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16話 会いたかった
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目の前の圭子はまるで別人の様な気がしていた。
聞きたい事は山ほどあるが、今はただ黙って見ているしかできない。
圭子はケイルの死体を偽造する為に、別の少年の遺体をバラバラに
残虐な殺し方を再現している。
もちろん見ているこっちは今にも吐きそうだった。
「うーん。これでいいかな~。君さ~ちょっといい?」
そう言ってケイルの髪を掴むとナイフを当ててばっさりと切った。
死体の側にばら撒くと焦げた頭部に移植して偽造する。
そして、ケイルをひょいっと担ぎ上げると窓の外へと飛び出していた。
まるで宙をかけるように空へと駆け上がった。
風の魔法なのだろう。
「凄いっ、空を飛んでるっ!」
「呑気だね?私の機嫌を損ねたらさっきの死体みたいになるんだよ?わか
ってる?」
呑気に喜ぶケイルに注意するが、ケイルは怖がりはしなかった。
誰にでも恐れられる漆黒の魔女が、7歳の少年にここまで笑われると思う
と実に滑稽に思えた。
「君は、本当に7歳?絶対に違うでしょ?」
「そうかもね。圭子、名前あってた?佐野圭子だよね?」
「後でゆっくり話そうか?」
「うん♪」
やっと会えた希望なのだから。
二人にとってこの出会いは、幸運と呼ぶべきだろうか?
もしかしたら、相手を殺していたかもしれない危ない出会い方ではあったが、
殺人依頼が来ていなければ、何年も会う事はなかっただろう。
ケイルが外に出れる日はもっと先になっていただろうから。
もしかしたら一生城に閉じ込められていたかもしれない。
そう思うと、よかった気がする。
地面に着くと、ボロい家の前だった。
「暴れないでよ?逃げたら殺しちゃうかもよ?」
「聞きたい事…あるんでしょ?」
「そうね。君は賢そうだし、無駄に抵抗しなさそうね」
「そうかもね。抵抗しても俺の腕じゃ敵わなそうだし…」
ふっと笑われると担がれたまま家の中に入った。
中は意外と綺麗に掃除されていた。
住んでいるのだろうか?
周りをきょろきょろと見回すと、その場に降ろされた。
「座って。何か飲む?」
「ありがと…」
「まぁ、君の口に合うものなんてないだろうけどね」
「飲めればいいよ。」
「そう?」
圭子はコップを用意するとその中に飲み物を注ぎ入れる。
白いのは牛乳だろうか?
「はい、聞きたい事があるんだけど。」
「圭子と俺の関係って感じかな?今は7歳の身体だけど、前は大学生だった
んだ。ここではない別の世界で圭子は俺の妹だった。いきなり失踪して
以来いくら探しても見つからなかった。ショッピングモールでは友人が
子供を保護したと言っていたらしいけど、監視カメラにもそれらしい子
は写ってなかったらしい」
「…それって何年前?」
「そうだな~、俺が生きてる時は3年前だから。でも、それから俺も死ん
じゃったからな~かっちゃんはどうしたんだろう。やっぱり俺と同じく…」
「生きてる…お兄ちゃんが亡くなったってのは私がこの世界から戻った時に
知ったの。お母さんの日記を見て知ったわ」
「母さんはどうなったんだ?俺、母さんを一人残して死んだからさ…元気に
してたか?」
「あっ、うん。元気そうだったよ。お兄ちゃんが亡くなってちょっと痩せて
たみたいだけど…」
本当の事は言えなかった。
兄が死んで、それに耐えられなくなって自殺したなど、決して話せない。
「でも、戻れたのならなんでここにいるんだ?」
「それは…えーっと、また呼ばれたのよ」
「なんだよ、それ」
「そうなのよ、全く迷惑な話よね~」
「でもさ~なんで圭子は前の姿のままなんだ?俺はいきなり赤子からだった
ぞ?」
7歳児がため息を吐きながら言う事ではなかった。
それでも銀糸の髪に紅い瞳が怒っていても可愛いと思える。
「本当にお兄ちゃんなんだね?」
「おう!だけどさ~なんか魔法適正ないって言われてさ~、そしたら暗殺され
そうになるしで、散々だぜ?屋敷からは一歩も出してもらえないし」
今までの事を語ってみせた。
意外と監視された生活に圭子も驚きだった。
それ以上に食料には毎回微量の毒が仕込まれていたことにも驚きだった。
それにも関わらず、全く弱らないからと、今度は暗殺者を送り込んだと言うわけ
だったのだ。
「お兄ちゃん、それ酷くない?」
「だろ?俺が何したって言うんだっつーかさ~完全にあのハイドってやつが勝手に
やってるのか、父親もしくは母親の差金かも知れねーけどな!」
圭子は少し考えると、何かを思いついたとでも言う様にケイルの身体を抱き上げた。
簡単にひょいっと持ち上がるくらいに軽い。
「お兄ちゃん!せっかくならその兄のハイドってやつ殺しちゃおうよ!」
妹の圭子の言葉は予想以上に驚かされたのだった。
聞きたい事は山ほどあるが、今はただ黙って見ているしかできない。
圭子はケイルの死体を偽造する為に、別の少年の遺体をバラバラに
残虐な殺し方を再現している。
もちろん見ているこっちは今にも吐きそうだった。
「うーん。これでいいかな~。君さ~ちょっといい?」
そう言ってケイルの髪を掴むとナイフを当ててばっさりと切った。
死体の側にばら撒くと焦げた頭部に移植して偽造する。
そして、ケイルをひょいっと担ぎ上げると窓の外へと飛び出していた。
まるで宙をかけるように空へと駆け上がった。
風の魔法なのだろう。
「凄いっ、空を飛んでるっ!」
「呑気だね?私の機嫌を損ねたらさっきの死体みたいになるんだよ?わか
ってる?」
呑気に喜ぶケイルに注意するが、ケイルは怖がりはしなかった。
誰にでも恐れられる漆黒の魔女が、7歳の少年にここまで笑われると思う
と実に滑稽に思えた。
「君は、本当に7歳?絶対に違うでしょ?」
「そうかもね。圭子、名前あってた?佐野圭子だよね?」
「後でゆっくり話そうか?」
「うん♪」
やっと会えた希望なのだから。
二人にとってこの出会いは、幸運と呼ぶべきだろうか?
もしかしたら、相手を殺していたかもしれない危ない出会い方ではあったが、
殺人依頼が来ていなければ、何年も会う事はなかっただろう。
ケイルが外に出れる日はもっと先になっていただろうから。
もしかしたら一生城に閉じ込められていたかもしれない。
そう思うと、よかった気がする。
地面に着くと、ボロい家の前だった。
「暴れないでよ?逃げたら殺しちゃうかもよ?」
「聞きたい事…あるんでしょ?」
「そうね。君は賢そうだし、無駄に抵抗しなさそうね」
「そうかもね。抵抗しても俺の腕じゃ敵わなそうだし…」
ふっと笑われると担がれたまま家の中に入った。
中は意外と綺麗に掃除されていた。
住んでいるのだろうか?
周りをきょろきょろと見回すと、その場に降ろされた。
「座って。何か飲む?」
「ありがと…」
「まぁ、君の口に合うものなんてないだろうけどね」
「飲めればいいよ。」
「そう?」
圭子はコップを用意するとその中に飲み物を注ぎ入れる。
白いのは牛乳だろうか?
「はい、聞きたい事があるんだけど。」
「圭子と俺の関係って感じかな?今は7歳の身体だけど、前は大学生だった
んだ。ここではない別の世界で圭子は俺の妹だった。いきなり失踪して
以来いくら探しても見つからなかった。ショッピングモールでは友人が
子供を保護したと言っていたらしいけど、監視カメラにもそれらしい子
は写ってなかったらしい」
「…それって何年前?」
「そうだな~、俺が生きてる時は3年前だから。でも、それから俺も死ん
じゃったからな~かっちゃんはどうしたんだろう。やっぱり俺と同じく…」
「生きてる…お兄ちゃんが亡くなったってのは私がこの世界から戻った時に
知ったの。お母さんの日記を見て知ったわ」
「母さんはどうなったんだ?俺、母さんを一人残して死んだからさ…元気に
してたか?」
「あっ、うん。元気そうだったよ。お兄ちゃんが亡くなってちょっと痩せて
たみたいだけど…」
本当の事は言えなかった。
兄が死んで、それに耐えられなくなって自殺したなど、決して話せない。
「でも、戻れたのならなんでここにいるんだ?」
「それは…えーっと、また呼ばれたのよ」
「なんだよ、それ」
「そうなのよ、全く迷惑な話よね~」
「でもさ~なんで圭子は前の姿のままなんだ?俺はいきなり赤子からだった
ぞ?」
7歳児がため息を吐きながら言う事ではなかった。
それでも銀糸の髪に紅い瞳が怒っていても可愛いと思える。
「本当にお兄ちゃんなんだね?」
「おう!だけどさ~なんか魔法適正ないって言われてさ~、そしたら暗殺され
そうになるしで、散々だぜ?屋敷からは一歩も出してもらえないし」
今までの事を語ってみせた。
意外と監視された生活に圭子も驚きだった。
それ以上に食料には毎回微量の毒が仕込まれていたことにも驚きだった。
それにも関わらず、全く弱らないからと、今度は暗殺者を送り込んだと言うわけ
だったのだ。
「お兄ちゃん、それ酷くない?」
「だろ?俺が何したって言うんだっつーかさ~完全にあのハイドってやつが勝手に
やってるのか、父親もしくは母親の差金かも知れねーけどな!」
圭子は少し考えると、何かを思いついたとでも言う様にケイルの身体を抱き上げた。
簡単にひょいっと持ち上がるくらいに軽い。
「お兄ちゃん!せっかくならその兄のハイドってやつ殺しちゃおうよ!」
妹の圭子の言葉は予想以上に驚かされたのだった。
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