間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第七十三話 勇者の友人イツキ

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喧嘩を止めると同時に相手のベテラン冒険者とやらを気絶させると
勇者である彼女の向き直った。

「大丈夫?ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「えっ、はい。大丈夫ですけど…さっきのに止めはいいんですか?」
「いや、人間相手にとどめって…」
「だって、剣抜いたんですよ。もう殺すしかないでしょ?」
「君の強さなら殺さなくても無力化できるでしょ?」

春樹がにっこりとして言うと彼女は驚いたような表情を浮かべた。

「君が特別な力を持ってるって思ったんだ。だから声をかけたんだよ。」
「私はここでやらなければならない事があるんです」
「そうなんだ。まずは場所変えようか?」
「そう…ですね」

周りの視線を考えるとこのままというわけにはいかなかった。
静かな店へと入ると一番奥の机に座った。

「あなたは誰なんですか?」
「俺はハル。そして彼女がララ。君は?」
「カエデです。そしてもう一人宿で眠っています」
「ん?えーっと、眠ってるって…怪我でもしてるの?」
「…そうです。だから依頼を受けて神殿で回復してもらわないと…」
「俺でよければヒール使えるけど、やろうか?」
「…!?」

カエデはすぐに案内すると行って春樹の手を引いて歩き出した。
宿に着くまでの間に仲良く話すようになると、スキルの大切さを語った。

「スキルってそんなにすごいんですか!」
「あぁ、レベル以上にスキルを鍛えた方がよっぽど戦闘においては有用な
 んだよ。対人戦も、魔物に対してもね」
「ハルさん、すごいです。今度教えて欲しいです」
「いいよ、ちょっとなら話しながらでも習得できるよ?」

そう話しながら歩くとあっという間に宿に着くと部屋へと案内した。

寝台に横になっている男は全身に包帯を巻いており所々に見える肌の色
が変色して緑色になっている。

動かないようにと縛り付けられており手足も動かせないようにしてあった。

状態を見るとゾンビ化と書いてあった。

「これは…怪我じゃないのか…」
「怪我です、でも次第に症状が出てきて、今ではすぐに噛みつこうとするん
 です」
「ハル様、これは…死水を飲んだ者の症状です。」
「治す方法は?」

ララがこっそりと話してきた。
魔王軍が行っていたゾンビ化計画の一環で色々な場所で試していると聞いて
いる。

「もう、体は腐っているので一時的に直しても…」
「なるほどな…」

春樹は事実を話すべきか悩んだ。

「治してくれるの?」
「それは…」
「同じ物を食べて一緒に旅してきたのに…イツキだけが…」
「それは君が耐性を持っているからじゃないのかい?」
「耐性?ってなに…」
「毒や麻痺になってもすぐに回復してしまうチートスキルのことだよ」
「な、なにそれ!」

目を輝かすように聞いてきたのだった。

「ステータスオープンっていうとボードが出なかったか?そこにスキル欄が
 あって…そこを読んでみて」
「えーっと、ステータスオープン?…あ!出た、えーっと…これって…」
「そう、わかった?」
「それであの人達は私達を捕まえようとしたんだ…」
「ん?」
「私達城の地下で召喚されたって言ってました。なんか怪しかったからイツキ
 と一緒に逃げたんです。そしてある街でイツキの様子がおかしくなって…」
「それでこの街に来たんだね。大きな教会があるから…」
「はい。」

大体の事情は分かった。
が、イツキという彼の方はもう助からないだろう。

「このゾンビ化って治るんですか?」
「俺の知ってる限りでは難しいね。」
「私達が元の世界に帰るには魔王を討伐するって言ってました。」

剣を取り出すとそれは椎名が持ってるものと同格の伝説級の武器だった。
カエデはじっと見つめるとため息を漏らすとイツキに向き直り何かを覚悟した
ような表情を見せる。

「ごめんね。魔王は私だけで倒すから、イツキは先に逝ってて。」

覚悟を決めると自分の手でとどめを刺したのだった。

「お兄さん、ありがとう。このままずるずるしてるよりよっぽどよかった。
 ステータスかぁ~もっと早く知ってればよかった。」
「これからどうするの?」
「目的は決まったし魔王城に向けて旅をする事になりそう」
「そっか…気をつけてね」
「うん、お兄さんも」

イツキと呼ばれた青年の死体は消えはしなかった。
魔物やゾンビ化した者は死ぬと霧散して消えたのだが死体が残ったのだ。

「ララ、これ連れて帰るぞ」
「はい。しかし、いいのですか?」
「あぁ、いいことを思いついたんだ」

ララの体内にトプンッと収まると城へと帰った。
ゾンビ化に使われた死水を持ってきて貰うと分解を試みる。
死体から取り出す事ができれば、生きた死体が出来上がる。
そこに自分の姿を写してかろうじて生きているように見せかける。

死体を意のままに操るスキルをいつのまにか取得していたのでこれを使えば
椎名をも誤魔化せるだろう。

流石に土人形では近づかれたらばれてしまう。
しかしこれなら自分から離れすぎなければ朽ち果てる事もない。

大きな鳥籠を錬金で用意すると実験を続けた。
同じ同郷の人間をこんなふうに弄ぶのは気がひけるが、これも椎名を生きて
戻す為。
自分の役割はもう、変えられないけど…椎名だけでも返してやりたい。
本当は一緒に元の世界に帰りたいけど、それが叶わないなら、せめてと思う
と、どんな残酷な事でもできる気がした。
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