72 / 113
第七十二話 もう一人の勇者
しおりを挟む
使者というのはあながち間違いではないが、人の姿をしてフードを深く
被ったモノが魔王城の遣いとしてやってきた。
物陰に気配を消して隠れる椎名は今、緊張したように成り行きを眺め
ている。
そこには引き渡される女性は聖女にすり替わり、もう一人は村の男と
言ってはいるが天野が縄で拘束されて引き渡されようとしていた。
緩く縛ってあるので勇者の腕力なら簡単に引きちぎる事も容易だった。
「今回の生贄はこちらでございます」
「うむ、少し年がいきすぎているようだが?男の方はいいが、この女
は…ちょっとな~」
聖女の額にイラつきが生じるがあえて我慢しているせいか少し震えて
いた。
「なんだ?怖いのか?楽しい農場へ連れて行ってやるからな~。ここ
に比べたら天国だぞ?まぁ~これからは縮小する様に言われたせい
で、人数を減らすハメになってしまったがな~。今回の食糧はここ
に置いておくぞ?」
その使者は聖女と天野を軽々と担ぎ上げると背中の羽根を広げた。
飛び立つ瞬間に椎名が飛び出ると両方の羽根を切り落としていた。
転げ落ちると天野は縄をちぎり即座に懐に入れて置いた短剣を飛ばし
ていた。
背中に刺さると突き破る勢いで突き刺さっていた。
羽根もがれた状態では逃げることもままならず這いつくばるように地
面に崩れ落ちた。
「これで終わりだ!」
椎名の剣が首を刎ねると、弾けるように飛び散ると霧散した。
「これでよかったのでしょうか…」
「よかったに決まってるだろ!もうこんな事はしなくていい。俺らが
倒してやるから安心して暮らせるようになる。それまでは村を捨て
てしばらく避難するんだ。それに食糧は大量に置いて行ってくれた
し、一年はもつだろ?」
天野の言った通りだった。
そうかからずして椎名と一緒に倒して解決するはずなのだから、それ
までの辛抱といえばそれまでだ。
椎名には魔王を倒せるという自信がない。
あの圧倒的な魔力と破壊力を見て怖気付いたというのもある。
気配もなしに連れて行かれたのが悔しくてたまらなかった。
「さぁ、いくぞ」
椎名は天野に声をかけると歩き出した。
「おぉ、一緒に行くことを認めてくれたって事か?」
「どーせ、勝手についてくるんだろ?なら、勝手にすれば良い」
椎名は聖女には目もくれず速足で歩いていく。
後を追うように二人もついて行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その数日後、魔王城にイム村の事が伝えられたのだった。
「なに?人間が我らの配下を殺しただと?」
「そうです、使者として行ったものが帰ってくるどころか灰になったと
連絡がありました。反乱ととってもいいかと…」
サキュバス達の餌場の人員増強を目的とした村らしい。
「魔王様、今からその村に行ってきて事の次第を確かめようと思います」
「まぁ、好きにすればいいよ。ガスに任せる」
「はい。行って参ります。」
ガスはこういう事には生真面目だった。
ララはいつも春樹の体調を気にしているし、まるで人間となんら変わら
らにではないか?
このやりとりをした後は、こっそりとララと一緒に街へと下見に向かう。
「本当にいいのですか?こんなに間近に人間と触れ合うなど…」
「ララはこういうのは嫌だった?」
「それは…魔王様がそれでいいのなら…」
「ここでは…そうだな春って呼んでよ?」
「ハル様ですか?」
「う~ん、様はいらないかな~」
「いいえ、そのような事は…」
「まぁ、いいや。それでいいよ。ほら、行こう」
人の姿で魔力を抑える指輪をはめると街へと出掛けに来ていた。
魔王城の宝物庫には色々なアイテムがあって、この指輪もそうだった。
魔力を抑え込む力があって、20分の1まで減らせるらしい。
それでも、普通の冒険者よりは強いので困る事はなかった。
今来ている街は魔王城からも結構距離があるので、色々と噂が聞けない
かと見に来たのである。
冒険者ギルドへ来ると、少し揉めているのか騒がしかった。
「何かあったのかい?」
「それが…女が駆け出しの癖にベテラン冒険者に食ってかかったんだよ」
「へ~、それってどの子?」
「あれだよ、あのちっこいやつ。今一触即発で剣を抜こうとしてるやつだよ」
鑑定をかけるとレベル99と出ていた。
職業を見ると勇者となっていた。
「なるほど…彼女がもう一人か…」
鑑定は召喚された者しか使えないらしい。
春樹は野次馬をすり抜けると前へと出ると剣を抜こうとしている彼女のツカを
抑えると、相手の男の剣を突き飛ばすと壁まで蹴り上げていた。
「ちょっと話があるんでけどいいかな?」
にっこりと笑いながら話しかけたのだった。
被ったモノが魔王城の遣いとしてやってきた。
物陰に気配を消して隠れる椎名は今、緊張したように成り行きを眺め
ている。
そこには引き渡される女性は聖女にすり替わり、もう一人は村の男と
言ってはいるが天野が縄で拘束されて引き渡されようとしていた。
緩く縛ってあるので勇者の腕力なら簡単に引きちぎる事も容易だった。
「今回の生贄はこちらでございます」
「うむ、少し年がいきすぎているようだが?男の方はいいが、この女
は…ちょっとな~」
聖女の額にイラつきが生じるがあえて我慢しているせいか少し震えて
いた。
「なんだ?怖いのか?楽しい農場へ連れて行ってやるからな~。ここ
に比べたら天国だぞ?まぁ~これからは縮小する様に言われたせい
で、人数を減らすハメになってしまったがな~。今回の食糧はここ
に置いておくぞ?」
その使者は聖女と天野を軽々と担ぎ上げると背中の羽根を広げた。
飛び立つ瞬間に椎名が飛び出ると両方の羽根を切り落としていた。
転げ落ちると天野は縄をちぎり即座に懐に入れて置いた短剣を飛ばし
ていた。
背中に刺さると突き破る勢いで突き刺さっていた。
羽根もがれた状態では逃げることもままならず這いつくばるように地
面に崩れ落ちた。
「これで終わりだ!」
椎名の剣が首を刎ねると、弾けるように飛び散ると霧散した。
「これでよかったのでしょうか…」
「よかったに決まってるだろ!もうこんな事はしなくていい。俺らが
倒してやるから安心して暮らせるようになる。それまでは村を捨て
てしばらく避難するんだ。それに食糧は大量に置いて行ってくれた
し、一年はもつだろ?」
天野の言った通りだった。
そうかからずして椎名と一緒に倒して解決するはずなのだから、それ
までの辛抱といえばそれまでだ。
椎名には魔王を倒せるという自信がない。
あの圧倒的な魔力と破壊力を見て怖気付いたというのもある。
気配もなしに連れて行かれたのが悔しくてたまらなかった。
「さぁ、いくぞ」
椎名は天野に声をかけると歩き出した。
「おぉ、一緒に行くことを認めてくれたって事か?」
「どーせ、勝手についてくるんだろ?なら、勝手にすれば良い」
椎名は聖女には目もくれず速足で歩いていく。
後を追うように二人もついて行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その数日後、魔王城にイム村の事が伝えられたのだった。
「なに?人間が我らの配下を殺しただと?」
「そうです、使者として行ったものが帰ってくるどころか灰になったと
連絡がありました。反乱ととってもいいかと…」
サキュバス達の餌場の人員増強を目的とした村らしい。
「魔王様、今からその村に行ってきて事の次第を確かめようと思います」
「まぁ、好きにすればいいよ。ガスに任せる」
「はい。行って参ります。」
ガスはこういう事には生真面目だった。
ララはいつも春樹の体調を気にしているし、まるで人間となんら変わら
らにではないか?
このやりとりをした後は、こっそりとララと一緒に街へと下見に向かう。
「本当にいいのですか?こんなに間近に人間と触れ合うなど…」
「ララはこういうのは嫌だった?」
「それは…魔王様がそれでいいのなら…」
「ここでは…そうだな春って呼んでよ?」
「ハル様ですか?」
「う~ん、様はいらないかな~」
「いいえ、そのような事は…」
「まぁ、いいや。それでいいよ。ほら、行こう」
人の姿で魔力を抑える指輪をはめると街へと出掛けに来ていた。
魔王城の宝物庫には色々なアイテムがあって、この指輪もそうだった。
魔力を抑え込む力があって、20分の1まで減らせるらしい。
それでも、普通の冒険者よりは強いので困る事はなかった。
今来ている街は魔王城からも結構距離があるので、色々と噂が聞けない
かと見に来たのである。
冒険者ギルドへ来ると、少し揉めているのか騒がしかった。
「何かあったのかい?」
「それが…女が駆け出しの癖にベテラン冒険者に食ってかかったんだよ」
「へ~、それってどの子?」
「あれだよ、あのちっこいやつ。今一触即発で剣を抜こうとしてるやつだよ」
鑑定をかけるとレベル99と出ていた。
職業を見ると勇者となっていた。
「なるほど…彼女がもう一人か…」
鑑定は召喚された者しか使えないらしい。
春樹は野次馬をすり抜けると前へと出ると剣を抜こうとしている彼女のツカを
抑えると、相手の男の剣を突き飛ばすと壁まで蹴り上げていた。
「ちょっと話があるんでけどいいかな?」
にっこりと笑いながら話しかけたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる