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「そういえば君の顔はあの連続殺人事件の犯人の顔に似ているな」
そう言って男は笑ったが、内心スベったかなと思った。こういう冗談はスベると相手がよく思わないので尚タチが悪い。
「おっ、言ったわねー」
女は穏やかな口調でその冗談に乗って来る。そしてふざけてドライバーを握ってこちらに向けた。
「怖い怖い何やってんの」
距離は二メートル程の距離だし、女は冗談でやっている。そう分かっていても男は薄ら寒いものを感じた。
「そっちが煽ってきたんでしょうが」
女はドライバーを机に置き、こちらに近づいて来ると、今度はハサミを掴んでこちらに向けた。普段は強気な男が怖がっているのが楽しくなって来ているのかもしれない。
「さっきより距離近くなってるから! 危ない危ない」
少し不快感を込めた声で男がそう言うと、女はハサミを手放し、代わりにボールペンを握りこちらに向けた。もう一メートルくらいの距離しかない。
「私が刺すと思ってるの? バカじゃない? そんなことする訳ないでしょ」
「いや、怖い怖い。武器が近くにあれば、訳分からなくなって間違えて刺しちゃうかもしれないだろ」
「は? そんなこと言ったらみんなそうでしょ?」
「まぁそうかもしれないが、とにかくやめろ、どんどん近くなってるから!」
「近くなったからってなんなのよ、こっちが悪いみたいに言って!」
「そっちが悪いに決まってんだろ! 刃物とか持ち出してバカじゃないのか? ただの冗談って言ってるじゃねえか!」
「は? もうやめよ? それ以上ふざけたこと言うなら本気で刺すよ?」
女が怒るほど、男の恐怖は増した。
「やめる、やめるとも。でもほら、結局本気で刺すとか言ってるじゃん。言葉がさっきから矛盾してるんだよ。だから怖いんだよ」
「あんたがふざけたことばっかり言ってるからでしょうが!」
そう言って女がボールペンを振り上げる。
「何してんだよ!」
そう言うと男は女を突き飛ばした。狭い部屋だ、女は後ろの柱と机にぶつかった。上に乗っていたコピー機が下に落ちて激しい音を立てる。
「だ、だいじょ」「や、や、やったわね!」
女は咄嗟にまた武器を持ってこちらを見て振り上げる。分かってないのか今度はハサミだ。
「この嘘つきめ」
男は小さく呟くと、素早く女の腹に蹴りを入れた。女は床を転がると身を屈ませながらこちらを睨む。その姿はサーバルのようにしなやかな姿勢で、目は激しく怒りに満ち瞳孔が開いていて、何故か異様に美しく見えた。
そしてそれが男の最後に見た景色だった。
そう言って男は笑ったが、内心スベったかなと思った。こういう冗談はスベると相手がよく思わないので尚タチが悪い。
「おっ、言ったわねー」
女は穏やかな口調でその冗談に乗って来る。そしてふざけてドライバーを握ってこちらに向けた。
「怖い怖い何やってんの」
距離は二メートル程の距離だし、女は冗談でやっている。そう分かっていても男は薄ら寒いものを感じた。
「そっちが煽ってきたんでしょうが」
女はドライバーを机に置き、こちらに近づいて来ると、今度はハサミを掴んでこちらに向けた。普段は強気な男が怖がっているのが楽しくなって来ているのかもしれない。
「さっきより距離近くなってるから! 危ない危ない」
少し不快感を込めた声で男がそう言うと、女はハサミを手放し、代わりにボールペンを握りこちらに向けた。もう一メートルくらいの距離しかない。
「私が刺すと思ってるの? バカじゃない? そんなことする訳ないでしょ」
「いや、怖い怖い。武器が近くにあれば、訳分からなくなって間違えて刺しちゃうかもしれないだろ」
「は? そんなこと言ったらみんなそうでしょ?」
「まぁそうかもしれないが、とにかくやめろ、どんどん近くなってるから!」
「近くなったからってなんなのよ、こっちが悪いみたいに言って!」
「そっちが悪いに決まってんだろ! 刃物とか持ち出してバカじゃないのか? ただの冗談って言ってるじゃねえか!」
「は? もうやめよ? それ以上ふざけたこと言うなら本気で刺すよ?」
女が怒るほど、男の恐怖は増した。
「やめる、やめるとも。でもほら、結局本気で刺すとか言ってるじゃん。言葉がさっきから矛盾してるんだよ。だから怖いんだよ」
「あんたがふざけたことばっかり言ってるからでしょうが!」
そう言って女がボールペンを振り上げる。
「何してんだよ!」
そう言うと男は女を突き飛ばした。狭い部屋だ、女は後ろの柱と机にぶつかった。上に乗っていたコピー機が下に落ちて激しい音を立てる。
「だ、だいじょ」「や、や、やったわね!」
女は咄嗟にまた武器を持ってこちらを見て振り上げる。分かってないのか今度はハサミだ。
「この嘘つきめ」
男は小さく呟くと、素早く女の腹に蹴りを入れた。女は床を転がると身を屈ませながらこちらを睨む。その姿はサーバルのようにしなやかな姿勢で、目は激しく怒りに満ち瞳孔が開いていて、何故か異様に美しく見えた。
そしてそれが男の最後に見た景色だった。
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