異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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15話 再会ふたたび

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ケイルは外の空気を吸い込むと、久しぶりに稽古をつけてもらった。
何事もなかったかのように振る舞いながらも、周りを警戒していた。

「ケイル様、いい踏み込みです。もっと重心をしっかりなさると、
 もっと剣筋が安定しますぞ!」
「はい!先生っ…」

言われた事はすぐに直して向かってくる。
まだ7歳とは思えない程に賢い子だった。

こんな子に剣術を教えられて幸せだとも思った。
惜しむらくは、暗殺対象であって、いつ刺客が狙っているかわからない
不安があると言う事だった。

「わしが目の黒いうちは殺させやぜんぞぉ~」

夜も、兵が至るところで兵備している。
ここまで多いと、さすがに諦めるだろうか?

漆黒の魔女ならきっと諦めないだろう。

剣術指南役であり、王宮の剣で知られる男は夜の闇へと目を光らせていた
のだった。

その3日後、命を散らす事となった。
その日は満月で、月明かりでもよく見える日だった。

外の兵士が異変に気づいた時には命を刈り取られ、血まみれで横たわった。

そして、おかしな事に気づいて見に行った時には兵士の死体が山積みにな
っていたのだ。
警笛を鳴らして中に戻ろうとして、足を取られた。

「なに?」

起きあがろうにも立てない?
足が後ろでたったまま地面にくっついているのだ。

一瞬考えが追いつかなかった。
身体だけが崩れ落ちたという現実に…

だが、警笛は鳴らした。
あとは誰かが…グシャ…

ポタポタッ…

「煩いな~、結界内だから誰にも届かないって言うのに…」

退屈そうにしながら圭子は歩き出す。
前のように失敗はしない。
大きな荷物を抱えながら、屋敷へと侵入していく。

そしてとうとう、彼を見つけたのだった。

月明かりに映し出す銀糸の髪に真っ赤な瞳。

「君は…」
「返事を聞きにきたよ。返事次第では生かしてあげる」
「いいよ。殺されても…ハイド兄さんが依頼したんでしょ?」
「ご名答。でもね、私はそれより君が気になるの。どうして私の名前を知っ
 てたの?」
「探していたからかな…僕は、いや、俺は圭子をずっと探してたんだ。行方
 不明になって3年間忘れたことなどなかった。」
「それって…」

圭子の胸が高鳴った。
もしかしたら…

そこで、再び邪魔が入った。
あの時のメイドだった。

「リーさん!?」
「ケイル様、お下がりください」

彼を庇う様に立ちはだかるのが圭子の心を掻き乱した。

「邪魔、退いて!まだ話が終わってないの!」
「ケイル様に近づく賊を放置できると思っているのか?」
「待って!リーさん!圭子、お願いリーさんを傷つけないで!」

どっちもケイルにとっては大事なのだ。
そんな都合よくできないのはわかっている、わかっているけど…
どちらも捨てられなかった。

激しいぶつかりあいが起きるとそのまま廊下へと転がり出た。
ケイルは部屋から出れなかった。
どちらの邪魔もできなかったからだった。

激しいぶつかりあいの末、静かになるとコツコツと足音が聞こえてきた。
服は裂けて血が滲んでいるのかと思ったが、そうではないらしい。

肌は返り血で濡れているだけだった。

「リーさんは…まさか…」
「殺してない。だが、お前は連れていく。いいな?」
「あぁ、構わない」

少年らしからぬ度胸と決意だった。

圭子は大きな荷物を下ろすと荷を解いた。
中にはケイルそっくりな背丈の少年が入っていた。
だが、もう死んでいるのかピクリとも動かない。

「それは…なに?」
「君の身代わりさ」

その首をへし折ると顔面を潰した。一気に髪を焼き切りまるこげにする。
服を脱がせるとケイルの方を見てきた。

「パジャマ他にもあるでしょ?貸してよ」
「構わないけど…そこまでする必要あるのか?」

パジャマを渡すと着せ替え手足を折ってあたりに血を飛び散らせた。
酷いやり方だった。
妹がこんな事をするのか…。
今は何も考えたくなかった。



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