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第二章
20話 違和感
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ヘイラスは気になる程度だった青年の事を、本気で面白いと思うように
なっていた。
「今日も練習見に来たのか?」
「あぁ、ジングか…そうだね。彼の様子はどうだい?」
「あいつならほれ、そこにいるだろ?」
「うん、そうだね。いつもバフを使う訳じゃないんだね?」
見ている限り魔力が通っていない。
普通の状態でも普通に互角に渡り合えている。
いや、なんだかおかしい…彼は相手の攻撃を受け流すだけで、攻撃をし
ていないのだ。
「ジングちょっといいか?彼はなぜ攻撃しないんだ?いくらでも隙はあ
るし、できるタイミングはあっただろう?」
「あぁ、それか…なんか初日からずっとあんな調子なっだよな~、攻撃
できない訳じゃ無さそうなんだがなぁ~俺の時はガンガン攻めて来た
しな~」
「ふ~ん、彼は人を傷つける事に躊躇しているのかもしれないね」
「躊躇って、兵士に怪我はつきもんだろ?」
「強い人にはきっと本気でいけるけど、弱い相手には手加減が効かず彼
は本気を出せないタイプかな…」
ジングはそれを聞いてため息を吐き出した。
「それじゃ~遠征で困るだろ?」
「そうはならないんじゃないかな?彼は魔物には滅法強いよ?きっとね」
冒険者の本懐は魔物の討伐依頼がメインなのだ。
またに盗賊の排除もあるが、滅多にあるわけではない。
それには理由があって、騎士団が先に取り押さえに行くからだった。
冒険者に任せると取られた金品は見つけた冒険者のものとなる。
騎士団が確保すれば国に召し上げられるのだ。
そして改めて騎士団へと予算という形で降りてくる。
対人戦を苦手そうにしている彼を眺めながらヘイラスは自室へと戻った。
明日には遠征へと向かわなければならない。
物資も揃った。
食料も運送用の馬車の同行も準備した。
途中で武器がダメになってもいいように代わりの武器もしっかりくくりつ
けた。
ヘイラスの指揮の元、今度こそあの未到の地を攻略したいものだった。
前回帰って来た理由は団員の半数以上が瀕死の重症に陥ったからだった。
今度は毒消しポーションも、回復ポーションも準備した。
前回の二の舞だけは絶対にしてはならなかった。
夜も更けていくと、夜空に光るものが見え始めた。
星が見える時は明日はきっと晴天になる。
いい遠征にしたい。
今度こそ、そんな強い気持ちが、ヘイラスを駆り立てていたのだった。
騎士団には問題児というのがいるもので、それにはいつも頭を悩ませてい
た。
何が問題だというと、騎士団では女人禁制だ。
なのに馬車に女性を隠して連れていき、夜の伽をさせている貴族の子息が
混じっているのだ。
追い出したくても、寄付金を出してくれているので国が余計な口を出して
きて、追い出す事もできない。
貴族は魔力が高く、戦闘には有利に働く。
庶民は剣を磨く事はできても魔力はそうもいかない。
生まれついたものは変えられないのだ。
「魔力かぁ…それ言えば彼も魔力を使っていたな…庶民なのに?いや、違う
もしかすると…」
貴族の子息で行方が分からなくなった者はいない。
なら、王族?まさかそんな訳は…
少し前に王族殺しがあったのを思い出す。
確か、ここからだいぶんと離れた国だったはずだが。
末っ子と長男が無惨な殺され方をされたと風の噂で聞いた事があった。
皮肉にも面には出されていない末っ子は銀糸の髪で赤い瞳をした子供だった
と聞いた。
まだ7歳という若さで焼かれながら死んでいったという。
人間焼かれながら死ぬのは一番酷いとされている。
死刑囚にも首を刎ねる事はあっても燃やす事はない。
痛みと呼吸困難から、しばらく悶え苦しみ死んでいくからだった。
長兄は真っ二つに切られ、切り口は鋭利な刃物でもここまで切れないだろうと
噂されたのを思い出した。
現場にいた人間が『こんなに骨もろとも綺麗の切れるものか?』と言っていた
という。
ヘイラスもその事については何度も言われた事があった。
『お前ならできるか?』
と…。
もちろん答えはNOだった。
人間の骨を鈍器で砕く事ならジングでも出来そうだが、スパッと切るのは人間
技ではない。
そう結論づけた案件だったからだ。
ヘイラスは執務室からある物を取り出すと駆け出していた。
なっていた。
「今日も練習見に来たのか?」
「あぁ、ジングか…そうだね。彼の様子はどうだい?」
「あいつならほれ、そこにいるだろ?」
「うん、そうだね。いつもバフを使う訳じゃないんだね?」
見ている限り魔力が通っていない。
普通の状態でも普通に互角に渡り合えている。
いや、なんだかおかしい…彼は相手の攻撃を受け流すだけで、攻撃をし
ていないのだ。
「ジングちょっといいか?彼はなぜ攻撃しないんだ?いくらでも隙はあ
るし、できるタイミングはあっただろう?」
「あぁ、それか…なんか初日からずっとあんな調子なっだよな~、攻撃
できない訳じゃ無さそうなんだがなぁ~俺の時はガンガン攻めて来た
しな~」
「ふ~ん、彼は人を傷つける事に躊躇しているのかもしれないね」
「躊躇って、兵士に怪我はつきもんだろ?」
「強い人にはきっと本気でいけるけど、弱い相手には手加減が効かず彼
は本気を出せないタイプかな…」
ジングはそれを聞いてため息を吐き出した。
「それじゃ~遠征で困るだろ?」
「そうはならないんじゃないかな?彼は魔物には滅法強いよ?きっとね」
冒険者の本懐は魔物の討伐依頼がメインなのだ。
またに盗賊の排除もあるが、滅多にあるわけではない。
それには理由があって、騎士団が先に取り押さえに行くからだった。
冒険者に任せると取られた金品は見つけた冒険者のものとなる。
騎士団が確保すれば国に召し上げられるのだ。
そして改めて騎士団へと予算という形で降りてくる。
対人戦を苦手そうにしている彼を眺めながらヘイラスは自室へと戻った。
明日には遠征へと向かわなければならない。
物資も揃った。
食料も運送用の馬車の同行も準備した。
途中で武器がダメになってもいいように代わりの武器もしっかりくくりつ
けた。
ヘイラスの指揮の元、今度こそあの未到の地を攻略したいものだった。
前回帰って来た理由は団員の半数以上が瀕死の重症に陥ったからだった。
今度は毒消しポーションも、回復ポーションも準備した。
前回の二の舞だけは絶対にしてはならなかった。
夜も更けていくと、夜空に光るものが見え始めた。
星が見える時は明日はきっと晴天になる。
いい遠征にしたい。
今度こそ、そんな強い気持ちが、ヘイラスを駆り立てていたのだった。
騎士団には問題児というのがいるもので、それにはいつも頭を悩ませてい
た。
何が問題だというと、騎士団では女人禁制だ。
なのに馬車に女性を隠して連れていき、夜の伽をさせている貴族の子息が
混じっているのだ。
追い出したくても、寄付金を出してくれているので国が余計な口を出して
きて、追い出す事もできない。
貴族は魔力が高く、戦闘には有利に働く。
庶民は剣を磨く事はできても魔力はそうもいかない。
生まれついたものは変えられないのだ。
「魔力かぁ…それ言えば彼も魔力を使っていたな…庶民なのに?いや、違う
もしかすると…」
貴族の子息で行方が分からなくなった者はいない。
なら、王族?まさかそんな訳は…
少し前に王族殺しがあったのを思い出す。
確か、ここからだいぶんと離れた国だったはずだが。
末っ子と長男が無惨な殺され方をされたと風の噂で聞いた事があった。
皮肉にも面には出されていない末っ子は銀糸の髪で赤い瞳をした子供だった
と聞いた。
まだ7歳という若さで焼かれながら死んでいったという。
人間焼かれながら死ぬのは一番酷いとされている。
死刑囚にも首を刎ねる事はあっても燃やす事はない。
痛みと呼吸困難から、しばらく悶え苦しみ死んでいくからだった。
長兄は真っ二つに切られ、切り口は鋭利な刃物でもここまで切れないだろうと
噂されたのを思い出した。
現場にいた人間が『こんなに骨もろとも綺麗の切れるものか?』と言っていた
という。
ヘイラスもその事については何度も言われた事があった。
『お前ならできるか?』
と…。
もちろん答えはNOだった。
人間の骨を鈍器で砕く事ならジングでも出来そうだが、スパッと切るのは人間
技ではない。
そう結論づけた案件だったからだ。
ヘイラスは執務室からある物を取り出すと駆け出していた。
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