サバイバルゲーム

秋元智也

文字の大きさ
23 / 61

交差する運命

しおりを挟む
バイクが炎上する中で近づいていく中野和彦と岡野達也だが、近づいていくにつれて皮膚の焼ける独特の臭いが鼻を霞める。
「豚とか牛って焼ける旨そうな匂いがするけど、人間ってキツいのな?」
岡野達也の言葉を受けて中野和彦は振り向くが何も言わなかった。
たどり着くとそこには3人の死体が転がっていた。
武器も無造作に放置されていた。
「こいつらもベクトルかぁ、弾だけ貰っとくよ。すまなかった」
遺体に手を合わせる中野和彦に合わせて、岡野達也も手を合わせる。
撃ってきた奴等が悪いんじゃねーか。俺達は身を守っただけだ。
こんなのに手を合わせて毎回謝るのか?めんどくせーな。と、内心では思いながらも中野和彦の機嫌を損ねない程度には合わせておくことにした。
「そう言えば達也、お前健二を囮に使おうとしてなかったか?」
内心、ドキッとしたがそんな事認める訳にはいかなかった。
「そんな事は・・・」
「そうですよ~達也さんは今のうちに俺だけでも逃げろって言ってくれたんすよ。俺、感動っす。」
遮るように捲し立てる小島健二の言葉に中野和彦はホッとした。
「もし、仲間を囮にして敵の注意をそらすようならここでは一緒にやっていけないと思ってな。」
「そんな事、思ってねーよ。俺には健二も和彦も大事な友達だからな。危険になんて晒させねーよ」
お互いが助け合い、信頼できる関係を理想とする中野和彦にとって仲間を置いて逃げようとする小島健二も、仲間を囮にして敵を倒そうとしていた岡野達也も嫌われる存在になりかねなかった。
剥ぎ取れる物を頂いて橋を渡ることにした。
「そう言えばこれ、なんだろうな?」
中野和彦が手に持っているのは医療キットだった。白い手のひらサイズのケースに赤い十字架の模様がかかれている。開いてみても、中には包帯が丸まって入っていた。
そのまま閉めると岡野達也に投げて渡した。
「銃の世界に包帯って役にたつのか?まぁ、いいや。鞄に入れとくぞ?それにこんなものも拝借してきたぞ」
岡野達也が取り出したのは手榴弾と煙幕弾だった。
「それ、貰ってもいいですかね?」
小島健二は身を乗り出してきた。
「あぁ、気を付けて使えよ」
岡野達也は手渡した。銃をうまく使えなくても手榴弾位なら使えるだろう?との判断だった。
「煙幕弾を貰ってもいいか?」
中野和彦が受けとるのは意外であった。てっきり、そんなものは要らないと言われるもんだと思っていた。
「ほらよっ。」
「サンキュー。煙幕弾は使い勝手がいいんだよ」
「こんな一本道の橋の上で襲われたら終わるな、俺達」
冗談で言った台詞だったが確かにその通りなのだ。
「確かにな、早く渡って身を隠せる所に行こうぜ」
中野和彦に促されて早足に急いだ。
ふと、腕のカウントを見ると63人になっていた。
「クラスメートは何人が残ってるんだろうな?」
ふと、漏らした言葉に中野和彦が反応した。
「皆を探して合流しようぜ。まさか俺たちを殺そうとは思わねーだろ?協力しあえれば格段に安全になるしな」
岡野達也にとって大事なのは自分の安全なのである。出来ることなら人数を増やしたくはない。
そうなれば、否応なしに自分は避難組ではなく、戦闘に駆り出されるだろうことが目に見えているからだった。
「そ、そうだな」
賛同だけはしておくが、誰とも会わないことを祈っていた。
「そう言えば、さっき言ってたサバイバル研究会のとんでもなく強い奴って誰なんだよ?」
「そうですよ、もし、それがクラスメートなら一緒に行動してもらった方がいいじゃないですか?」
岡野達也の質問に小島健二も賛同した。
「あぁ、部長だよ。異例の出世だったらしい。俺は戦闘を見たことないが先輩たちをことごとく凪ぎはらって勝利したらしくて、一年の時に部長の座を射止めたって話しだ。お前らも知ってるだろ?牧野美弥。彼女だよ、俺はその他の連中にやられちまったから、戦闘事態は見たことねーんだ。それに内田紗耶香もなかなかだぞ、スナイパーをやらせれば完璧に敵を撃ち抜く正確さがほんとにやってらんねーぜ。奥田澪が突進をして敵を混乱させ内田紗耶香が混乱の最中に一人ずつ削っていくってのが厄介でな」
「うちの女子って結構つわものだったんだな?」
「あぁ、見た目によらずな」
橋を渡りきると車の音が聞こえてきた。
慌てて橋の下に身を隠す。すると車はあっという間に通りすぎていった。
身を隠していたから気づかなかったが、今通り過ぎていった車のなかに乗っていたのはさっき噂していた奥田澪が乗っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...