好きになっていいですか?

秋元智也

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42 展示会

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大学へ行っても暫くは三宅仁美に会う事はなかった。
ちょっと安心したのと、この前の出来事を見られていた事への羞恥心もあり
会うのは躊躇われた。医療の方にいる利久斗にとって合うとしたら食堂くら
いなのだが、そこでも顔を見る事はなかった。
一ヶ月後いきなり後ろから声をかけられ、振り返るとそこには三宅仁美と角
谷恭子の姿があった。

 ヒトミ「久しぶり~、調子はどう?Twitter閉鎖しちゃったんだ~」
キョウコ「挨拶も出来んのか?」
 リクト「はいはい。お久しぶりです。ではさようなら」
 ヒトミ「ちょっと、待ってってば!」

前に出ると道を塞いでくる。
話したい事でもあるのだろう。何かのチケットを差し出してきた。

 リクト「これは?」
 ヒトミ「展示会のよ。見に来て!彼と一緒に」
 リクト「来れるかどうか分からないよ」
 ヒトミ「それでもいいよ。これだけ渡したかっただけ。さぁ、
     恭子ちゃん、行こう」

写真展の入場券を2枚持て余し気味にひらひらさせて眺めていたが、鞄
にしまうと次の授業に向かった。
だんだんと授業の内容は難しくなっていく。
実践も本格的になり、CGを使った簡単な手術もやるようになった。
終わった後はどっと疲れがくる、少しでもいい評価をもらいたくて
誰もが必死になって予習をしてくるので、おちおちとしてはいられない。
帰ってからもご飯を作るとそのまま部屋へと籠る。
今日学んだ事を完全に体で覚えるまで同じことを繰り返す。
医療にミスは許されない。だからこそ、何度も何度も繰り返す事が大事
になる。
玄関のドアが開く音がして利久斗の部屋に入って来ても集中してるのか
全く気づかない。

 ユウマ「利久斗?りーくと!」

後ろから抱きつくと優馬は耳元で名前を囁いた。

 リクト「えっ…あ、おかえり~」
 ユウマ「あんまりこん詰めすぎるなよ。飯サンキューな」
 リクト「うん、でもここまでは完璧に出来るようにならなきゃ」

利久斗の真面目なところは好きだが、やりだしたら時間を忘れてやり続け
ろところは不安でもあった。
たまに息抜きでもするように夜の散歩に出かけたりと、余裕のありそうな
時は風呂に一緒に入ってはそのまま雪崩れ込む様に体を重ねる。
今日みたいに真剣にやっている時はそっとしておく事にしている。
コーヒーだけ入れると、机に置いてそのままキッチンで食事を取った。

 ユウマ「ちょっと、寂しいかな~。」

優馬では選べなかった医者という道へ利久斗が必死に行こうとしているのは
とても嬉しかった。
できれば自分もその横に立ちたかった。
馬鹿な優馬にはそれはできないけど、応援だけはしようと決めた。
いつか、母親の病院を継いでほしい、一緒に働きたいと思えるようになっていた。
その為にも、優馬は母に自分の恋人だと利久斗を紹介したかった。
今はまだ、利久斗がその時期ではないというので言わないが、いつか資格を取って、
医者としてやっていけるようになったら…。

 ユウマ「ん?これは…」

机の上に無造作に置かれている写真展のチケット。
メモ書きで三宅さんからだと書かれていた。来週の土曜に行かないかと…。
もちろんおっけだと伝えたいが、今は真剣に勉強中なのでそっとメモ書きを残して
自室に入った。



土曜になると優馬と共に利久斗は三宅仁美からもらった展示会へときていた。
優秀作品が展示されていて、その中の物を来場者が新たに投票して、先生達の評価
と会場に来ている人の評価と両方選ばれてやっと、決まるらしい。
それぞれ、写真にモチーフを決めて風景の移り変わりの様子を撮ったものや、モデル
をどうやって表現するかに賭けた作品もあった。
その奥に三宅仁美の作品もあった。
神秘的な表現で一人の女性?を撮したもののように描かれていた。
もちろんモデルは利久斗だが、解説には男性とは書かず、人の神秘を描くとだけ付け
られていた。見ている人から溢れる言葉が耳に入る。

 男「綺麗な子だな~、どこで見つけたモデルだ?」
 女「肌も白くて綺麗ね。モデルに差が出るのは悔しいわね」
 男「いいねー。この子、三宅に友達いたのか!角谷以外にいたとはな~」
 男「あいついつも角谷といるもんな!」
 女「二人でいつも一緒って気持ち悪いわ」
 男「この大学の子かな?見たことねーな」

各々感想を言っていく。
聞いててなんだかいたたまれなくなって優馬と一緒に早足で回った。
出口で名前の書かれた箱があって、最初に入った入場券と交換した造花を箱に投票
する形になっていた。
利久斗は自分がモデルなだけに、三宅に入れるのに戸惑っていると、横から優馬が
造花をかっさらうと、自分のと一緒に三宅仁美の箱に入れた。

 ユウマ「これで、いいだろ?」
 リクト「うん。迷う必要なかったね」
 ユウマ「あぁ。利久斗を選ばないはずねーだろ」
 リクト「そこは、僕じゃなくて三宅さんね」
 ユウマ「このままどっか食べに行こうぜ」
 リクト「いいねー。優馬の奢りね」
 ユウマ「あぁ、いくらでも奢ってやるよ。そのかわり、夜は寝かさねーから」

外ではあまりベタベタする事はなかったが、今日は優馬が手を掴んで離さなかった。
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