好きになっていいですか?

秋元智也

文字の大きさ
55 / 89

55 過去と現在と

しおりを挟む
男の影が仁王立ちして立っているのがわかる。

 ユウマ「何してんだ?あんた。」
 リクト「んん~~~」
 ユウマ「その薄汚ねぇ~手をどけろよ」

樹は利久斗の中を掻き回してした腕を取り出すと、立ち上がった。
利久斗を無理やり立たせると自分の前に抱え込むと挑発する。

 イツキ「なんだよ。俺に命令すんなよ」
 ユウマ「この変態コスプレ野郎に言われたかねーよ」
 イツキ「帰ってもらおうか?」
 ユウマ「利久斗も連れて帰らせてもらう」
 イツキ「帰りたくないってよ。それにこの痕はお前が付けたん
     だろう?」
 ユウマ「あぁ。利久斗の合意の元だがな」

樹は歯痒い気持ちのまま首筋に歯を立てた。

 リクト「んんーーーーーー!!」

利久斗は痛みで叫びたかったが声にならずジタバタともがくしか
できない。

 ユウマ「てめぇー。それ以上、利久斗を傷つけたら容赦しねぇー」
 イツキ「りくは君のモノじゃない。」
 ユウマ「お前のモノでもねぇーよ。」

そういうと、前に飛び出ると利久斗に当たらない様に殴りつける。
すぐにかわされ、蹴り入れられる。優馬のそんなものを食うほど
ドジではない。難なくかわすと、お互い距離を取る。
樹の腕には利久斗と繋がった手錠が嵌められている。
それをなんとかしないと、反撃もままならない。
すると、利久斗が樹の動きを止めようといきなりしがみ付くとしゃ
がんだ。
いきなり腕を引っ張られ、強引に引き上げようとするのを見越して
足に飛びついた。そのタイミングで優馬が飛び込んできて、殴りつ
ける。玄関のところに転がっている鍵で手錠を外し樹の両手にはめ
直した。

 ユウマ「大丈夫か?体はどこか痛くないか?」 
 リクト「大丈夫、でもどうしてここが?」
 ユウマ「感かな。」

利久斗は半裸の状態で抱きつくと、それに呼応する様に優馬も強く
抱きしめた。

 ユウマ「コイツどうする?警察につき出すか!」
 リクト「いや、止めよう。こんな事する奴じゃなかったんだ」

昔は…と付け足した。

昔優馬にも断片的に話したが、監禁されて毎日強姦されていた時に
助けてくれた幼馴染がいたと。
それが樹であった事を話した。いつも気を使ってくれて、一緒にいて
楽しかったと…なのにどうしてこんな事になったのかが気になって
本人が起きるまで待つ事にした。
部屋の中には昔の利久斗の写真が飾ってあった。
それ以外にもCM用にと利久斗の女装した姿を撮った写真が大きく伸
ばして飾られていた。
散々煽られていた利久斗の体を鎮める為に風呂場を借りる事にした。
一回出してしまえばあとは水を被れば治っていく。
一人で中に入ると優馬も後から付いてくると壁に押し付けられ、追い
立てる様に、あっという間にイかされた。
自分以上に利久斗の体を知り尽くした優馬には敵わなかった。
軽いキスをかわすと、服を着て身なりを整えた。
その頃には樹が目を覚したのか手錠の鍵を探していた。

 ユウマ「鍵はここだぜ!変態さんよ!」
 イツキ「りくに手を出すな!」
 ユウマ「それは俺のセリフ。本人の意思を無視すんなよ」

優馬の後ろに利久斗がいるのを見つけ樹は愕然とした。

 イツキ「そんなやつの側にいちゃダメだ、俺と一緒に来いよ」
 リクト「樹…何がそうさせるの?僕は君に何かしたかい?」
 イツキ「何を…言っているんだ?」
 リクト「僕を辱めたのは…気に入らなかったから?」
 イツキ「ちがっ…違う!りく…俺は…」
 リクト「誰とでも足を開く様な人間に見えてた?樹にとって僕は何?」
 イツキ「そんな事は…あれから…ずっと考えてた…、利久斗が居なく
     なって、どうして俺は一番近くにいたのに気づいてあげられ
     なかったんだろうって…だから…今度会ったら言おうって」

嗚咽混じりの声に涙が滲んだ。
本当に辛かったのだと。
幼馴染がいきなり居なくなり、見つけた時には無残な姿であった。
助けたと言えるのかというと、手遅れになる寸前という事くらいだった。
痛々しい姿に、最後に会った時は樹を見て錯乱して泣き叫んだ幼馴染みの
姿だった。
利久斗でさえ、その時の記憶は曖昧で覚えていない。
ただ、男性恐怖症だったのははっきりと思えている。
触れられると、呼吸が早まって、苦しくなっていく。
改めて樹の話を聞くと、利久斗はショックを隠せなかった。
恩人でもある樹に錯乱した?泣いて恐怖に怯えて叫んだというのだ。
それはよっぽど傷つけたはずだった。
それでも、わざわざ東京に来て、利久斗の事を探していたのだと聞くと
胸が熱くなった。
だからと言って、さっきの行為が正当化されるものでもない。

 イツキ「すまない。だがわかってくれ…俺はりくの事が大事なんだ」
 ユウマ「だったら、強姦していいのかよ。おかしいだろ?」
 イツキ「本当にすまない。やっと会えたと思うと、触れたくて、
     そしたらいつのまにか抱きしめたくなって、夢まで見た
     りくを…、もうしないと誓う、だからまた会ってくれな
     いか?」
 ユウマ「ダメだ!危な過ぎるだろ?」
 イツキ「君には聞いてない!」
 リクト「悪いけど…もう関わらないで。僕は優馬といて本当に幸せ
     なんだ。優馬のお母さんにも認めて貰ったし、そんな事っ
     て、奇跡に近いんだよ。誰にも理解されないって思ってた
     からさ。僕は樹には普通の人生を歩んで欲しいんだ。今日
     の事は訴えるつもりはないよ。でも、もう関わらないで欲
     しい。」
 イツキ「りく…嫌だっ…りくっ…待ってくれ!」

優馬と一緒に樹のアパートを出ると、鍵は部屋のテーブルの上に置い
てきた。もちろん自分で取って外せる様にだった。

 ユウマ「本当に良かったのか?」
 リクト「うん…これでいいんだと思う」
 ユウマ「甘いな~、でもそんな利久斗だから惚れたんだよな~。俺は
     これからも、絶対に守るからさ」

帰り道で優馬の告白を聞きながら耳まで真っ赤にすると、腰を抱き寄せられ
近過ぎる距離に周りを見る余裕もなかった。
誰かに見られていたら、世間体によくないとか、恥ずかしとか今は言っていられ
ないほど、顔を見られたくなかった。
本気で優馬のタラシと叫んでやりたい衝動に駆られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...