インキュバス君は困ってます!

秋元智也

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最終話

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晴れて同棲を始めると、お互いの長所も短所も見えてきたが、それがまた嬉し
かったのだった。

「俺さ、恵のこういう雑なところをみると可愛く思えるな~」
「雑で悪かったな!俺だって完璧じゃないんだよ」
「うん、それがいいよ。完璧なのはちょっとな~」

お互い欠点を見つけては新たな発見に微笑んだ。
畑野には毎日が発見の連続だった。

遊びに来るのとは違って一緒に暮らすというのは全てを曝け出すという事だった。
もちろん畑野の悪いところも見つけられると、ニヤニヤとして指摘してきた。

普通の生活。普通の人間関係。
全てがやっと普通になった気がする。
青山はあれから、何度か検査と言いながら血液を取っていった時もあった。
が、それ以降はただ見守るだけだった。

青山の家の地下では毎晩悲鳴が漏れているらしい。
実験動物の鳴き声だと平気で誤魔化しているらしい。

この区画にはサキュバスの女が一人いて、被害も僅かですんだと報告したら
しい。
インキュバスなど、どこにもいないしもう、彼をインキュバスだと思う人は
いないだろう。

もう、精の匂いを纏う事もなくただ、男好きな人間だと思えるだろう。
側には伴侶もいて、両親が帰国する事はほとんどない。
ただ、多くの入金が毎月されて、それにもあまり手をつけていなかった。

「おーい。通帳こんなところに無防備に置いておくなよ~」
「あぁ、ちょっと記帳しに行ったんだ」
「へ~、どんなけあるの?って見られたら嫌か?」
「別に構わない」
「なに?そんなにあるの?」
「う~ん、まぁまぁかな?」

そして中に書かれた桁数を見て畑野はそっと閉じたのだった。

「自分の使う分は自分で稼いでいるから、使ってないからな~、学費くら
 いかな~?」

何の気なしに言った言葉に畑野は羨ましがるように見つめてきた。

「別に使ってもいいぞ?」
「いいや、絶対に使わねーし、借りねーよ!俺がそのうち養ってやるんだか
 らな!」
何と張り合っているのか知らないが、恵を養うつもりらしかった。

「そうだな、就職したら、ぜひ俺を養ってくれよ?期待してるぞ?」
「勿論だ!今に見てろよ~」

恵は弁護士志望であった。
それ以上に儲けられるかは不明だが、畑野が頑張るというのだから、好きに
させておけばいい。
夜は毎晩のようにお互い求める事を忘れない。
それが今まで二人がしてきたルーティンだった。
それを今更変える気はない。

大学でも、見た目から近づいてくる女子は絶えなかったが、左手の薬指にはま
った、シンプルなお守のおかげか、女子の視線はそこで止まる。

大学に合格後、二人で見に行ったジュエリーショップで、婚約指輪を買ってお
いたのだ。

「これって意味あるのか?」
「虫除けにはいいぞ?それに…恵は俺のだって主張できるし?」
「それを言うなら…ここにも何か付けるか?」

恵の手が畑野のズボンの前をふわりと触る。
そしてお互いの指にはお揃いの指輪と、ペニスの根元にはコックリングを帰るま
でという約束でお互い付ける事にしたのだった。
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