異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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8話 初めての魔物

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外に出る日、剣術の先生とその他多くの兵がついてきていた。
隊列を組んでケイルを中心に横には先生が、その前後には多くの兵が
並んでいる。

これでは、魔物が出ても先に倒されてしまって、死体くらいしか見れ
ない。

「少しお待ちください」

兵を止めると、しばらくしてそのまま歩き出す。

「先生、何があったの?」
「あぁ、ツノ兎という魔物がいたので、倒してから進んでいます。」
「えーーー。見たい!どこにいるの?」
「それでしたら…おい、もってこい!」

ダラリと手足を縛られてツノは剥ぎ取られ額からはぼたぼたと血が滴っ
ていた。
兎の可愛さと言うより、死んだ時の歪んだ顔が印象に残った。

「ウェッ…」
「大丈夫ですか?早くそれを持っていけ!」
「はいっ!」

持っていた兵士はすぐにケイルの目の届かないところへと持って行った。

「大丈夫ですか?少し休まれますか?」
「うんん、いや…大丈夫」

想像していた可愛さが全くなかった事に対してのショックもあった。
そのまま進んでいくと何度も、止めて待たされた。

その度に魔物がいたらしい。

「先生!僕も戦っているところが見たいです」
「ケイル様、それは危ないのでだめです。もう少しでダンジョンです。
 入り口なら弱いスライムなどもおります。そこで腕試しをすればい
 かがかと…」
「そうなんですね。わかりました」

そう言われると、それ以上に我儘は言えなかった。

歩いている道中にも、いろいろな薬草を見つけた。
たまに休憩しながら鑑定をかけると毒消し草や、止血草、回復ポー
ション(初級)の元など、持てるものは鞄に詰め込んだ。

「ケイル様、何を熱心に取っているのですか?」
「えっ、なんか見た事ない草がいっぱいあるから、持って帰ろうかな
 って…だめだった?」
「いえ、その様な事はないのですが、荷物が重くなると戦う時に不利
 になるかと…」
「あぁ、大丈夫。少しだけだから」

そう言って鞄の中身を見せた。
もちろん、入っているのは数本の草だけだった。

夢中になって掘って根っこから持ち帰った薬草は時空空間へと閉まっ
ている。
この間、やっと使える様になった魔法だった。
異空間を作りそこにアイテムをしまっておく魔法だった。

習得にだいぶんとかかったが、液体以外は入る事もわかっている。
それと、中が汚れる事はないらしい事も実験で分かった。

しかし、どんなに練習しても覚えられないものもあった。
それが攻撃魔法だった。

火は出せるのに、その場で止まったままだった。
水は出せるのに、ゆっくりふよふよと浮いて流れ出すだけだ。
風に至っては、涼しい程度の爽風を起こすだけだった。
土は土壌のいい土に変える程度だし。
木に至っては、植物促進で、美味しい野菜が食べれている。

早く7歳になって、精霊の加護をもらわないとどうしようもないらしい。

今は目の前の剣を見つめると腕を磨くしかないと心に決めたのだった。

やっとダンジョンへと着くと、目の前にぷよぷよとした液体でできた
生物が至るところにいた。

「あそこにいるのがスライムといって中心の少し色が濃い部分がありま
 す。そこを壊すと倒せます。ですが、注意しなければならない事があ
 ります。それは…」
「頭上からの落下などの攻撃でしょ?スライムに呼吸器系を塞がれると
 いくら弱くても大変ですからね」
「よくお分かりで。その通りです。よく見るとわかりますが、頭上にも
 くっついているので、注意が必要です」

篝火を近づけると上でもウヨウヨと動いていたのだった。
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