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9話 無能の烙印

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スライムの事はあらかじめ調べておいた。
本当なら魔法で攻撃すると核を残して消滅するらしいけど、ケイルには
まだ魔法は使えなかった。

物理攻撃で倒すなら核を直接攻撃すればいい。
だが、ブヨブヨの粘液で覆われている為、そのまま攻撃しても中に吸い
込まれるだけだと書かれていた。

その日から何度か剣に炎を付けれないかと試したりはしたが、いまだに
成功していない。

あとは、切るのではなく突く事だった。

剣以外に細い棒状のものも持ってきた。
軽くて突き刺す為だけにある様な武器だった。

「さぁ~ケイル様、どうぞ」

兵士達の見ている前で恥などかきたくない。
剣ではなく、細い武器を取り出すと先端だけに火を発生させた。
そして勢いよくスライムを貫いた。

何かに当たって砕ける感触。

兵士達も、初めから倒せるとは思ってもいなかった様子で、一匹が弾け
る様に消滅すると、こぞって手を叩いて褒めてくれた。

「さすが、王族です!ケイル様、初めてで倒すとは…」
「末の子は将来が楽しみですな!」

剣術の先生も頷くと喜んでくれたのだった。

何匹か倒した後で息が上がってくると、やっと後ろに下がって休憩した。

「どうでしたか?初めての魔物討伐の感想は?」
「凄いです!本当に僕が倒したんですね。初めてでまだ腕が震えてます」

にっこりと笑って見せると、昔ハイド兄さんが来た時の事を話してくれた。

初めての魔物で、スライム相手に苦戦して結局一匹も討伐できなかったら
しい。
それも、7歳の精霊の祝福前だったらしい。

「それに比べて、5歳で討伐は凄いことです。誇ってもいいくらいですよ」

これを知ったら、ハイド兄さんはきっと怒るだろうな~

「この事はハイド兄さんには報告しないで貰えますか?」
「それは無理だろう。ほらっ、兵士達の士気の高さを見ただろ?あれはケイ
 ル様があげたのですぞ?もう、父君にも知らせないわけにはいきませんな
 ぁ~」


剣術の先生も鼻が高いと言っていた。
これは失敗したかもしれない。

次の日には何かと送り物が届いた。
鑑定結果、毒物入りの食べ物に、毒物の付いた高級家具。
そして、美容にいいからと書かれた化粧水にも、しっかりと毒物が仕込んで
あった。

「これって…誰からのなの?」
「さぁ~わかりかねますが…全部処分ですね」
「うん…そうだね」

意外と物分かりがいいとリーさんは驚いた様子だったが、今のケイルには高い
鑑定能力があった。

そして、月日は流れて7歳の誕生日を迎えた。

その日はあの門をくぐって本館へと向かう。
そこで父親の目の前で精霊の祝福を得るのだ。

兄のハイドは火属性を、ロイドは水属性、姉のアンネは木属性を得ていた。

リーさんと一緒に向かうと、すでに兄弟も揃っていた。
みんなの見守る中、中央の台座に座って手を伸ばす。
そこにハマっている大きな水晶に触れると光だし信託が浮かぶらしい。

ケイルもその通りに手をかざした。

ピタッ…シーーーん

「ん?」

光る事もなく、何も起こらない。
こんな事は初めてだった。
王族なのだから何かの属性は現れるはずなのだ。
だが、何も起こらなかった。

「おい、マジかよ!こいつ無能じゃん」

ハイド兄さんの声がすると、大臣達も口々に言いだす。
父親の睨む視線が、一心に向けられると言葉すら出てこなかった。

無能…魔法の祝福を受けれない事を意味していた。

攻撃魔法が覚わらない理由はこれだったのだろうか?

いくら考えても分からない。
ただ頭が真っ白になっていて、リーさんに連れられて自分の屋敷へと戻っ
てきていた。

一時期、5歳で魔物を倒したと城内でも噂になるほどだっただけに、余計に
期待を裏切られたと思う人は多かった。

もちろん自分もその一人だった。

神からもらったスキルは言語理解。
魔物の言葉や、亜人の言葉が分かると言ったものだ。
戦いには何の力にもならなかった。
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