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第三話
3−1 自分だけのものにしたい
しおりを挟む友渕が熱烈に応援しているアイドル・厚海陽一郎の、ドスケベすぎる動画を見てから早一週間。
あの動画での陽一郎の姿が、友渕の頭の中を離れなかった。
体力がある方ではないのに、まさに『空っぽ』になるまで出し切った友渕。こんなにも無我夢中で自慰をしたことはないと、自分で自分が恐ろしくなる。
もはや脳内再生できるレベルで視聴し、自らを慰め、陽一郎への想いを募らせるという、無限ループ状態に入っている。
友渕にとって推しである陽一郎は、それほど狂わせる存在なのだ。
「陽一郎くん、本当えっろい……」
いわゆる賢者タイムに突入している友渕は、動画を音声なしで再生していた。
運が悪いことに、陽一郎が初めて玩具を使った動画の最後に込められた言葉を、友渕は一度も聞いていなかった。主な原因は、その前に友渕の体力が尽き果ててしまうからである。
そして動画を見る回数が重なっていくにつれて、あることが気にかかっていた。
「この動画、俺だけじゃなくて、他の貢いでるファンも見てるんだよな……」
陽一郎を一番応援しているのは自分であると、友渕は自負している。だが現実には、陽一郎を推しているファンは友渕以外にも少なくない。
裏チャンネルの噂が流れるほどなのだから、あの映像を自分以外のコアなファンが見ていたとしても不思議ではない。
「ううう嫌だ! 陽一郎くんのこんなえっろい姿を、俺以外の人間が見てるとか考えたくない……!!」
この一週間で何度見たか分からない『under side』のロゴと、数本の動画。
これを自分だけではなく、他のコアなファンも見ているのかと思うと、友渕は胸が苦しくなってしまう。
陽一郎を独占したい。自分だけの陽一郎でいてほしい。
あのような淫らな姿は、自分の前だけで見せてほしい。自分の欲望を、広い心と逞しい身体で受け止めてほしい。
自分が陽一郎に向ける熱量と同じくらいに、愛を向けてもらえたら。
「ダメだ。これ明らかに害悪オタクの考えだ……」
思考が欲望まみれになってしまったところで、友渕は正気を取り戻した。
アイドルである陽一郎と、ただのファンである自分。そこには越えられない、越えてはいけない一線がある。
それなのに、友渕は陽一郎と『繋がり』を持てたらと、考えてしまった。
「次にどんな顔して陽一郎くんに会えばいいか、分かんないよーー!!」
臆することなく『推しにガチ恋』宣言をしている、友渕にグリスタを布教した、友人かつ職場の同僚でもある片岡ならいざ知らず。友渕はそんなことを考えてしまう自分に対して、罪悪感を抱いていた。
そして陽一郎と今後どう接していけばいいのか、考えを巡らせるのであった。
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