サバイバルゲーム

秋元智也

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初めての殺人

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一人、車を取りに来た金子亮太(かねこりょうた)はとにかく後悔していた。
なぜかというと、屋上から見た時はあれほど近くに見えていたはずなのだが、行けども行けども車が見当たらないのだ。
無理にでも行くつもりで言った事だったがあっさりと受け入れられて張り切って来ただけに『やっぱりやめた~』なんて恥ずかしくて言えない。
「チキショーなんで無いんだよ~」
丘を登りきったところで車を見つけた。
「やったー。俺ってついてる~。」
車まで走っていき、乗り込もうとした時、茂みの方から声が聞こえた。
「ヤバッ。誰か来た!」
あわてて乗り込むとドアをゆっくりと閉めるとロックをする。
鍵は差しっぱなしのためエンジンさえかければ動き出せる。
それから外の様子をこっそりと眺めているとこちらに気付いたのか近寄ってきた。
車内にあった毛布をすっぽり被ってやり過ごそうと考えていた。
「ラッキー。こんなところに車があんじゃん。乗ってこーぜ?」
「いいね~。あれ?開かねーぞ?」
「鍵かってあんじゃねー?」
外では3人の声がする。クラスメートではない。ということは知らない人間ということだ。
もし、知っている人なら今出ていってもいいのだが、知らない人間となると話は違ってくる。
中を覗きこんでいるのか窓が激しく叩かれている。
「おい、鍵は中にあるみてーだし窓を叩き割るか?」
「一回こういうこと、やってみたかったんだ~」
「それじゃーさー。車で人を轢くのもありなんじゃねー?」
「いいねー、ここならなにやっても犯罪にならねーしな?」
「俺もやらせろよ~」
「まずはこれを割るか!」
「拳銃で撃てばいいだろ?」
「ちげーねー」
雲行きが怪しくなってきた。このままだとここにいることがばれると危険な気がしてきた金子亮太はこっそりと腕を伸ばし鍵をひねってエンジンをつける。
エンジンがついた瞬間周りでどよめきが漏れたがそんな事気にしてられない。
一気に毛布をはねのけると一気にアクセルを踏んで前に前進した。
「このまま皆のところに・・・」
さっき拳銃って言ってなかったか?このまま皆のところにあいつらを誘き寄せていいのか?
迷ったあげく金子亮太はUターンをしてやつらに向かって突撃した。
武器は持ってない。でも車は鉄の塊である。
突進されて無事でいられる訳がない。前から銃声が鳴り響くが カキーン。
という音がしてボディに跳ね返っている。
これなら行ける。心はドキドキが止まらずそれでもハンドルをしっかりと握りしめ、まずは一人目に体当たりをかました。ドンッ。 っという鈍い音とハンドルに衝撃が伝わる。
引いただけでなく引きずっている!!
その現実に怖くなってきた。でも、まだ二人いる。
もし、ここで車を止めようものなら復讐される。
殺さなきゃ。と頭の中で声が聞こえた気がした。
何度も追い回して、二人目を突き飛ばすと、今度は動かなくなった。
あと一人。するとその一人は、もと来た茂みの方へ逃げていってしまった。
さすがに車で追う気にはなれなかった。
一旦車を降りると殺したであろう二人を見に行った。
一人は引きずられたせいか体が千切れていた。
金子亮太はその場で吐き気を催して胃液と共に吐き出した。
もう一人はまだ生きていた。動けないが生きてはいる。
腰には拳銃がホルダーにぶら下がっていた。
「苦しませてごめん。きっと死ねば元の世界に帰れるから」
ホルダーごとはずすと拳銃の引き金を引いた。
高い音がその場にこだました。
車に乗り込むと皆のところにいそいだ。
見られているとも知らずに、まっすぐにショッピングモールへと。


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