偽りの王女に奪われた世界

吊り橋の向こう側

まずは、一息着くと右手にそびえる崖を眺めた。
「この上だな？」
さっきの敵が来た方の橋を渡ると、弓に矢をつがえると上の方で悠々と羽を広げる蝶を撃ち抜いた。
「ミナ、毒の苔玉を回収しとけよ？」
「了解。少しは貰うよ」
「あぁ、あと、カールにも後で渡しといてくれ。」
「りょ～かい」
なんとも間延びした返事が帰ってくる。
緊張感もへったくれもない声だった。
それから崖上に見えるザコのスケルトンを撃ち抜いていく。
ザコが消え去ると奥からマントを巻いた長身の敵が姿を見せた。
「来たぞ。引き付けてから逃げるぞ！」
「わかってるって！」
弓を当てるとこちらに一直線に向かってくる。
しかもナイフを3つ同時に投げてくる。
俺達は咄嗟に盾を構えるとゼム達のもとへと走り出した。
足も早いのでこのままだと追い付かれそうだった。
「なんか、追い付かれそうだよ～」
「あぁ、ちょっと時間を稼ぐか」
俺は立ち止まると盾を構えながら後退しつつ剣を抜く。
一瞬敵の手が上から下に降り下ろされると盾にバシッ。
と当たる音と肩を掠める痛みに気づいた。
「ミナ、下がれ。」
攻撃力はそれほど高くはない。70程削られた位なのでまだ余裕だった。
しかし、盾で防げないというのは意外と厄介だった。
イバラムチ。それが敵が使っている武器である。
出血が酷く見た目は酷く見える。一旦退きながら交戦を試みる。
スピードも早く次から次へと攻撃が立て続けに入る。
「くっそー、じり貧じゃねーか？」
ミナは梯子までたどり着くと早くも上がっていった。
俺はというと後ろを向くわけにも行かず上がることが出来ずにいた。
すると、上から氷の鋭い槍が降ってきた。
その隙に梯子に手をかけた。上まで一気に上がると、弓に持ちかえる。
「ゼム、助かった。」
「ボロボロですなー！」
「あぁ、回復で治せるから大丈夫だけどな。」
そう言って回復薬を流し込んだ。
傷はみるみるうちに治っていった。
痛みも引き、こっからが本番だった。
さっきのゼムの攻撃に怯んだものの、下では降りてこいとばかりに投げナイフを投げてくる。
仕方ないのでこちらからは矢の雨をお見舞いした。
どれも動き回るせいでヘッドショットとはいかないがHPを削るのには充分だった。
倒し終えると皆で敵が出てきた方へと向かった。
細い通路を行った先の拓けた場所に出た。
そこには大きな４本の柱が立っており、その上には敵が一体づつ立っていた。
「近づかなければ降りてこないはずだ、一体ずつ行くぞ？準備はいいか？」
「オッケー」
「わしらは下がっておきますな」
「はい。」
そのうちの一体に弓を当てる。
すると、こちらを向くと短剣を両手に持つと下に降りてこちらに真っ直ぐに駆けてきていた。
俺が盾を構えると最初の初撃を受け流しながら横に避けるとそのままミナが真っ正面から切りつける。
後ろにまわると剣を差し込む。そのタイミングで前からは弓が顔面に命中する。
すると、見ている筈だったもう一体がこちらに走ってきていた。
「げっ・・・まだ早いっつーの！」
怯んでいる目の前の敵を後ろから蹴りつけるとよろめいて前に出たのを確認してから、ミナに仕留めるように目配せをした。
それからこちらに向かってくるもう一体に集中する。
戦っていた場所が悪かった為に気づかれたらしい。
今向かってきているのは長い槍を構えていた。
大振りを予想してこちらも駆け出した。
一気に懐に入ると槍が振り下ろされる前に横に回り込みながら切りつける。
「よしっ。」
まともに入った為に敵が硬直するのを見計らって後ろに回り込んでバクスタを入れる。
バクスタが決まった為、敵の４秒の硬直。
それを見逃さず連続で切りつける。
さっきの敵を倒し終えたミナが加勢して一気にHPを0に削った。
残りの２体も一体ずつ誘きだして倒すと目の前に広がるのは長い吊り橋だった。
途中に落ちていたイバラムチを手に入れたが使い勝手が悪いために、皆アイテムボックスにしまっていた。
「この先は処刑場だったな？ゼムのメイス要るよな？」
「魔法のメイスでしたな。確かに使い勝手がよかったですし。それにチャリオットなら簡単に倒せて、経験値も入るしで良いことずくめですな？」
「まぁ～な。油断しなきゃな？一発でも食らえばお陀仏だがな？」
俺は苦笑いをしながら皆を眺めた。
ヤル気満々のミナに続きカールまでミナと同じく殺る気になっていた。
「どうして似てくるかな～」
頭を抱えそうになったが・・・まぁ、自分もチャリオットは倒して経験値を稼ぐつもりだったので引くつもりはない。