間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第二十六話 教皇

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だんだんと早脚になって行くと王城を出た。
馬車に乗り込むと教会へと向かった。
揺れる馬車の中で太腿を伝って服を濡らす。
座っている座席が湿っぽくなって行くのを我慢するとさっきまでの行為のせい
か、残り香がただよう。

「嫌ですわ…こんな事で…」

悔し涙が溢れて来る。
しかし聖女は威厳を持って、皆の見本にならなくてはならない。
涙など見せてはならない。
いつも平常心を持って、慎ましやかに振る舞わなくてはならないのだ。

たかが肉体を穢されたとて聖水で清めれば…

(それですわ、清めれば…すぐに元通りに…)

初めては好きな殿方がよかった。
そして、初めて勇者様を見た時、胸がときめいたのを感じた。
この人なら、聖女の初めてを交わしたいと心から思った。
しかし、そうはならなかった。
見向きもされない事は初めてで余計に悔しさが募った。

そして後を追うように王都をたった。
そして見つけた勇者様はぼろぼろで今にも倒れそうだった。
すぐに馬車へと乗せて近くの街へと向かった。
宿屋を取ると寝かせて、自分も添い寝したのだった。

(このままわたくしだけを見つめてくれたらよかったのに…)

願っても叶わぬ想いを抱いて、今ある温もりを感じていたのだった。


丸ニ日眠りっぱなしだった椎名が起きると横にある温もりに目が覚める
といきなり抱きしめていた。

「春っ!やっぱり春がいなくなるなんて夢だよっ…よかった、はるっ…」

柔らかい身体を腕の中で感じながら鼻先に感じる匂いが違う事に気づいた。
すぐに離れると照れたように真っ赤な顔の聖女がそこにいたのだった。

「どうして…あなたがここに?」
「勇者様を追ってきたのです、そうしたら酷い様子だったので宿屋にお連れ
 いたしました。」
「あぁ、ありがとう。でも…もういいよ。出てって…」
「お待ちください。お体の具合も良くありませんし、2日も眠っておられました」
「!?…2日も?…早く春を探さないとっ、こんなところにはいられない!」
「お待ちください、そんな身体でどこに行くのですっ!連れがいないという事は
 もう…この世界には魔物が増えてきているのです。手遅れだと諦めて先に進む
 べきですわ。わたくしでよければ慰めて差し上げますわ」

いきなり勇者に押し倒されるとドキッとして見上げた。
聖女の目に映ったのは怒りの感情を露わにした姿だった。

「ふざけるなっ…あいつを置いて行くなんてできない。春を傷付けるやつは誰だっ
 て許さない…それが国王でもだ!国ごと滅ぼしてやるっ…」
「で…でも…」

震えて声が出てこなかった。
女性が一人でいれば奴隷商に売られるかもしくはモンスターの餌になるかの選択
しか有り得ない世界なのだ。
そんな世界でいつまでも探すのは間違っている。
そう言いたいのだが、今は直感的に言ってはいけないのだと感じた。

「分かりましたわ。聖女として教会を通じて探しますわ。ですからしばらくお休み
 になって下さい。勇者様が闇雲に探すよりは早いはずですわ」
「本当か?」

疑っている視線が痛いが聖女は腹をくくると約束をしたのだった。

「でしたら明日、一緒に教会へ行きましょう。そこで呼びかけるので、ご自分の目
 で確認なさればいいでしょう?ですが、今日はしっかりと休んでください。もう
 日も暮れる時間なので明日の朝一で参りますわ」
「…分かった」

少し落ち着いたのか勇者様はお粥を口にして眠りについた。
流石に添い寝は断られると隣の部屋に入った。

「隣の部屋におりますわ。何かあったら呼んでください。」

全く見向きもされないというのも、清々しいかもしれない。
ここまで好意を向かれない相手というのは初めてで、少し笑えてきてしまった。

「勇者様にとってはわたくしはどこにでもいる女なのでしょうね…あの奴隷だけ
 が特別だなんて…全く笑えますわ。」

独り言を並べると身体を清め、侍女に連絡を取ると明日教会へと行く趣旨を伝
えた。


聖女様が街へ来たという噂はその夜に一気に広まって行った。
聖女を一目見たいと拝む人々の列ができていた。

朝早くに教会へと来たはずが、すでに何人もの人でごった返していた。

「人気なんだな?」
「そりゃそうですわ、わたくしは聖女に選ばれし存在なのですよ。勇者様くらい
 ですわ、その反応の薄さは…。もう、いいですわ。諦める事にしましたから。」
「別に女に興味がないだけなんだがな…」

ボソッとつぶやいた言葉に一瞬顔を引き攣らせた。

「勇者様って…男のが好みですの?…ふっあはぁ~なんですの?それじゃわたくし
 どうあっても落とせませんわ~、あの女性はどうして特別なんですの?」
「あいつは…俺の親友で…ずっと気になっていたからな…この世界で性別が変わっ
 てしまって、余計に気になってしまうとは思いもしなかったが…」
「まぁ、それはいいですわ。さぁ、行きますわよ」

大勢の列をかき分け中央を通って行く。

教会へと入ると中では教皇様が待っていた。

「お久しぶりです。教皇様。此度はわたくしの依頼に応じてくださり感謝いたし
 ますわ。」
「聖女様のお願いとあらばなんなりと…。見返りは後ほど…」

見上げられた笑みに身体を震わせた。
要求して来るのは誰もが同じ目的だった。
皇子といい、教皇といい、そんな事しか考えていない獣としか思えなかった。


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