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23 俺を拐って
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その日は誰も部屋にはいれなかった。
学校帰りの大輔が何も知らずに入ってくるまでは…。
「よぉ!元気か?今日さ~学祭の出し物が決まってさ~、なんだと
思う?」
「大輔…ちょっと話がある…。」
「なんだよ~、もうすぐ退院か?」
「もう、学校やめるから…それと引っ越す事になった。」
「なんでだよ~、一緒に卒業するって言っただろ?」
「…もう、無理なんだよ。」
「ならさ、俺さぁ~遊びに行くな!夏休みとか冬休みに泊りがけで
さ~、今度は追い出さないだろう?」
元気付けようと必死で話ているのが分かる。
でも、そんな元気は今はない。
「少し散歩しないか?気がまぎれるかもしれないし?」
「うん…大輔、屋上行きたい…」
「おう、車椅子借りてくるな!」
屋上へとくると少し肌寒かった。
「大輔…俺を抱きたいか?」
「そ…そりゃ~な…でも、今はしねーよ!そんな状態じゃねーのは
分かってるし…」
「いいよ、好きにして…。もう、次はないかもしれないから…」
「何言ってんだよ?元気になればいつでもできんだろ?」
「…大輔聞いて?もう、長くないんだって…俺、多分大輔が卒業す
るまで生きてられるかも分からない…、それにもう、よくはなら
ならないから…どんどん悪くなっていくみたいだから。」
言ってて自分の手が震えているのに気がついた。
そう、怖いのだ。
まだ死にたくない。ずっと生きていたかった。
なんで俺だけこんな事になんだよ…なんで…。
俺の言葉が嘘じゃなく本気だと分かると抱きしめてきた。
温かいぬくもり…。もう、誰とも抱き合えないと分かっていても
どうしても欲しくなるぬくもりだった。
いきなりふわっと軽くキスされた。
慌てて突き放すと怪訝な顔をされた。
「抱いてもいいと言ったけど、キスはダメだ。うつったらお前も…」
「病気ってなんなんだよ?」
「HIV…粘液感染するから…。俺を犯した奴の中にエイズの奴がいた
らしくて…。でも、ゴムつければセックスはできるし、今ならまだ
体力あるからできると思う。進行すれば激しい運動はできなくなっ
ちゃうから…」
俺の意志を汲み取ったのかいきなり回れ右すると病室へと帰ってきた。
ベッドに寝かされると布団をかけて、出て行ってしまった。
そう…だよな…。
今の俺とするにはリスクがあるすぎる。
もし粘液を体内に入れれば、感染してしまう。
俺はもう、手遅れだけど…。
大輔にはまだ未来があるんだから。
大輔は病室を出ると、偶然来ていたあきらさんと出会っていた。
「やぁ、君は大輔くんだね?稔の様子はどうだい?」
「…ゴム使えばセックスできるのかよ?」
「ん?それはやめておいた方がいい。」
「うつるからか?」
「違う。君がどうなるかはどうでもいい。多分、稔の体力がもた
ないだろう。彼は今免疫が弱っていて激しい運動は命を短くす
るだけなんだ。もう、よくなる事はなくても、それでも長生き
したいなら安静にするのが一番だよ。」
「…今なら体力あるからって…セックスしていいって…」
「それは…長く生きるつもりはないって事かい?」
「…ッ…!」
「なら、いっそ攫ってしまおうか?稔がそう願ってくれるのなら
一緒にエイズになってもいい。最後まで一緒にいたい気持ちは
今でも変わらない。家族を捨ててでも稔を選びたい、そこに嘘
はないよ」
「俺は…くそっ…」
大輔はいらつきながら家へと帰った。
はっきりと自分もと言えなかった。
でも、稔は自分とずっと一緒だと思っていた。
なのに、こんな早く別れが来るなんて思ってもみなかった。
あきらさんの番号にかけるとさっきの返事をした。
退院の前日。
大輔が見舞いに来ていた。
「調子はどうだ?」
「変わらないよ…、大輔…あのさこの前は…」
「俺さ、決めたから!稔の残りの時間俺にくれない?」
「はぁ?何を言ってっ…ちょっ…待てって!」
いきなり抱きしめられると服を脱がしにかかる。
慌てて止めようとするが強引に引きちぎるように上着を脱がせ
ズボンも脱がせる。
代わりの服を出すと素早く着せていく。
「どうして…?」
「ここから連れ出す…そこでセックスしよ?」
「なっ…なんで…!」
最後に帽子を被せ身体を支える。
「歩けるか?」
「少しなら…でも…駅までは無理だぞ?」
「そこは大丈夫。車が待ってるから…」
「…?」
裏口からこっそりと非常階段を使いながら降りると正面玄関を
避けて駐車場へと向かった。
そこには見慣れた車が停まっている。
「あきらさん…どうして?」
「大輔くんは上手くやったみたいだね?どうしても稔に聞きたい
事があるんだ。俺達と一緒に行かないか?」
「どういう事ですか!」
「俺達が稔を攫いに来たんだよ。一緒に行かないかい?きっと息子
の事で恨んでいるかもしれないけど、それでも許してくれるなら、
これからの人生を一緒に居てくれないか?」
「…どうしてこんな…?俺は…もう…」
「愛している。それ以外に意味はないよ。」
「俺は稔のいない学校生活は無いって思ってな!だから家出してきた。」
なんでこんな事を…。
馬鹿げてる…バカげてるけど…。
涙が止まらない。
「バカッ…。本当にバカみたいだ…」
「答えはイエスかな?」
「もう、俺は…長く無いのに…一緒に死ぬつもりかよ?」
「もちろんそのつもりだよ。」
「仕方ねーだろ?そういう人生もいいかなって、な!」
抱き上げると後部座席に寝かせた。
後部座席のシートを倒しフラットにしてそこにマットが敷いてあった。
学校帰りの大輔が何も知らずに入ってくるまでは…。
「よぉ!元気か?今日さ~学祭の出し物が決まってさ~、なんだと
思う?」
「大輔…ちょっと話がある…。」
「なんだよ~、もうすぐ退院か?」
「もう、学校やめるから…それと引っ越す事になった。」
「なんでだよ~、一緒に卒業するって言っただろ?」
「…もう、無理なんだよ。」
「ならさ、俺さぁ~遊びに行くな!夏休みとか冬休みに泊りがけで
さ~、今度は追い出さないだろう?」
元気付けようと必死で話ているのが分かる。
でも、そんな元気は今はない。
「少し散歩しないか?気がまぎれるかもしれないし?」
「うん…大輔、屋上行きたい…」
「おう、車椅子借りてくるな!」
屋上へとくると少し肌寒かった。
「大輔…俺を抱きたいか?」
「そ…そりゃ~な…でも、今はしねーよ!そんな状態じゃねーのは
分かってるし…」
「いいよ、好きにして…。もう、次はないかもしれないから…」
「何言ってんだよ?元気になればいつでもできんだろ?」
「…大輔聞いて?もう、長くないんだって…俺、多分大輔が卒業す
るまで生きてられるかも分からない…、それにもう、よくはなら
ならないから…どんどん悪くなっていくみたいだから。」
言ってて自分の手が震えているのに気がついた。
そう、怖いのだ。
まだ死にたくない。ずっと生きていたかった。
なんで俺だけこんな事になんだよ…なんで…。
俺の言葉が嘘じゃなく本気だと分かると抱きしめてきた。
温かいぬくもり…。もう、誰とも抱き合えないと分かっていても
どうしても欲しくなるぬくもりだった。
いきなりふわっと軽くキスされた。
慌てて突き放すと怪訝な顔をされた。
「抱いてもいいと言ったけど、キスはダメだ。うつったらお前も…」
「病気ってなんなんだよ?」
「HIV…粘液感染するから…。俺を犯した奴の中にエイズの奴がいた
らしくて…。でも、ゴムつければセックスはできるし、今ならまだ
体力あるからできると思う。進行すれば激しい運動はできなくなっ
ちゃうから…」
俺の意志を汲み取ったのかいきなり回れ右すると病室へと帰ってきた。
ベッドに寝かされると布団をかけて、出て行ってしまった。
そう…だよな…。
今の俺とするにはリスクがあるすぎる。
もし粘液を体内に入れれば、感染してしまう。
俺はもう、手遅れだけど…。
大輔にはまだ未来があるんだから。
大輔は病室を出ると、偶然来ていたあきらさんと出会っていた。
「やぁ、君は大輔くんだね?稔の様子はどうだい?」
「…ゴム使えばセックスできるのかよ?」
「ん?それはやめておいた方がいい。」
「うつるからか?」
「違う。君がどうなるかはどうでもいい。多分、稔の体力がもた
ないだろう。彼は今免疫が弱っていて激しい運動は命を短くす
るだけなんだ。もう、よくなる事はなくても、それでも長生き
したいなら安静にするのが一番だよ。」
「…今なら体力あるからって…セックスしていいって…」
「それは…長く生きるつもりはないって事かい?」
「…ッ…!」
「なら、いっそ攫ってしまおうか?稔がそう願ってくれるのなら
一緒にエイズになってもいい。最後まで一緒にいたい気持ちは
今でも変わらない。家族を捨ててでも稔を選びたい、そこに嘘
はないよ」
「俺は…くそっ…」
大輔はいらつきながら家へと帰った。
はっきりと自分もと言えなかった。
でも、稔は自分とずっと一緒だと思っていた。
なのに、こんな早く別れが来るなんて思ってもみなかった。
あきらさんの番号にかけるとさっきの返事をした。
退院の前日。
大輔が見舞いに来ていた。
「調子はどうだ?」
「変わらないよ…、大輔…あのさこの前は…」
「俺さ、決めたから!稔の残りの時間俺にくれない?」
「はぁ?何を言ってっ…ちょっ…待てって!」
いきなり抱きしめられると服を脱がしにかかる。
慌てて止めようとするが強引に引きちぎるように上着を脱がせ
ズボンも脱がせる。
代わりの服を出すと素早く着せていく。
「どうして…?」
「ここから連れ出す…そこでセックスしよ?」
「なっ…なんで…!」
最後に帽子を被せ身体を支える。
「歩けるか?」
「少しなら…でも…駅までは無理だぞ?」
「そこは大丈夫。車が待ってるから…」
「…?」
裏口からこっそりと非常階段を使いながら降りると正面玄関を
避けて駐車場へと向かった。
そこには見慣れた車が停まっている。
「あきらさん…どうして?」
「大輔くんは上手くやったみたいだね?どうしても稔に聞きたい
事があるんだ。俺達と一緒に行かないか?」
「どういう事ですか!」
「俺達が稔を攫いに来たんだよ。一緒に行かないかい?きっと息子
の事で恨んでいるかもしれないけど、それでも許してくれるなら、
これからの人生を一緒に居てくれないか?」
「…どうしてこんな…?俺は…もう…」
「愛している。それ以外に意味はないよ。」
「俺は稔のいない学校生活は無いって思ってな!だから家出してきた。」
なんでこんな事を…。
馬鹿げてる…バカげてるけど…。
涙が止まらない。
「バカッ…。本当にバカみたいだ…」
「答えはイエスかな?」
「もう、俺は…長く無いのに…一緒に死ぬつもりかよ?」
「もちろんそのつもりだよ。」
「仕方ねーだろ?そういう人生もいいかなって、な!」
抱き上げると後部座席に寝かせた。
後部座席のシートを倒しフラットにしてそこにマットが敷いてあった。
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