう人じゃないから、春も分かるでしょ?」
「でも…」
「春は殺さなくていい。俺がやるから。だから春はここに、ね?」

椎名の服を掴むと離そうとしない春を説得する様に言うと、とある家の
タンスに押し込んで開かないように、ロープで縛った。

「絶対にすぐに戻ってくるから」
「椎名っ、待って…俺も…」

言いかけて、言葉に詰まった。
俺に殺せるのか?…と。

きっと今の春樹では殺せないだろう。
人の形をしている分、厄介だった。
いっそモンスターになってくれれば気兼ねなく殺せるのに。
椎名だって好きで殺しているわけではない。
春樹を守る為にはそれしかないなら、躊躇しないというだけだった。

ギルド職員の半数は無事であった為に協力して討伐して行った。

「あらかた片付けたな…すまなかったな?」
「いえ、大丈夫です。もうすぐ馬車が来るはずなので、それで僕らは出て行く
 つもりです。」
「あぁ、気をつけてな。これは僅かだが、選別だ」

麻袋に入った銀貨が何枚かと金貨が数枚入っていた。
春樹を閉じ込めた家に行くとタンスのあった場所を見るとタンスは壊され、そこ
には春樹の姿も無くなっていた。

「春?はるーー!」

呼んでも返答はない。
どこに行った?
自分で出た?いや、そんな訳はない。こんな壊しかたする訳が…。
なら、どうして…?

嫌な胸騒ぎがして、あたりをくまなく探したが、結局見つからなかった。
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