16 / 92
14話 運命
しおりを挟む
窓からこっそりと入った。
いつもながら音ひとつ立ててはいない。
眠る顔をみるとまだあどけない子供だった。
月明かりに照られされた顔もそうだが、その真っ白い銀髪が印象的
だった。
「綺麗…」
まるで物語の王子様の様な容姿だったのだ。
この世界では異端者だろうけど、圭子のいた世界ではきっとモテモテ
だっただろう。
「ごめんね」
心の中で念じるとナイフを握った。
すると、タイミングが悪いのか、目を覚ましてしまった。
「ん?リーさん?こんな夜遅くになぁに?」
「リーさんじゃなくてごめんね、さよならだ!」
押さえつけると一気に首を引き裂くつもりだった。
「けい…こ…?」
一瞬、迷ってしまった。
その名前呼ばれたのが久しぶりだったと言うのもあった。
「なぜ、その名前を知っている?」
「生きていたんだ…よかった…」
まだ幼い少年は、涙ながらに自分を見ていた。
逃げるでもない、助けを呼ぶでもなく。
ただ、真っ直ぐに見つめてきたのだ。
どうして知っている?
圭子に動揺が走ったのは言うまでもない。
その動揺している隙に、メイドが入ってきた。
もちろんただのメイドではなかった。
ナイフが飛んで来ると、それを庇う様に身体を翻し窓の外に飛び出した。
縋るように見つめてくるあの目を自分は知っている。
どこかで見た気がした。
今では思い出せない、昔に…。
ただただ、もう一度会いたいと思った。
7歳の幼い少年。
だが、決して普通じゃない少年。
彼はきっと、自分の事を知っているにちがいなかった。
暗殺未遂という噂はすぐに裏ギルド内で広まってしまった。
「おい、知ってるか?あの漆黒も魔女が暗殺に失敗したってよ!」
「マジかよ!あの冷酷非道な魔女が?」
「そうそう、無慈悲に暗殺対象以外の家人も皆殺しの魔女がだ!」
「ターゲットは誰だったんだ?」
「それが~この国の王子だったらしぞ?」
「王子ってあの、ハイド殿下か?」
「いや、それが違うらしい。」
噂は広まり、末の王子が暗殺を回避したと噂が広まっていった。
「なぜだ!なぜ失敗しているんだ!ちゃんと依頼したんだろうな!」
「はい、きちんと漆黒の魔女様に依頼をしておきました」
「だったら、なんで今回に限ってまだ、あいつは生きているんだ!」
「ハイド殿下、少し落ち着いて下さい」
「こんな状況で落ち着いていられるか!お父様にこの事が知られたらどう
するつもりなんだ!王族殺しは極刑だぞ!」
ハイドは苛立っていた。
忌々しい弟を始末するつもりが、なぜか生きていて、今は厳重な警備の中
にいるのだ。
こんなはずではなかったからだ。
漆黒の魔女の依頼は絶対成功すると思っていたから安心していた。
だが、結果はどうだろう。
予想外の邪魔にピンピンしている弟。
そして、逆に依頼者の方へと注目が集まってきていたのだ。
王族を殺す依頼をしたのは誰か…と。
「無能の魔力なしのくせに…くそっ…」
物にやつ当たるように投げつけると使用人が怯えるように後ろに下がった。
「何を逃げようとしているんだ?この役立たすが!」
手に持っていた物を投げつけていた。
使用人は決して主人には逆らってはいけない。
何をされようとも…
特に目の前のハイド殿下に逆らうと言う事は、家族もろとも死を意味するのだ。
ただ我慢するように俯くと耐え続けた。
血が伝っても、何事もなかったように振る舞う。
これが、ここの使用人の鉄則だった。
いつもながら音ひとつ立ててはいない。
眠る顔をみるとまだあどけない子供だった。
月明かりに照られされた顔もそうだが、その真っ白い銀髪が印象的
だった。
「綺麗…」
まるで物語の王子様の様な容姿だったのだ。
この世界では異端者だろうけど、圭子のいた世界ではきっとモテモテ
だっただろう。
「ごめんね」
心の中で念じるとナイフを握った。
すると、タイミングが悪いのか、目を覚ましてしまった。
「ん?リーさん?こんな夜遅くになぁに?」
「リーさんじゃなくてごめんね、さよならだ!」
押さえつけると一気に首を引き裂くつもりだった。
「けい…こ…?」
一瞬、迷ってしまった。
その名前呼ばれたのが久しぶりだったと言うのもあった。
「なぜ、その名前を知っている?」
「生きていたんだ…よかった…」
まだ幼い少年は、涙ながらに自分を見ていた。
逃げるでもない、助けを呼ぶでもなく。
ただ、真っ直ぐに見つめてきたのだ。
どうして知っている?
圭子に動揺が走ったのは言うまでもない。
その動揺している隙に、メイドが入ってきた。
もちろんただのメイドではなかった。
ナイフが飛んで来ると、それを庇う様に身体を翻し窓の外に飛び出した。
縋るように見つめてくるあの目を自分は知っている。
どこかで見た気がした。
今では思い出せない、昔に…。
ただただ、もう一度会いたいと思った。
7歳の幼い少年。
だが、決して普通じゃない少年。
彼はきっと、自分の事を知っているにちがいなかった。
暗殺未遂という噂はすぐに裏ギルド内で広まってしまった。
「おい、知ってるか?あの漆黒も魔女が暗殺に失敗したってよ!」
「マジかよ!あの冷酷非道な魔女が?」
「そうそう、無慈悲に暗殺対象以外の家人も皆殺しの魔女がだ!」
「ターゲットは誰だったんだ?」
「それが~この国の王子だったらしぞ?」
「王子ってあの、ハイド殿下か?」
「いや、それが違うらしい。」
噂は広まり、末の王子が暗殺を回避したと噂が広まっていった。
「なぜだ!なぜ失敗しているんだ!ちゃんと依頼したんだろうな!」
「はい、きちんと漆黒の魔女様に依頼をしておきました」
「だったら、なんで今回に限ってまだ、あいつは生きているんだ!」
「ハイド殿下、少し落ち着いて下さい」
「こんな状況で落ち着いていられるか!お父様にこの事が知られたらどう
するつもりなんだ!王族殺しは極刑だぞ!」
ハイドは苛立っていた。
忌々しい弟を始末するつもりが、なぜか生きていて、今は厳重な警備の中
にいるのだ。
こんなはずではなかったからだ。
漆黒の魔女の依頼は絶対成功すると思っていたから安心していた。
だが、結果はどうだろう。
予想外の邪魔にピンピンしている弟。
そして、逆に依頼者の方へと注目が集まってきていたのだ。
王族を殺す依頼をしたのは誰か…と。
「無能の魔力なしのくせに…くそっ…」
物にやつ当たるように投げつけると使用人が怯えるように後ろに下がった。
「何を逃げようとしているんだ?この役立たすが!」
手に持っていた物を投げつけていた。
使用人は決して主人には逆らってはいけない。
何をされようとも…
特に目の前のハイド殿下に逆らうと言う事は、家族もろとも死を意味するのだ。
ただ我慢するように俯くと耐え続けた。
血が伝っても、何事もなかったように振る舞う。
これが、ここの使用人の鉄則だった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる