その恋、応援します!

秋元智也

文字の大きさ
32 / 66

第三十二話 文化祭 後編

しおりを挟む
屋上で空を見上げながら寝転がっていると、上から影が落ちて来た。
 
 隆盛 「ひろ?起きてるか?」
 裕之 「りゅう…おかえり~。お腹すいちゃった」
 隆盛 「うん、そういうと思ってこれ!」

焼きそば、たこ焼き、フランク、唐揚げ、焼うどん、などを並べた。

 裕之 「美味しそう。いいの?」
 隆盛 「あぁ、一緒に食べよっか?」
 裕之 「うん」

二人は並んで座ると分け合った。
隆盛は裕之を眺めながら髪が邪魔にならないように後ろに編み込み
ゴムで止めた。
 
 隆盛 「この方が食べやすいだろ?」
 裕之 「ありがとう。りゅうって気がきくよな~」
 隆盛 「そうか?」

裕之の口の横に付いたソースを指で拭うとぺろりと舐めた。
 
 裕之 「そういう事よく平気でやるよな~?」
 隆盛 「ひろだから…だよっ!」
 裕之 「もうっ!恥ずかしいじゃん…んっ…はぁっ…」

隆盛の顔が近づき裕之の口を塞ぐ。
キスは慣れてきたと言っても学校でするのは流石に恥ずかしい。
隆盛の胸を押して離れようとするが、全くびくともしなかった。

 隆盛 「いやか?」
 裕之 「嫌じゃ…ないけど…学校だし…」
 隆盛 「そうだな~。でも俺は気にしないけどな?」
 裕之 「僕は気にするよ!」
 隆盛 「でもっ、もう一回だけ!」
 
そう言って再び唇を重ねた。
今度は舌を入れて何度も角度を変えては味わうように重ねた。
一回とは言ってたけど軽いキスを想像していただけに、裕之は
困惑しながらも隆盛に合わせるように舌を絡めた。
息が苦しくなってきた頃、やっと離れていった。

 隆盛 「ごちそうさま」
 裕之 「なっ!りゅう~。」
 晴翔 「お!いいな~。俺も腹減った~」

後ろからいきなり現れた晴翔に裕之はドキッとしたが、隆盛は気
づいていたので、平然としていた。

 隆盛 「自分の分くらいは買ってこいよ」
 晴翔 「えー。いいじゃん。食べてもいい?」

そう言いながら食べ物じゃなく、裕之の横に座ると肩を抱き寄せる。
それにすぐに反応するように隆盛が裕之を自分の方へと抱き寄せると
晴翔を睨んだ。
 
 晴翔 「冗談だって!場所には気をつけろよ!」
 隆盛 「あぁ、そうするよ」
 晴翔 「じゃっ!いっただきまーす!」

そう言って食べかけの食事をとって食べ出した。

 隆盛 「はぁ~。ひろはもういいのか?」
 裕之 「うん、買いすぎだって~」
 隆盛 「ひろが食べてる姿がエロくって、ずっと見ていたくなる
     んだよ」
 裕之 「なにそれ?」
 
隆盛は無意識に裕之の頭を撫でると頬に触れる。
側から見ていると、猫が戯れているように見えるほんわかとした空間
だが、晴翔の目からは二人の戯れあいは焦ったくもあった。

 (そこは押し倒してくれよ!いや、服の中に手を入れるとか、上着を
  脱がすとか、そのくらいはアリだろ?見張っとくからさ~)

心の声は喉の奥まで出かかって、すぐに飲み込んだ。
わざと、裕之に触れて隆盛を焚き付けたがそれ以上進展はしなかった。
 
 裕之 「う~ん!そろそろ戻るかな~。女子達煩いし。」
 隆盛 「俺も戻る。一緒に行くだろ?お嬢様?」
 
背伸びをして立ち上がった裕之に片膝をついてキザに誘う隆盛。
どこかの漫画の一場面のようなシーンにドキッとさせられた。
晴翔は咄嗟にスマホのシャッターを押す。

午後からも相変わらずいそがしく、客が絶える事はなかった。
売り上げも順調で、ジュースを何杯か頼んで粘る人もいた。

 松尾 「あの~一緒に写真いいですか?」
 裕之 「お断りします。注文は以上でいいですか?」
 松尾 「はい…」
 
数回に一回は言われるセリフだった。
それもきっちりと断り、せっせとオーダーを運ぶ。
さっき屋上で隆盛に髪を束ねてもらったままだったが、横は
編み込んで束ねたので多少動いても崩れる事はなく、最初の
ロングのストレートよりとても似合っていた。
女子達は厨房の隆盛目当てなので奥を覗いてはそわそわしていた。

 裕之 「女子にモテるのはりゅうばっかじゃん…」
 晴翔 「なに?女子にモテたいの?」
 裕之 「そういう訳じゃないけど…なんかさ…なんでもない!」

拗ねたように、注文の依頼が入る。
夕方にはミスコンがある。
勝手に投票され、後日発表される。
もちろん女子だけじゃなく、女装姿の裕之の写真も入っていた。
投票は出入り口のアーチの側に箱が置いてある。
一人1票持っているのでそれを箱に入れるという簡単なものだった。

 裕之 「はる~。これ代わりに投票してきてくれねー?」
 晴翔 「いいよ。俺の勝手に入れていい?」
 裕之 「うん、おっけおっけ。」
 晴翔 「今回推しがいるから、助かる~。じゃー行ってくるー」

隆盛の票も持つと、裕之の女装の方へと投票した。
もちろん、推薦したのは晴翔なのでそこへ入れる。
圧倒的な得票数に裕之には発表まで黙っていようと心に決めた。

 裕之 「あーーー!終わった~。」
 女子 「お疲れ様~。すっごくよかったよ」
 裕之 「う、うん。あんまり嬉しくないけど」

缶ジュースを渡されたが、疲れたので側の椅子に座ると背もた
れに、もたれかかった。

 隆盛 「お疲れ~。今日はずっと立ちっぱなしだったもんな~」
 裕之 「うん、それもだけどヒールが一番辛いかも」
 隆盛 「似合ってたぞ。」
 裕之 「それって嬉しくないって~」
 隆盛 「着替えてくるか?片付けはやっとくからゆっくり行ってこい」
 裕之 「うん、ありがとう」

誰もいない着替え部屋としてとっていた部屋に入った。
着替え終わってからもしばらくここで休もうと近くの椅子に座って目を
閉じた。
予想以上に疲れていたのかそのまま眠ってしまっていた。

気がつくと辺りは真っ暗になっていて、椅子から飛び起きようとしたが
何故か体が動かなかった。

 裕之 「えっ!なんで?椅子に座ったまま寝ちゃっただけなのにっ!」

椅子の後ろに両腕が縛りつけられていて、びくともしない。
大声を出そうにも口にガムテープが貼られていて声も出ない。
ガタガタと椅子を揺らし音を立てるが、一向に外れない。
するとパタパタと足音が近づいてきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...