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第百話 抱きたい

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結界にヒビが生じると少し笑いが込み上げてきた。
計画通りだ…と。
瞬間的に空間を歪ませると天野の真後ろへと出た。

振り向いて驚愕しているのを眺めながら全身を蔦で覆われていった。

「これで残り二人かな」

爆発が収まると大きな穴が空いていた。
しかし魔王の姿はどこにもない。

その油断した隙に思いっきり椎名を突き飛ばしていた。
大きく空いた穴へと落ちていくとしばらくは上がって来れないだろう。

残ったのはカエデのみだった。

「ちょっと聞かせてよ?あの人はハルさんなの?」

カエデが聞いているのは鳥籠に閉じ込められたままの青年の事だった。
ボロい服を見にまとったままじっとこちらを眺めているだけの青年。

「自分で鑑定してみればいいんじゃないか?」

鑑定眼をかけた瞬間、膝をつくとその場に座り込んでしまった。

「う…うそっ…なんでこんな…」

もう戦闘の意思がなくなったのか武器を落とすと泣き崩れていた。

「見た目は変えさせてもらったよ。でも、君の知ってるイツキ君の身体だよ?」
「いやぁぁっぁーーーー!!」
「君が止めを刺したのだったね?どうだった?殺した感覚は?彼はゾンビとして
 生かしているだけだから、あそこからは長い時間は出せないんだ。」

泣き崩れるカエデにゆっくりと蔦が絡んでいく。
全身を覆い尽くすと意識は刈り取られて夢の中へと落ちていく。

「おやすみ。起きた時には全てが終わっているよ?さぁ~椎名に会いにいくかな」

魔王はそのまま穴の中へと自ら降りていった。


落下のダメージが大きかったのか、眠るように倒れていた。
息はある。
高級ポーションを飲ませると鎧を脱がせると部屋へと運んだ。
魔力の鎖で縛るとそのまま寝かせておく。

風呂場へ行くと汗を流し、お湯を魔法で入れていく。
湯に浸かるとひと段落したような気がして、少しホッとする。

部屋には剣が飾られている。

もちろん強化MAXにしてあるし、これで切られればそう簡単に治せない。
回復が効かないように細工もしてある。

部屋に戻ると目を覚ましたのか椎名がこちらを見上げていた。

「起きたか?」
「なぜ生かしておくんだ?」
「第一声がそれか?俺が気に入ったからだ。俺のモノになれ…」
「誰がっ…お前なんかに…」
「なら、これならどうだ?」

漆黒の鎧を消し去ると春樹の姿で椎名の目の前に座る。

後ろにはもちろん鳥籠に繋がれた春樹がいる。
そして、目の前にも同じ顔の春樹…。

「これなら、気に入ったんじゃないか?」
「なんで…何でだよ…」
「俺が気に入ったからだと言ったら信じるか?」
「…」
「俺は孤独なんだよ。世界を滅ぼす為に生み出される。勇者が召喚されて一定人数
 に到達して条件を満たすと生まれるんだ。知ってたか?どうして生まれるのか?」
「それは…勇者がレベル上限を突破する事なのか?」

椎名が言うと、春樹は驚いたようにして笑顔を見せた。

「分かってたのか?なら、話は早いな…。この世界はどっちにしても終わってるんだ
 だからさっさと離脱する方法もわかるか?」
「それは…」
「解決する方法はもう知っているんだろう?」

間近に春樹の顔が迫ると、どうしてもドキドキしてしまう。
偽物と思っても、魔王が化けただけだと思っても、心は春樹だと訴えている。

椎名にもわからないが、この目の前の男を抱きたいと、めちゃくちゃに犯したいと
思ってしまっている。

しかし、鎖があって自分から触れる事ができない。

春樹の手が椎名の胸の上に触ると唇を重ねてきた?

「俺を抱きたいか?目がそう言っているぞ?」
「抱かせてくれるのかよ?」
「俺のモノなるなら好きにさせてやろうか?」
「はっ、魔王様が勇者に抱かせてくっれるって?冗談だろ?」

鼻で笑ってみるが、本心ではすぐにでも犯したい。
魔王は微笑むと鎖を長くしていく。
決して外す訳ではない。
それでも自由に動けるようになると、目の前の春樹を抱きしめ押し倒していた。
貪るようにキスをして、薄い肌着を破り去った。

上半身が露わになると、身体に刻まれた傷や片方の胸は抉られたような痕さえあった。

「なんだよ…これ…お前魔王なんだろ?あんなに強いのに?」
「あぁ、拷問された時の痕だろ?…魔力を封じられたら俺は人並みにしか戦えない」
「そんな事が?」
「あるんだ。実際罠にかかって捕まったしな…幻滅したか?」
「痛かったのか?」
「抉られた時より、ぶっといので犯された時のが死ぬかと思ったけどな…嫌になったか?」

椎名はじっと見つめると無くなったはずの裂けた痕に舌を這わせた。
それでも感じるのか微かに声が漏れる。
何度も春樹にもしたように男なのに乳首が弱くて、何度も弄った覚えがある。

一緒に戯れあった時を思い出しながら触れると、同じ反応を返してくる。
下半身もビンビンに感じていて、もう後戻りは出来なかった。
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