異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第二章

17話 期待のルーキー

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会場を見渡せる場所に一人の男がジッと眺めていた。

冒険者ギルドから早駆けで連絡を貰っていた団長のヘイラスだった。


「今回は骨のありそうなのでもいたか?」
「あぁ、面白いのがいるぞ?しかも若い…」
「ほう、それは扱き甲斐があるな?今回は遠征を控えているから期待
 できるのはいいことだ」

横に来ていた副団長が嬉しそうに来ると会場を見下ろした。
団長と違って体格もよく力も強そうだ。

後ろには大きな斧が二つもぶら下がっていた。
巨漢ならではの戦い方が見えてくる。

一次選抜でかなりの人数が脱落した。
それと、少し予想外な出来事もあった。

冒険者ギルドから来ていた冒険者が脱落した事だった。

かなり有力だと書かれていたのだが、それがなんと青年2人に簡単に
負けたのだった。
いや、あれは、違うな…
勝ったのは、彼ら二人ではない。その後ろにいるあの青年の方だ。

もちろん、彼も冒険者で最近B級に上がったばかりだと書いてあった。
姉弟で活動していたらしい。
姉の方は、誰もが認めるくらいの実力でA級以上だとも聞いている。
騎士団に女性の枠があれば是非とも来て欲しいところだった。

弟の方はどうだろうと思っていたが、派手な強さはないが速さと腕力
は人並み以上だった。

いや、違う。
ヘイラスの目には彼を覆う魔力の流れが見えた。
魔力バフがかかっている。

「なるほどな…あの歳でできるとは…」

なかなか、優秀だと言うことを知った。
これは期待以上だった。

最後まで残る事だろう。
今回の遠征が楽しみだ。

ケイル達が案内されたのは少し小さ目の部屋だった。
中には10人ずつ入っていく。
そして、中にいる試験管と戦うらしい。

「これって倒せばいいの?」
「いや…普通倒せねーから…」
「なら何をするんだ?」

ケイルはどうしたら受かるのかが知りたかった。

「それはね、あそこに砂時計があるでしょ?あれが無くなるまでの間、
 立っていられればいいんだよ」
「それだけでいいの?」

ナシスがノックの代わりに答えるとケイルは少し安心した。

「安心するのは早いぜ?ここにいるメンバーが倒されて行ったら、す
 ぐにタイマンになっちまうんだからな?」
「ん?ノックもナシスも簡単にやられるつもりなのか?」
「そんな訳ねーだろ!例えばだ!た、と、え、ば!」

ムキになるノックにケイルとナシスが笑い出してしまった。

「さっきのってバフだよね?ケイルは魔法も使えるの?」
「ん?あぁ、あれは…まぁ…僕さ、魔力少なくて、攻撃魔法とか使えな
 くてずっと馬鹿にされてたんだ。でも、少なくても使いようだって分
 かってから強くなりたいって思うようになったんだ」
「魔法が使えなくて馬鹿にするなんて酷いね。王族や貴族でもない限り
 普通は魔法なんて使えないよ?元々魔力自体が平民は少ないからね。
 ケイルは貴族なの?」

当たり前だったと言ってから、ハッと気づいた。
王の直径だったから当たり前であって、平民からしたら魔力などなくて
当たり前なのだ。

「う、うん…昔はね。今は追い出されちゃったから…」
「そうなんだ~大変だったね~。騎士団に入れば手柄次第で貴族にだっ
 てなれるって聞いたよ?頑張らないとね!」

ナシスは勇気付けるように言ってくれたが、ケイルは少し反省せざるを
得なかった。

まずは、平民として生きて来た設定が早くも崩れたからだった。

「うーん、気をつけないとな~」

まずは、目の前の事から片付けなくてはならなかった。
砂時計が逆さまにされると、中にいた兵士が木の棒を構えて向かって来
ていた。

「最初に俺たちかよっ!」

ノックは剣で受け流すとその後ろからナシスが両手に剣を握りしめて駆け
出していた。

次々にスイッチするように攻める二人に現役の兵士はしっかり対応できて
いた。

多分、扱かれて来たのだろう。
そう簡単にはクリアできそうになかった。

一気に弾き飛ばされた二人を無視して、今度は別の受験者へと突進して行
った。

「まるで猪だな?」
「ケイルは見てるだけかよ?」
「うーん、まぁ、向こうも僕の事は後にしたいらいしぞ?」
「なんでだよ?」
「ほらっ…」

見てみると、のされて動けんくなっている人が何人もいた。
他を片付け終わると、再び目の前に戻って来た。

「あとはガキどもか…本当は俺は重量武器が専門だが、こんな軽い棍棒で
 やられていては期待すらもてねーな?」

馬鹿にするように挑発して来ると言うことは、こっちの事情を知っている
のだろうか?

「いいよ。本気で行こうか?」

ケイルが構えると一気に全身にバフをかける。
そう何回も使えるものでもないが、ここでは使う必要がある気がした。
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