間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第五十話 刺客

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コボルトのボスの牙を持ち帰ってギルドで換金し終わった椎名はそのまま
宿屋へと戻ってきたのだった。
部屋に入ろうとして後ろでコソコソと隠れる影が見える。

「どこからついてきたんだか…」

青年の隣の部屋に入るとベッドの上の布団の中に枕を入れてこんもりさせると
隅に隠れた。

しばらくして静かになるとカチャカチャッと鍵が揺れ出して勝手に開いていく。
そして部屋の中に入ってきた侵入者は椎名が寝ているだろうベッドに近づくと
手に持っていたナイフを突き下ろした。
月明かりで光った獲物は容赦なく突き立てられたが、刺さったような感覚がな
い事に気づくと慌てるように布団を剥いだ。

「動くな…今すぐその首を掻っ切ってもいいんだぞ?」

椎名の剣が刺客の首筋に当てられていた。
腕を掴むとすぐさま拘束した。
蝋燭をつけて顔を確認するとまだ幼い獣耳の獣人だった。

「なぜこんな事した?俺に恨みでもあるのか?」
「あんた冒険者ギルドからいっぱい金貨もらってたから…」
「追い剥ぎのつもりだったのか?なら殺されても文句は言えねーな?」
「待ってくれ、頼む。今回は見逃してくれ。弟達がお腹空かせて待ってるんだっ!」

切実な事情があると言わんばかりに言い訳をのべる。

「俺に関係あるか?俺を狙った以上は殺されても仕方ないよな?」
「待って…何でもするから殺さないでくれ…」
「モブに情けをかけると思ったのか?死んで詫びろ」

まだ幼いようだったが、こんな奴を春樹には見せたくないし、もし春樹に何かあった
らと思うと、もう耐えられそうになかった。

部屋に血飛沫が舞うと床が汚れていく。

朝早くに片付けておくとギルドにも報告をあげた。
冒険者を狙う詐欺まがいの行為は良くあるらしく、冒険者なら自己責任で解決してく
れと言うことだった。

「お前災難だったんだな?」
「まぁ~な、でも…春が襲われなくてよかったって思ってるぞ?」
「何でだ?俺なら返り討ちしてるぞ?俺が弱くないの知ってるだろ?」
「それでも寝込みを襲われたら無理だろ?」
「ふ~ん、なら一緒の部屋にすればいいだろ?野宿の時もそうだし」
「…そ、それは…俺が無理」

(絶対に我慢できねーだろ。しかも春樹そっくりすぎていつか襲いそうだよ!)

「大丈夫か?」
「ん?あぁ、なんでもない…」

この世界にきてやっと平穏な時間がきたと思っている。
肩を並べて戦える友人。
そして覚えてないくてもいい、今から知ってくれればそれでいい。
大事なモノは無くなって初めてわかる。

もう絶対に無くさない。
二度と死なせないようにレベルも上げて行くし、一緒に強くなっていけばいい。
それが春樹じゃなくても、今は春樹として側にいてくれればそれでよかった。

いつか魔王に滅ぼされるのもいいし、一緒に抵抗して一緒に死ねるならそれも
いいかもしれない。
いっそ、その方が幸せだった。

椎名には、青年との今、この時間が一番幸せなのだ。



別れた後、天野と聖女は別のダンジョンに挑んでいた。
聖女のレベル上限が消えた事で今ではレベル15まで上がっていた。

「聖女様も強くなってきましたね~」
「天野さんのおかげですわ。わたくしの勇者様は天野様でもいいと…最近では
 思うようになってきていますわ。このまま、もっと強くなって魔王城へと向
 かえたらどうなってしまうのでしょうか?いつもそんな夢を見るのです。」
「俺が強くなって絶対に倒すから。安心して…だから俺の事考えてほしい。も
 し、魔王を倒せたら…一緒になってほしいんだ」

天野の告白に聖女はいつも笑顔で笑った。

「またそれですか?わたくしの役目さえ終われば、教会へと戻る身…それでも
 よければ、教会で一緒に暮らすのもいいですね~」
「はははっ、俺は二人っきりで過ごしたいんだけどね~…」

天野もレベルを100まで伸ばしていた。

「勇者様…椎名様は地下都市ベイルには行ったのでしょうか?それとも本当に
 もう…」
「もう、あいつの事はいいだろ?春樹がいなければもう戦えないやつなんてさ。
 勇者の資格すらねーよ。春樹の分まで生きようとか、あいつの分も戦うって
 気概が欲しかったぜ」

居なくなった椎名を思い出しながら側の街へと寄った。
すると近くにコボルトダンジョンが攻略されたとギルドに張り出されていた。

「へ~、俺ら以外にも遠征隊でも派遣されてんだ~」
「そうですわね。今はレベル制限とやらがあった時と違って自分でも驚くくら
 いに強くなってるって実感が湧いてきますわ。」

簡単討伐依頼を受けると宿を探した。

ドンッ…。

「ごめん…なさい」

小さな子供がぶつかると怯えたように謝ると駆け出して行ってしまった。

「なんだか怯えていましたわね?天野さんは何かしたんですの?」
「何もしてねーって。この顔が怖く見える?」

笑顔で聖女を見下ろすと髪を撫でる。

「早く宿に行こうか?」
「そうですわね」



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