33 / 162
第三章
これは……チートですね。
しおりを挟む
翌朝。
久し振りのジャンクフードでお腹を満たし。
お湯のシャワーを浴びて湯船で身体を温めて。
柔らかいベッドで一晩ぐっすり眠った。
日本で当たり前に享受してきたこれらの事が、どれだけ贅沢な事だったのかを痛感しつつ。
操舵室に戻れば、昨日の荒れ模様が嘘みたいによく晴れて、波はまだ少し高いが、比較的穏やかな天気。
甲板に出て日向ぼっこをしたら気持ち良いかもしれない。
だけどその前に。
「……どうやって動かすのかしらね、この船」
私は高校時代、水産系の高校に通っていたから、ボートや漁船は実習で乗る機会もあった。
しかし、フェリーなんて当たり前だけど客としてしか乗った事なんかない。
とりあえず舵輪に触ってみると。
「え……?」
何もせずとも、船は動く。
舵輪に触るだけで、私の思い通りに船が動く。
もしかして。これまでの船もそうだった?
一生懸命操縦してたのに……
だけど、今後も船はどんどん大型化していくだろう。
そんな船の操縦の仕方なんか勿論分からないんだから、このチートはありがたく受け取らなくては。
そして、改めて海図を確認する。
……と。
スクロールする指が、少しばかり長く画面に触れていた、その時。
「……ん?」
指がなぞった後に、赤い線が引かれた。
すると、舵輪も触っていないのに船が動き出す。
「え、自動操縦装置まで付いてるの?」
目的の、ここから一番近い教のある人里まで、あと少し。
そのすぐ手前まで、ラインを引いた。
船は早速動き出す。
「それじゃ、暇つぶしに釣りでもしよっかな」
※……※……※……※……※……※……※……※……※
「ああ、ようやく……! ここまで長かった!」
その様子を覗き見ていた、この世界の神は。
大きく安堵の息を漏らし、だらしなく椅子の背もたれに寄りかかった。
「フィーネを送ったのは正解だったな」
「……と言うか主様、最初から彼女を送っておけば、こんなに時間はかからなかったのでは?」
「うっ!」
図星を刺されて痛む胸を手で押さえ、そろりと目をそらす。
「……また一国。あの娘の捜索に乗り出したね。……自らの咎の尻拭いを全く無関係の、世界すら異なる者にさせようとするなど。今世の者らは全く以てどうしようもないな」
過去にももちろんどうしようもない国というのはあったけれど、大抵は良心的な他国の介入により、その手の国は早々に滅びてきたのだが。
「まさか良心的な国が殆ど残らないとは」
神はため息をついた。
「一石は投じた。その石がどんな波紋を描くか。その波紋にこの世界の民はどう動くか。それ次第で、この世界の運命は決まる――」
久し振りのジャンクフードでお腹を満たし。
お湯のシャワーを浴びて湯船で身体を温めて。
柔らかいベッドで一晩ぐっすり眠った。
日本で当たり前に享受してきたこれらの事が、どれだけ贅沢な事だったのかを痛感しつつ。
操舵室に戻れば、昨日の荒れ模様が嘘みたいによく晴れて、波はまだ少し高いが、比較的穏やかな天気。
甲板に出て日向ぼっこをしたら気持ち良いかもしれない。
だけどその前に。
「……どうやって動かすのかしらね、この船」
私は高校時代、水産系の高校に通っていたから、ボートや漁船は実習で乗る機会もあった。
しかし、フェリーなんて当たり前だけど客としてしか乗った事なんかない。
とりあえず舵輪に触ってみると。
「え……?」
何もせずとも、船は動く。
舵輪に触るだけで、私の思い通りに船が動く。
もしかして。これまでの船もそうだった?
一生懸命操縦してたのに……
だけど、今後も船はどんどん大型化していくだろう。
そんな船の操縦の仕方なんか勿論分からないんだから、このチートはありがたく受け取らなくては。
そして、改めて海図を確認する。
……と。
スクロールする指が、少しばかり長く画面に触れていた、その時。
「……ん?」
指がなぞった後に、赤い線が引かれた。
すると、舵輪も触っていないのに船が動き出す。
「え、自動操縦装置まで付いてるの?」
目的の、ここから一番近い教のある人里まで、あと少し。
そのすぐ手前まで、ラインを引いた。
船は早速動き出す。
「それじゃ、暇つぶしに釣りでもしよっかな」
※……※……※……※……※……※……※……※……※
「ああ、ようやく……! ここまで長かった!」
その様子を覗き見ていた、この世界の神は。
大きく安堵の息を漏らし、だらしなく椅子の背もたれに寄りかかった。
「フィーネを送ったのは正解だったな」
「……と言うか主様、最初から彼女を送っておけば、こんなに時間はかからなかったのでは?」
「うっ!」
図星を刺されて痛む胸を手で押さえ、そろりと目をそらす。
「……また一国。あの娘の捜索に乗り出したね。……自らの咎の尻拭いを全く無関係の、世界すら異なる者にさせようとするなど。今世の者らは全く以てどうしようもないな」
過去にももちろんどうしようもない国というのはあったけれど、大抵は良心的な他国の介入により、その手の国は早々に滅びてきたのだが。
「まさか良心的な国が殆ど残らないとは」
神はため息をついた。
「一石は投じた。その石がどんな波紋を描くか。その波紋にこの世界の民はどう動くか。それ次第で、この世界の運命は決まる――」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる