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47 気になって
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有馬と利久斗は2人で三宅仁美の個展へ来ていた。
チケットを送って来てくれたというのもあるが、どんな人達が見に
くるのだろう?とか、どんな感想を抱くのだろう?という好奇心か
らだった。
ユウマ「ぜってー。利久斗の事、女子だって思って見てると思うぜ。」
小声で囁いてくる優馬に『まさか!』と冗談をほのめかす。
客は意外と女性が多い様に思えた。
それもそのはず、スポンサーに付いているのはあの有名なアイドルプロ
ダクションの社長を務める、杉本悠星だったのである。
もし、杉本悠星の目に止まれば、芸能界デビューも夢じゃないのだ。
リクト「本当に人が多いね。なんか僕ら場違いだったね」
ユウマ「そんな事ねーよ。仁美ちゃんが撮った写真なんだぜ。まぁ、
俺にとっては、被写体の方がって感じだけどな~」
人前で抱きつこうとするのを、するりと躱し順番に見て行く。
自分でモデルになったのはいいが、こんなに大きく貼り出されると、な
んとも恥ずかしい気分になった。
近くの女子高生の声が聞こえてくるとむず痒い様な、こっぱずかしい
気持ちで、早足で通り過ぎた。
女子高生「いいなー。このモデル絶対芸能界にいる人だよね~」
女子高生「当たり前じゃん。でも胸小さいけど、それ以上にマジ綺麗じゃん」
女子高生「あたしらもこんなだったら、すぐにスカウトされたよね~」
女子高生「男を掌で転がす人生ってどんな気分なんだろう?」
今時の女子高生の考える事は理解し難かった。
メイクしていたと言っても、真横を通りすぎる利久斗に誰も関心を向け
る者はいなかった。
外に出ると背伸びをし、堪えていた笑いが込み上げて来た。
すると、奥からこちらに歩いてくる人がいた。
ユウセイ「すいませ~ん。ちょっといいですか?」
ユウマ「何か?」
ユウセイ「いえね、友人と…男性同士で来るのは珍しくてね。一人で来る
のは見かけるけど、ちょっと感想聞いても?」
ユウマ「あぁ、結構良かったと思いますよ。被写体も魅力的だったし、
カメラマンの腕もいいんじゃないですかね?」
ユウセイ「えぇ、そうなんですよ。彼女はカメラマンとしての大事な事を
しっかりわかってて、モデルを生き生きさせている。若いのに
なかなかですよ。被写体の彼女もいい表情をしている。正面か
らの物がないのが残念なくらいですよ」
ユウマ「それも、カメラマンの趣向では?」
ユウセイ「確かに…そこがいいというのも、いい見方ですね。」
ユウマ「俺らはこれで帰るんで」
ユウセイ「えぇ、引き止めてしまってすいません」
戻って行く姿を見ながら、利久斗は誰だろう?と考えたが、パンフレット
を見て思い出した。
それは、この個展のスポンサーとして名乗り出た杉本悠星だったのである。
リクト「さっきに人、杉本悠星だよ。へースポンサー自ら様子を見に来
てるんだ~」
ユウマ「なんだよっ。あんな奴がいいのかよ!」
不貞腐れた様に口を尖らす優馬に外だったが、そっとキスをして小声で囁く。
リクト「優馬がここにいるんだから、それだけで幸せだよっ」
彼を助長させるとも思ったが、利久斗の素直な気持ちだったのでありのまま
伝えた。
するといきなり抱きしめられ、周りの目が気になって仕方がなかった。
後日、三宅仁美と会って来た優馬が大盛況だった事を聞かされてきた。
あの日依頼、利久斗は忙しい日々を送っていた。
卒業を前に臨床研修先の病院に挨拶に行くと、スタッフや看護師の名前
と顔を覚える事と、患者のリストからどういった症状にどういう処置を
するとかの質問が書かれた書類を持ち帰り、自分なりの処置を書いて
提出するのだ。
その事によって、どこの先生につくかが変わってくる。
部屋に篭りきりの日々が続く。気晴らしに優馬のお誘いがたまにあるが、
それ以外は買い物以外、医学書と睨めっこだった。
ヒトミ「どうだった?最近田嶋くん、来てない様だし。まぁ大学も単位
さえ有ればそれでいいんだけどね」
ユウマ「あぁ、今は医学書と睨めっこやってるよ。体壊さないか心配な
くらいだな」
ヒトミ「そうね、でも…君がついてるし、心配いらないんじゃない?」
ユウマ「かいかぶり過ぎだろ?俺は自分の本能に素直なだけだぜ?」
ヒトミ「いやん。それは情熱的ね。人の感情で快楽の最中が一番綺麗
って言うけどよく分かったわ。恥ずかしいけど目の当たりに
すると本能を駆り立てるみたいに武者震いっていうの?あれ
には感謝してるわ」
ユウマ「そりゃどーも。嫌がらせで見せつけたんだけどなっ!」
今では笑い合える友人になっていた。
利久斗が忙しい時は代わりに優馬が来ていた。
個展に使われた写真のデータの受け渡しとモデルとしての謝礼金を受け
取った。
いつもの喫茶店で多少の談笑をすると、優馬は家へと帰る。
そのあとで三宅仁美は杉本悠星との待ち合わせをしていた。
カメラマンとしても年間契約をする為であった。
優馬と入れ違いに入ってきた杉本悠星は三宅仁美を見つけると手を振った。
そこで何か気になったのか、横をすれ違った優馬に見覚えがあったが、気
に止めるほどの事ではなかった。
ユウセイ「待たせたね。」
ヒトミ「いいえ。さっきまで友人と会っていたので」
チケットを送って来てくれたというのもあるが、どんな人達が見に
くるのだろう?とか、どんな感想を抱くのだろう?という好奇心か
らだった。
ユウマ「ぜってー。利久斗の事、女子だって思って見てると思うぜ。」
小声で囁いてくる優馬に『まさか!』と冗談をほのめかす。
客は意外と女性が多い様に思えた。
それもそのはず、スポンサーに付いているのはあの有名なアイドルプロ
ダクションの社長を務める、杉本悠星だったのである。
もし、杉本悠星の目に止まれば、芸能界デビューも夢じゃないのだ。
リクト「本当に人が多いね。なんか僕ら場違いだったね」
ユウマ「そんな事ねーよ。仁美ちゃんが撮った写真なんだぜ。まぁ、
俺にとっては、被写体の方がって感じだけどな~」
人前で抱きつこうとするのを、するりと躱し順番に見て行く。
自分でモデルになったのはいいが、こんなに大きく貼り出されると、な
んとも恥ずかしい気分になった。
近くの女子高生の声が聞こえてくるとむず痒い様な、こっぱずかしい
気持ちで、早足で通り過ぎた。
女子高生「いいなー。このモデル絶対芸能界にいる人だよね~」
女子高生「当たり前じゃん。でも胸小さいけど、それ以上にマジ綺麗じゃん」
女子高生「あたしらもこんなだったら、すぐにスカウトされたよね~」
女子高生「男を掌で転がす人生ってどんな気分なんだろう?」
今時の女子高生の考える事は理解し難かった。
メイクしていたと言っても、真横を通りすぎる利久斗に誰も関心を向け
る者はいなかった。
外に出ると背伸びをし、堪えていた笑いが込み上げて来た。
すると、奥からこちらに歩いてくる人がいた。
ユウセイ「すいませ~ん。ちょっといいですか?」
ユウマ「何か?」
ユウセイ「いえね、友人と…男性同士で来るのは珍しくてね。一人で来る
のは見かけるけど、ちょっと感想聞いても?」
ユウマ「あぁ、結構良かったと思いますよ。被写体も魅力的だったし、
カメラマンの腕もいいんじゃないですかね?」
ユウセイ「えぇ、そうなんですよ。彼女はカメラマンとしての大事な事を
しっかりわかってて、モデルを生き生きさせている。若いのに
なかなかですよ。被写体の彼女もいい表情をしている。正面か
らの物がないのが残念なくらいですよ」
ユウマ「それも、カメラマンの趣向では?」
ユウセイ「確かに…そこがいいというのも、いい見方ですね。」
ユウマ「俺らはこれで帰るんで」
ユウセイ「えぇ、引き止めてしまってすいません」
戻って行く姿を見ながら、利久斗は誰だろう?と考えたが、パンフレット
を見て思い出した。
それは、この個展のスポンサーとして名乗り出た杉本悠星だったのである。
リクト「さっきに人、杉本悠星だよ。へースポンサー自ら様子を見に来
てるんだ~」
ユウマ「なんだよっ。あんな奴がいいのかよ!」
不貞腐れた様に口を尖らす優馬に外だったが、そっとキスをして小声で囁く。
リクト「優馬がここにいるんだから、それだけで幸せだよっ」
彼を助長させるとも思ったが、利久斗の素直な気持ちだったのでありのまま
伝えた。
するといきなり抱きしめられ、周りの目が気になって仕方がなかった。
後日、三宅仁美と会って来た優馬が大盛況だった事を聞かされてきた。
あの日依頼、利久斗は忙しい日々を送っていた。
卒業を前に臨床研修先の病院に挨拶に行くと、スタッフや看護師の名前
と顔を覚える事と、患者のリストからどういった症状にどういう処置を
するとかの質問が書かれた書類を持ち帰り、自分なりの処置を書いて
提出するのだ。
その事によって、どこの先生につくかが変わってくる。
部屋に篭りきりの日々が続く。気晴らしに優馬のお誘いがたまにあるが、
それ以外は買い物以外、医学書と睨めっこだった。
ヒトミ「どうだった?最近田嶋くん、来てない様だし。まぁ大学も単位
さえ有ればそれでいいんだけどね」
ユウマ「あぁ、今は医学書と睨めっこやってるよ。体壊さないか心配な
くらいだな」
ヒトミ「そうね、でも…君がついてるし、心配いらないんじゃない?」
ユウマ「かいかぶり過ぎだろ?俺は自分の本能に素直なだけだぜ?」
ヒトミ「いやん。それは情熱的ね。人の感情で快楽の最中が一番綺麗
って言うけどよく分かったわ。恥ずかしいけど目の当たりに
すると本能を駆り立てるみたいに武者震いっていうの?あれ
には感謝してるわ」
ユウマ「そりゃどーも。嫌がらせで見せつけたんだけどなっ!」
今では笑い合える友人になっていた。
利久斗が忙しい時は代わりに優馬が来ていた。
個展に使われた写真のデータの受け渡しとモデルとしての謝礼金を受け
取った。
いつもの喫茶店で多少の談笑をすると、優馬は家へと帰る。
そのあとで三宅仁美は杉本悠星との待ち合わせをしていた。
カメラマンとしても年間契約をする為であった。
優馬と入れ違いに入ってきた杉本悠星は三宅仁美を見つけると手を振った。
そこで何か気になったのか、横をすれ違った優馬に見覚えがあったが、気
に止めるほどの事ではなかった。
ユウセイ「待たせたね。」
ヒトミ「いいえ。さっきまで友人と会っていたので」
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