偽りの王女に奪われた世界

秋元智也

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囚われのリック

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ボスを倒し終わると奥に入り口が開いた。
進んで行くと宝箱が置いてあり、ゼムの欲しがっていた魔法のメイスが入っていた。
それ以外にも犠牲の指輪も手に入れることが出来てひとまずは一安心だった。
それからもと来た道、吊り橋を戻り、まだいっていない迷宮の森の奥へと進むことにした。
険しい森を進むと敵の気配に俺は皆を一旦止めさせると小声で話した。
「前方に敵が2名。その奥に1体づつ、計4名。俺は右から回り込む」
「じゃ~私は左から回り込むね」
「ではわしはミナの奥の敵をやりますかな。カールはシリの攻撃対象の奥にしゃがんでいる敵を!」
「わっ、わかりました!」
少しどもったのは気のせいか?まぁ、それよりも目の前の敵に集中だ。
俺は一気に距離を詰めると背後から仕留めた。
それと同時にミナも反対側にいた敵を仕留めていた。
それから後ろにいる敵が立ち上がる前にゼムの撃ちはなった矢が頭にめり込んで一瞬で命を刈り取った。
カールも、そんな上手く行くはずもなく、当たったには当たったのだが致命傷には至らず、こちらに気づいて向かってきた。
こんなザコに手こずる事は無いため俺は剣を構えると切り伏せていた。
「まぁ、こんなもんか?」
「カールっちも惜しいね~」
「すいません!今度こそは・・・」
おとなしくうなだれているカールの頭をぐしゃぐしゃと撫でるとちゃんと髪の感触もごわごわしたものでなく、結構さらさらとしていた。
ゲームなのにこういうところはしっかりと再現されているんだな?と思いながらぐしゃぐしゃとしている事を思い出した。
「次があるしな。気を落とすな。それと、あまり引きずるなよ?さぁ~行くぞ?」
多少考え事をしていたことを誤魔化すように先を促した。
それから自分の髪も触れてみたが結構ごわごわとした触り心地だった。
「う~ん。なんか不公平だ」
そう、小声で呟いたがそれは誰の耳にも止まらなかったのか、それともあえて突っ込まなかったのか?
どちらの優しさなのだろうと思った。
橋を渡ると先には石牢があった。
そこには誰かが閉じ込められていた。
俺達は牢を開けると中の人に話しかけた。
「大丈夫ですか?」
「おおー助かった。さっき会った男に騙されてここに閉じ込められてしまったんだ。なかなか人が通りかからなかったので永い時間ここから出られずに困っていたのだ」
「良かったね?で、君は何でここにいるの?」
「あぁ、自己紹介がまだだったな?私はリック。この先にあるというスケルトンの王を倒しに来たんだ。王を倒すとその先にはお宝の山があると聞く。私はそれを探しに来たんだ」
ミナはそれならと共同戦線を申し出た。
「私達も一緒だよ。なら・・・」
「ありがたいが、それは遠慮させて貰うよ。私は自分の力だけで倒したいんだ。また機会があったら何でも言ってくれ、この恩は忘れはしない。」
そういうと、さっさと出ていってしまった。
「世話しない人ですね~」
カールがぼやきながら立ち去った方を眺めていた。
お前がそれを言うのか?と思わなくもないのだが、それは言うのはやめておいた。
「カールっちがそれを言っちゃうとはね~同じNPCじゃない?」
「え・・・、NPC・・・?」
って、ミナ。お前口に出てるし・・・。
そうだよなぁ~、自分がNPCって言われてもわかるわけないよなー。
ミナを後ろからこずく。
「いたっ・・・何すんのさ~」
「あぁ、あまり気にするな!ミナはたまに変な事を言うからな?」
そういうとカールも納得したのかそれ以上聞いてこなかった。
ミナだけは恨めしそうにこちらを見ていたが今は先に進むことを優先したらしい。
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