異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第二章

8話 B級昇格試験

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冒険者ギルドの地下に闘技場があるなんて初めて知った気がする。
今そこでC級冒険者のB級昇格試験が行われようとしていた。

「さて、ケイルくんだったかな?試験を始めようか?」
「…はい」

ケイルの目の前にはB級冒険者が立っている。

昇格試験の内容はB級冒険者に自分を認めさせる事…だった。
もちろん近接職には近接職をあてがい、魔法職には魔法職を当てが
われる。

さっきイリアの試験も終わったところだった。

魔法職相手に一瞬で終わった。
なぜなら、魔法を使う前に相手の首筋にナイフが突きつけられたか
らだった。
これには、誰もが反論できなかった。
誰一人動きを読めなかったからだ。

文句なしの合格となった。

ケイルは体格のいい冒険者を前にして少し緊張していた。
魔物相手でもここまで緊張などしない。
いつもならイリアの罵倒と、逃げる事を許さない状況が緊張などし
ていられなかったからだ。

それに比べ、今は準備時間をもらっているせいで余計に緊張して来
ていた。

イリアに負けてばかりいられない!

いつかイリアを守れるくらい強くなる。
そう言ったのを忘れた事など一度もなかった。

時を止めてしまったイリアもとい、圭子と一緒に生きて行くと誓った
その日、この世界のケイルとして生を受けた日同じくらい心に強く誓
ったのだ。

こんなところで止まってなんかいられないのだ。

『はじめっ!』

のギルド長からの合図に一斉に走り出した。

真正面からぶつかったら力ではどうしても敵わないのは知っている。
だから盾を使って受け流す。

魔物相手で培った瞬発力は伊達じゃない。

丸い盾は相手の剣を流すと最小限の力で軌道を変えれる。その隙に懐
に入り込む。
相手だってそれは警戒しているはず、それを逆手にとって剣の間合い
から後ろへと回り込む。
そして一気に急所を狙う。

ただ、この時反撃を貰わないように手持ちのナイフを足へと差し込む。

盾を持っている手にはいつでも出せる仕込みナイフを入れてある。
籠手から勢いよく出るので初見では避けるのは難しい。

『そこまで!勝者ケイル』

「ありがとうございました~」
「痛って~マジか~こんな子供だと思ってたんだが、油断したぜ」
「人間相手はやっぱり緊張しちゃいますね~」

ちょっと安心し切ったように笑うケイルにギルド長がカードを渡して
きた。

「B級昇格おめでとう」
「ありがとうございます」
「本当に君たちは規格外だな~」

初めにギルドに来た時もそうだったが、まだ幼い子供と見て甘く考え
ていた。
採取依頼ばかりでランクを上げていたと思っていたが、採取依頼はつ
いでで、実際は討伐依頼の傍で採取もやっていたのだ。

しかも危険な地域の採取ばかりを受ける意味を知ったのは討伐した魔
物を見た時だった。

そのどれもがざっくりと急所を抉られていた。
無駄な切り傷はなく、一振りで一匹づつを倒していた事になる。

数は言うまでもない。
それをやったのがこの少年だと言うのだから、誰もが始めは信じては
いなかった。

が、それも毎回続くと信じずにはいられなかった。

「今日はどんな依頼を受けて行くのかい?」
「そうですね~、えぇ~と…」

まだあどけないこの青年には是非とももっと上に行ってほしい。
そんな期待を掛けてしまう。

「これよ!もう私達だけで受けてもいいでしょ?」

イリアが持ってきた依頼は火山地帯のドラゴン調査だった。

「それは…構わないが、危険すぎないか?それは推奨レベルB級以上
 にはなっているが…」
「なら、問題ないじゃない?行くわよケイル」
「う、うん。今日はありがとうございました」

戦ってくれた冒険者にも挨拶をすると出て行ってしまった。
きっと今頃受付けにさっきの依頼の受諾をしているだろう。

全く若いもんは…
若かりし日を思い出しギルド長の口角が上がった。

「楽しみな新人が来たもんだ…」

実に楽しそうだった。

「おい、負傷した分はギルドで払ってやるから教会へ行ってこい」
「へい…マジでさっきの子強かったすね?でも…まだ何か隠してる気
 がするんですよね」

「だろうな…きっと人には使えないスキルでもありそうだ…」
「先が怖いっすね」
「それは楽しみだと言うんだ。」

強い冒険者が生まれれば、その分街も安全になる。
そうやってお金で解決してくれる冒険者という職業は重宝されている
のだ。

いつかのように魔物のスタンピードが起きないように、日々魔物を間
引いておく必要があるのだった。
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