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57 偶然の出会い
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昼から納戸響と入れ替わりに挨拶に来たのが田嶋利久斗だった。
リクト「失礼します。今回納戸と共に担当になりました田嶋です。
よろしくお願いします。」
入ってきた青年は確かにあの時に見た写真の少女に似ている雰囲気
があった。だが、どう見ても男だった。
ユウセイ「失礼なのだが、男性だよな?」
リクト「はい。誰かと見間違いでも?」
ユウセイ「いや、なんでもない。君が見つけてくれたとか。感謝
する。」
リクト「いえ、ご気分が悪そうだったので、ちょっと気になって
いたら倒れられたので、当たり前の事をしただけです。
それでは、これで、失礼します。」
ユウセイ「あぁ、これから頼む。」
リクト「はい。」
優しく微笑んだ顔がどうしても心に残った。それからたまに病室を
抜け出しては看護師達の詰所に行くと田嶋の姿を探した。
(まさか、自分が男に興味を抱くとは、予想外にも程がある。)
今まで女性を見る目はあると思っていたが、男性でも芸能界に売り
込むにはいい素材かもしれないと思い始めていた。
ただ、問題がいくつか浮上してきた。
田嶋利久斗と同じ研修医である納戸響に色々と聞いたが、あまり
自分の事は話さないらしく聞き上手なのはわかったが、肝心の
田嶋利久斗の情報は一切わからなかった。大学時代も仲がいい
生徒はおらず、誰とでも話はするが、自分の事は一切打ち明け
なかったようだった。
バスケは上手かったと聞くが、スタメンになるほどではない
らしい。その理由がどうにもあやふやで、どんな角度からでも
シュートは入れれたと聞くわりに、人との接触を極度に嫌った
という。なので、公式の試合には出る事はなかったらしい。
それ以外に経歴も秘匿されていて、調べようにもなかなか骨が
折れる人物であるようだった。
もし犯罪歴などあろうものなら、芸能界は致命傷なのだ。
先にわかることは手を打っておくに越したことはない。
あとは、今現在彼女と同棲中であること。
それも、芸能界ではタブーだった。
リクト「失礼します。血圧と採血しますね」
ユウセイ「あのさ、芸能界って興味ない?」
リクト「ないです、少し力抜いて下さい」
ユウセイ「君みたいな子なら、俺が後押しすれば人気が出ると
思うんだ。どうだろう?考えてみないか?」
リクト「今の仕事で忙しいので。余裕はないです。はい。
これで終わりです。では、何かあったら呼んでください」
ユウセイ「君を芸能界に誘いたいのだが?」
リクト「諦めて下さい。では、これで。」
素っ気なくあしらわれると、余計気になってくるものである。
杉本悠星は無事退院し、田嶋利久斗との接点も消えてしまった。
検診にとも思ったが、一年後と言われてしまい、それ以上何も
言い返せなかった。
三宅仁美は今も専属カメラマンとして、事務所で仕事を請け負って
いる。彼女の写真はいつ見ても、被写体の素顔を捉えていた。
専属メイクも側に置いているので他で頼む必要がなく、助かっている。
無口で何も話さないし、興味もないので聞きもしなかった。
三宅仁美にあてがわれたスタジオに行くと、今は出払っているのか相方
の角谷恭子しかいないようだった。
コンコン コンコン
ユウセイ「ちょっといいかな?」
角谷恭子が頭を下げると、中へと招き入れてくれた。
キョウコ「仁美はもう直ぐ戻ります。待ちますか?」
ユウセイ「いや、いい。これを渡してもらえるかい?次の仕事と日程だ。
それと、田嶋利久斗…彼を被写体で撮りたいと思ってね。」
キョウコ「ほう、またあいつか。個展以来か…仁美に伝えておこう…いえ、
おきます。」
ユウセイ「それが、素の話し方なのかい?」
キョウコ「話すのは…苦手だ…です。」
ユウセイ「いや、いいよ。それと、三宅くんにこの事はまだ、話さなくて
いい。また後日俺から話すよ。」
思った通り、個展の被写体は彼だったのだ。
角谷恭子のメイクの技術はなかなかにレベルが高いものだった。
元がいいのもあるが、メイクも合わせてあそこまで変身させられるのかと
驚きが隠せなかった。
これならいけると確信し、どうやって落とすかが問題だった。
三宅仁美が帰ってくると角谷恭子から社長が来たことと、次の仕事の依頼
そして、田嶋の名が出だとこを聞かされた。
ヒトミ「気づいちゃったかぁ~、まぁ、今どこで何やってるか知らない
けど、ちょっと言っといたほうがいいかな?」
キョウコ「別にいいだろ?あいつも男だぞ。襲われる事などないだろう?」
ヒトミ「恭子ちゃん、それはありえるよ、多分」
キョウコ「襲われても、何も失うものなどないだろう?子供ができる訳でも
処女を奪われるわけでもあるまいし」
ヒトミ「そうなんだけど…でもね。一応連絡しておくよ。彼の方にね。」
そういうと、優馬の携帯に電話を入れた。
気に入った女の子がいるとしつこいくらいに付き纏う社長である。
それが男にも同じようにするかどうかは分からないが、それでも知らせて
置いて損はないはずである。売れると思うと、見境がないのが杉本悠星と
いう男である。
見る目はあると思う。だが、無茶して犯罪にでも手を染めようものなら、
仁美自身の仕事にも差し障りがあるのである。
ここに専属で雇ってもらっているだけに、騒ぎを起こしたくはない。
なので田嶋利久斗の事は決して話さなかった。
きっと、芸能界など興味はないだろうからである。それ以上に焼きもち
焼きの彼はきっと反対するだろうから。
リクト「失礼します。今回納戸と共に担当になりました田嶋です。
よろしくお願いします。」
入ってきた青年は確かにあの時に見た写真の少女に似ている雰囲気
があった。だが、どう見ても男だった。
ユウセイ「失礼なのだが、男性だよな?」
リクト「はい。誰かと見間違いでも?」
ユウセイ「いや、なんでもない。君が見つけてくれたとか。感謝
する。」
リクト「いえ、ご気分が悪そうだったので、ちょっと気になって
いたら倒れられたので、当たり前の事をしただけです。
それでは、これで、失礼します。」
ユウセイ「あぁ、これから頼む。」
リクト「はい。」
優しく微笑んだ顔がどうしても心に残った。それからたまに病室を
抜け出しては看護師達の詰所に行くと田嶋の姿を探した。
(まさか、自分が男に興味を抱くとは、予想外にも程がある。)
今まで女性を見る目はあると思っていたが、男性でも芸能界に売り
込むにはいい素材かもしれないと思い始めていた。
ただ、問題がいくつか浮上してきた。
田嶋利久斗と同じ研修医である納戸響に色々と聞いたが、あまり
自分の事は話さないらしく聞き上手なのはわかったが、肝心の
田嶋利久斗の情報は一切わからなかった。大学時代も仲がいい
生徒はおらず、誰とでも話はするが、自分の事は一切打ち明け
なかったようだった。
バスケは上手かったと聞くが、スタメンになるほどではない
らしい。その理由がどうにもあやふやで、どんな角度からでも
シュートは入れれたと聞くわりに、人との接触を極度に嫌った
という。なので、公式の試合には出る事はなかったらしい。
それ以外に経歴も秘匿されていて、調べようにもなかなか骨が
折れる人物であるようだった。
もし犯罪歴などあろうものなら、芸能界は致命傷なのだ。
先にわかることは手を打っておくに越したことはない。
あとは、今現在彼女と同棲中であること。
それも、芸能界ではタブーだった。
リクト「失礼します。血圧と採血しますね」
ユウセイ「あのさ、芸能界って興味ない?」
リクト「ないです、少し力抜いて下さい」
ユウセイ「君みたいな子なら、俺が後押しすれば人気が出ると
思うんだ。どうだろう?考えてみないか?」
リクト「今の仕事で忙しいので。余裕はないです。はい。
これで終わりです。では、何かあったら呼んでください」
ユウセイ「君を芸能界に誘いたいのだが?」
リクト「諦めて下さい。では、これで。」
素っ気なくあしらわれると、余計気になってくるものである。
杉本悠星は無事退院し、田嶋利久斗との接点も消えてしまった。
検診にとも思ったが、一年後と言われてしまい、それ以上何も
言い返せなかった。
三宅仁美は今も専属カメラマンとして、事務所で仕事を請け負って
いる。彼女の写真はいつ見ても、被写体の素顔を捉えていた。
専属メイクも側に置いているので他で頼む必要がなく、助かっている。
無口で何も話さないし、興味もないので聞きもしなかった。
三宅仁美にあてがわれたスタジオに行くと、今は出払っているのか相方
の角谷恭子しかいないようだった。
コンコン コンコン
ユウセイ「ちょっといいかな?」
角谷恭子が頭を下げると、中へと招き入れてくれた。
キョウコ「仁美はもう直ぐ戻ります。待ちますか?」
ユウセイ「いや、いい。これを渡してもらえるかい?次の仕事と日程だ。
それと、田嶋利久斗…彼を被写体で撮りたいと思ってね。」
キョウコ「ほう、またあいつか。個展以来か…仁美に伝えておこう…いえ、
おきます。」
ユウセイ「それが、素の話し方なのかい?」
キョウコ「話すのは…苦手だ…です。」
ユウセイ「いや、いいよ。それと、三宅くんにこの事はまだ、話さなくて
いい。また後日俺から話すよ。」
思った通り、個展の被写体は彼だったのだ。
角谷恭子のメイクの技術はなかなかにレベルが高いものだった。
元がいいのもあるが、メイクも合わせてあそこまで変身させられるのかと
驚きが隠せなかった。
これならいけると確信し、どうやって落とすかが問題だった。
三宅仁美が帰ってくると角谷恭子から社長が来たことと、次の仕事の依頼
そして、田嶋の名が出だとこを聞かされた。
ヒトミ「気づいちゃったかぁ~、まぁ、今どこで何やってるか知らない
けど、ちょっと言っといたほうがいいかな?」
キョウコ「別にいいだろ?あいつも男だぞ。襲われる事などないだろう?」
ヒトミ「恭子ちゃん、それはありえるよ、多分」
キョウコ「襲われても、何も失うものなどないだろう?子供ができる訳でも
処女を奪われるわけでもあるまいし」
ヒトミ「そうなんだけど…でもね。一応連絡しておくよ。彼の方にね。」
そういうと、優馬の携帯に電話を入れた。
気に入った女の子がいるとしつこいくらいに付き纏う社長である。
それが男にも同じようにするかどうかは分からないが、それでも知らせて
置いて損はないはずである。売れると思うと、見境がないのが杉本悠星と
いう男である。
見る目はあると思う。だが、無茶して犯罪にでも手を染めようものなら、
仁美自身の仕事にも差し障りがあるのである。
ここに専属で雇ってもらっているだけに、騒ぎを起こしたくはない。
なので田嶋利久斗の事は決して話さなかった。
きっと、芸能界など興味はないだろうからである。それ以上に焼きもち
焼きの彼はきっと反対するだろうから。
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