好きになっていいですか?

秋元智也

文字の大きさ
20 / 89

20 決別

しおりを挟む
事件が発覚してから、警察の手によって仕掛けられたビデオも回収された。
その後で分かったことだが、首謀者は同じクラスの田中新之介と佐藤拓磨
だった。それに乗せられたのが二宮、本田、松本だった。皆本先生はいま
だに事件は否認している。しかし、精液を鑑定した事によって、言い逃れ
はできなくなった。

 
 タツヤ「なー。あれからリクに会ったか?」
 イツキ「あぁ、会いに行ったけど…」
 タツヤ「ちくしょー…なんでこんな事に…」
 イツキ「きっかけはお前だろう?竜也。」

真剣な顔で樹が聞いてくる。確かに田中や佐藤が知ってしまったのには竜也
が原因だった。しかも、脅されてた事も知らずにいた。話して欲しかった。
そうすれば1番に駆けつけてやるつもりだった。

 イツキ「もう、二度と俺に話しかけてこないでくれ。それとリクにもだ」
 タツヤ「それは関係ないだろ?リクがそう言ったのかよ」
 イツキ「リクの親からだ。それにもうすぐ引っ越すそうだ。」
 タツヤ「うそ…だろ…」
 イツキ「こんな事があって、そのままいられる訳がないだろう?それに、
     しばらくは学校も通えないだろうな。あれじゃーな」
 タツヤ「なにがあったんだよ!教えろよ!」
 イツキ「もう、お前とは顔もみたくないよ。消えてくれ」

立ち上がると樹は帰ってしまった。
隣の家なのに、聞く事もできない。自分もリクを傷つけた一人であるのには
変わらないからだった。それでも気になってリクの部屋の窓にベランダから
飛びうつると忍び混むことにした。夜は寝静まった時間、ベランダを飛び
超えて、利久斗の部屋の窓を叩く。返事はないがいつもそこは開いているの
を竜也は知っていた。開いている合図にカーテンを少し外に挟んでおくのだ
挟まったカーテンを横目に窓をスライドさせて開いた。中は静かで一緒に寝た
ベッドには利久斗が横たわっていた。腕には点滴がされていた。中に入ると
ベッドの横に腰掛けた。利久斗の手を握るとそっと口付けた。

 タツヤ「ごめん、もっと早く助けてやれなくて…本当にごめん」
 リクト「…竜也?」
 タツヤ「リク!お前大丈夫なのか?」
 リクト「ごめん、動けないんだ…来てくれたんだ~、僕ね…恥ずかしい動画
     撮られちゃったみたい、もうこの街には居られないんだって…竜也
     とも樹とも会えないって…うぅっ」

泣き出す利久斗になにも言いかえす言葉が見つからない竜也は手を握り締める事
しか出来なかった。

 リクト「お別れする前に伝えたかったんだ……竜也との事は嫌じゃなかったん
     だ。すっごく気持ち良かった。ずっと一緒にって…もし彼女ができて
     も…それでもって…思ってた」
 タツヤ「あぁ、彼女なんかいらねーよ。リクが側にいてくれたらそれで」
 リクト「今日もご飯吐いちゃった。食べれなくなっちゃた……どうなるんだろ
     う……体も下半身はうまく動かないんだ…このまま死にたくないよぉ~」

竜也は利久斗の細い体をギュッと抱きしめると布団の中に入るとその温もり
を全身で感じた。

 タツヤ「大丈夫、大丈夫だから。きっと俺が守るから。」

朝にはこっそりと部屋に戻っていった。


異例の事態となった、教師が生徒に猥褻行為をおこなったのはたまにある話
だが、男子生徒にである。その生徒は一週間も他に生徒に監禁され飲まず食
わずで見つかった時には脱水症状にもなっていたというのだ。その証拠も
動画で上がっており、言い逃れも出来なかった。学校での暴行は盗撮用の
カメラで一部始終が写されており、証拠も全て揃っていた。傷害罪で告訴
され、学校では名前も曝され、自宅謹慎になっている。


利久斗は東京の中学へ編入する事になり、田舎を離れる事となった。
今は精神的ショックで体も心も傷ついているが、日にちが経てば、いつかは
元のように元気になると医者に言われたのだった。引越しの業者が慌ただし
く行き交い、利久斗達親子はタクシーで新しい家に向かった。
東京の学校はというと、2学期末から復帰という事になった。
懐かしい街の風景を眺めながら、小刻みな揺れにいつのまにか眠ってしま
っていた。



(利久斗…俺はお前の事…どう思ってたんだろう?)

高台から引越しのトラックが離れていくのを眺めながらそう呟いたのは森脇
樹だった。同じクラスで、いつも勉強を教えていた秀才。
いつも一緒にいて、よく弁当も一緒に食べていた。みんなから尊敬されるの
は嬉しいが、1番嬉しいのはそれを間近で言葉にしてくれる利久斗の存在だ
った。たまに夢で利久斗を自分が抱いている事もあり、絶対に嫌がる事はす
まいと密かに思っていた。だが現実は竜也が利久斗と仲良くなっていて、自分
は勉強に追われ、助けを求めても貰えなかった。それどころかヘルプサインも
見逃していたのだ。いつかきっと自分も東京へ行く。その時はちゃんと言おう
嫌われたとしても、それでも友としてでも一緒に居たいと、伝えよう。
なにも言えずに、離れ離れになる悔しさは、これで最後にしようと自分自身に
誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...