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第二章
19話 対人戦
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今日のメニューは全員で走り込みのうえ、木刀でのペアでの打ち込み
だった。
「おい、お前!副団長を倒したって本当か?」
ケイルの目の前の同じく見習い兵士は顔を真っ赤にしながら呼吸が乱れ
ている。
「偶然な…たまたま躓いたところに一撃が入ったんだ。いい偶然だった」
適当に答えるとうんうんと勝手に解釈したようだった。
「それはそうだろう、お前みたいなガキが敵うはずがないんだ。俺にだ
って勝てるはずはっ!」
今はバフもかけていないので力も一般的だった。
目の前の男の剣を受け流し反撃するも、簡単に受け止められてしまう。
まぁ、これがケイル自身の実力なのだろう。
小手先の器用さはあるが、やっぱり力や速さは簡単には身につかない。
ただ、人と違うところは実践経験の差だろう。
一瞬の判断はいつも的確で危ないと思う攻撃はしっかりと避けている。
そして、受けてもいい攻撃のみ、受け流す。
何度も打ち合っていても人間の攻撃パターンは面白い。
魔物は一撃、一撃が急所を狙って来るが、人は違う。
相手の目の動きでどこを狙うか分かるが、ケイル自身どこを狙っていい
のか迷って、なかなか攻撃に出れない。
腕を狙うか?腕なら付け根か?
首を狙うか?木でも突けば打ちどころ次第で死んでしまう。
なら、足か?
しかし、明日も走るならやり過ぎると困るだろうな~。
考えているだけで、実行できない。
「おいおい、打ち返しもできないのかよ!軟弱だな~」
「うーん、別にそう言う訳じゃないんだが…」
「だったら打ってこいよ!俺の速さにかわすのが精一杯だろ?」
なんか勘違いされてる気がする。
が、まぁそれでも構わない。
目立ってもいいことはないだろう。
ただしひたすら避け続けると終了の鐘が鳴った。
みんなが汗だくで息が切れている中でケイルは平然としていた。
いつもと運動量が違うのだ。
イリアとだったらこんなもんじゃ済まない。
休憩なんてものはほぼない。
木刀を返すと全員で湯浴みへと行く。
その様子をじっと眺めている人影があった。
ケイルは気づいている。
殺気だっていないが、それでもずっと眺めていられれば嫌でも気づく。
他の兵士は気づいていないかもしれないが、散々死地を体験してきた
ケイルには気付けてしまう。
「どうした?」
「うん、ちょっと用事を思い出したから、後で行くよ」
「おう、早くしろよ?」
ノックに伝えるとそのままさっきの場所へと引き返した。
物影から出て来た人物は誰も居なくなった訓練場に一人佇んでいた。
「誰かお探しですか?それとも…何か話でも?」
「気づいていたのか?」
「それは…そうですね~、訓練始めた辺りからずっと眺められれば、嫌で
も気づきますよ?」
「それは悪かったな…君が冒険者ギルドから来たケイルでいかな?まだ15
だと聞いたが?」
一応入る時に、年齢を偽ったはずだが…この男は知ってるらしい。
と言うことは、ただ一人しかいない。
「はい、ヘイラス団長」
「俺は名乗ったか?」
「いえ、僕の事を知っているのも、ギルドからの依頼を知っているのも団長
だけのはずなので」
「なるほど。幼い割に頭も回るのか?」
納得したのか、側まで来るとケイルを見下ろして来た。
「手を見せてもらっても?」
「いいですけど…何か?」
ケイルは幼いながらに、手を見る限りは何度も豆が潰れたようなあとはない。
確かに皮膚は硬くなって来ているが、長年剣を持っていた手には見えない。
「ふむ…」
「剣を握っていた手ではないって言いたげですね?」
「何でも見抜かれていたか?」
「そうですね…僕の手に豆ができると姉が嫌がるんですよ。だからすぐに回復
させちゃうんですよね…」
「回復だと?なら、姉とは教会の人間なのか?」
団長もやっぱりそう思うのだろう。
「いえ、違います。教会に見つかると連れていかれるんでしたっけ?僕らはそ
んなところに行くつもりはないので。」
「そうか…回復が使える冒険者かぁ~、確かかなり強いと聞いたが?」
「それって言わなきゃダメですか?今、関係ないですよね?」
ケイルは訝しむと団長を睨みつけた。
「あぁ、答えなくてもいい。ただ、気になってしまってな。君といい、姉とい
い、なぜそこまで強くいられるのかと思ってね」
団長のヘイラスはただの好奇心だと言った。
好奇心で何でもかんでも答えるわけにはいかない。
「僕たちの事は秘密です。冒険者ギルドにでも聞いてみて下さい」
「では、質問を変えよう…君はこのまま騎士団に残る気はあるか?」
「それは…依頼が終わってもという事でしたら、お断りします。僕は姉と一緒
に冒険者になったんですから」
キッパリというと、そのまま戻っていったのだった。
だった。
「おい、お前!副団長を倒したって本当か?」
ケイルの目の前の同じく見習い兵士は顔を真っ赤にしながら呼吸が乱れ
ている。
「偶然な…たまたま躓いたところに一撃が入ったんだ。いい偶然だった」
適当に答えるとうんうんと勝手に解釈したようだった。
「それはそうだろう、お前みたいなガキが敵うはずがないんだ。俺にだ
って勝てるはずはっ!」
今はバフもかけていないので力も一般的だった。
目の前の男の剣を受け流し反撃するも、簡単に受け止められてしまう。
まぁ、これがケイル自身の実力なのだろう。
小手先の器用さはあるが、やっぱり力や速さは簡単には身につかない。
ただ、人と違うところは実践経験の差だろう。
一瞬の判断はいつも的確で危ないと思う攻撃はしっかりと避けている。
そして、受けてもいい攻撃のみ、受け流す。
何度も打ち合っていても人間の攻撃パターンは面白い。
魔物は一撃、一撃が急所を狙って来るが、人は違う。
相手の目の動きでどこを狙うか分かるが、ケイル自身どこを狙っていい
のか迷って、なかなか攻撃に出れない。
腕を狙うか?腕なら付け根か?
首を狙うか?木でも突けば打ちどころ次第で死んでしまう。
なら、足か?
しかし、明日も走るならやり過ぎると困るだろうな~。
考えているだけで、実行できない。
「おいおい、打ち返しもできないのかよ!軟弱だな~」
「うーん、別にそう言う訳じゃないんだが…」
「だったら打ってこいよ!俺の速さにかわすのが精一杯だろ?」
なんか勘違いされてる気がする。
が、まぁそれでも構わない。
目立ってもいいことはないだろう。
ただしひたすら避け続けると終了の鐘が鳴った。
みんなが汗だくで息が切れている中でケイルは平然としていた。
いつもと運動量が違うのだ。
イリアとだったらこんなもんじゃ済まない。
休憩なんてものはほぼない。
木刀を返すと全員で湯浴みへと行く。
その様子をじっと眺めている人影があった。
ケイルは気づいている。
殺気だっていないが、それでもずっと眺めていられれば嫌でも気づく。
他の兵士は気づいていないかもしれないが、散々死地を体験してきた
ケイルには気付けてしまう。
「どうした?」
「うん、ちょっと用事を思い出したから、後で行くよ」
「おう、早くしろよ?」
ノックに伝えるとそのままさっきの場所へと引き返した。
物影から出て来た人物は誰も居なくなった訓練場に一人佇んでいた。
「誰かお探しですか?それとも…何か話でも?」
「気づいていたのか?」
「それは…そうですね~、訓練始めた辺りからずっと眺められれば、嫌で
も気づきますよ?」
「それは悪かったな…君が冒険者ギルドから来たケイルでいかな?まだ15
だと聞いたが?」
一応入る時に、年齢を偽ったはずだが…この男は知ってるらしい。
と言うことは、ただ一人しかいない。
「はい、ヘイラス団長」
「俺は名乗ったか?」
「いえ、僕の事を知っているのも、ギルドからの依頼を知っているのも団長
だけのはずなので」
「なるほど。幼い割に頭も回るのか?」
納得したのか、側まで来るとケイルを見下ろして来た。
「手を見せてもらっても?」
「いいですけど…何か?」
ケイルは幼いながらに、手を見る限りは何度も豆が潰れたようなあとはない。
確かに皮膚は硬くなって来ているが、長年剣を持っていた手には見えない。
「ふむ…」
「剣を握っていた手ではないって言いたげですね?」
「何でも見抜かれていたか?」
「そうですね…僕の手に豆ができると姉が嫌がるんですよ。だからすぐに回復
させちゃうんですよね…」
「回復だと?なら、姉とは教会の人間なのか?」
団長もやっぱりそう思うのだろう。
「いえ、違います。教会に見つかると連れていかれるんでしたっけ?僕らはそ
んなところに行くつもりはないので。」
「そうか…回復が使える冒険者かぁ~、確かかなり強いと聞いたが?」
「それって言わなきゃダメですか?今、関係ないですよね?」
ケイルは訝しむと団長を睨みつけた。
「あぁ、答えなくてもいい。ただ、気になってしまってな。君といい、姉とい
い、なぜそこまで強くいられるのかと思ってね」
団長のヘイラスはただの好奇心だと言った。
好奇心で何でもかんでも答えるわけにはいかない。
「僕たちの事は秘密です。冒険者ギルドにでも聞いてみて下さい」
「では、質問を変えよう…君はこのまま騎士団に残る気はあるか?」
「それは…依頼が終わってもという事でしたら、お断りします。僕は姉と一緒
に冒険者になったんですから」
キッパリというと、そのまま戻っていったのだった。
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