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幕間③
暗殺者の旅路
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「アルト、アルト……、アルト・レーヴェ……」
“アルト”は、今回の任務で与えられた新たな仮の名を自らに馴染ませる為、その名をひたすら舌に乗せ、小声で呟いていた。
何せ、他にやる事も無い。
町中でなら情報収集などやる事は幾らでもあるだろう。
……が、船の上では同じ様に暇を持て余した乗客達が、カード遊びに熱中していた。
あそこに割って入れば、うっかり負けて苛ついた男に絡まれないとも限らない。
あの程度の連中に負ける気はしないが、影としてはあまり目立ちたくはない。
同じ理由で、常に同じ空間に居続けなければならない者達相手に、下手に嗅ぎ回って不審がられてはたまらない。
故に“アルト”は一匹狼を気取って酒を飲み、周囲の会話に耳をそばだてる程度の事しか出来ず、その暇に名を呟いていた次第である。
「(まぁ、こんな場の会話に手がかりが混じってるとは思わないが)」
今回の任務には不要な情報も、いつか役立つかもしれない。
腕を鈍らせない為の訓練にもなって一石二鳥。
そうでも思わなきゃやっていられなかった。
「(国を出てからこっち、もう何日も経ってるのに海の真ん中から動かねぇじゃねぇか)」
グラスに残った最後の一滴を飲み干した“アルト”は、部屋へと戻った。
「あの辺に何かあったか? ……特に何もない島の集まりでしかなかったはずだが」
腰に付けた小さな瓶の蓋を開け、部屋に備え付けのコップにチョロチョロとそれを注ぐ。
「……そろそろ無くなりそうだな。はぁ、次の港で補充しなくちゃか。国を離れるごとに補充は難しくなるってのに」
モノクルに写る点は、人間の勢力の強い大陸が最も近い群島から離れようとしない。
「しかし、人の領域を離れようとしないって事は、やっぱり召喚を成功させやがったのはリアン大陸の国のどれか、か……」
阿呆な事を企んだ者達には憤りを覚える。
「喚ばれた奴に多少は同情するが。……まぁせめて苦しまない様に死なせてやる位しか俺には出来ないがな」
コクリ、と。グラスに注いだ血でゆっくり喉を潤していく。
基本、魔族と人間族は水と油の関係だ。
……そして、魔族の中でも吸血鬼は特に嫌われる事の多い種族だ。
獣人と魔族の関係はそれ程悪くはないが、それでさえ吸血鬼は嫌われがちなのだ。
だから、連邦国の外で血を手に入れるなら……狩りをしなくてはならない。
「ったく、難儀な一族に生まれちまったぜ」
血で汚れたグラスを洗い、アルトはようやく馴染み始めた名前を尚も口の中で転がしながら、ベッドに身を横たえた。
“アルト”は、今回の任務で与えられた新たな仮の名を自らに馴染ませる為、その名をひたすら舌に乗せ、小声で呟いていた。
何せ、他にやる事も無い。
町中でなら情報収集などやる事は幾らでもあるだろう。
……が、船の上では同じ様に暇を持て余した乗客達が、カード遊びに熱中していた。
あそこに割って入れば、うっかり負けて苛ついた男に絡まれないとも限らない。
あの程度の連中に負ける気はしないが、影としてはあまり目立ちたくはない。
同じ理由で、常に同じ空間に居続けなければならない者達相手に、下手に嗅ぎ回って不審がられてはたまらない。
故に“アルト”は一匹狼を気取って酒を飲み、周囲の会話に耳をそばだてる程度の事しか出来ず、その暇に名を呟いていた次第である。
「(まぁ、こんな場の会話に手がかりが混じってるとは思わないが)」
今回の任務には不要な情報も、いつか役立つかもしれない。
腕を鈍らせない為の訓練にもなって一石二鳥。
そうでも思わなきゃやっていられなかった。
「(国を出てからこっち、もう何日も経ってるのに海の真ん中から動かねぇじゃねぇか)」
グラスに残った最後の一滴を飲み干した“アルト”は、部屋へと戻った。
「あの辺に何かあったか? ……特に何もない島の集まりでしかなかったはずだが」
腰に付けた小さな瓶の蓋を開け、部屋に備え付けのコップにチョロチョロとそれを注ぐ。
「……そろそろ無くなりそうだな。はぁ、次の港で補充しなくちゃか。国を離れるごとに補充は難しくなるってのに」
モノクルに写る点は、人間の勢力の強い大陸が最も近い群島から離れようとしない。
「しかし、人の領域を離れようとしないって事は、やっぱり召喚を成功させやがったのはリアン大陸の国のどれか、か……」
阿呆な事を企んだ者達には憤りを覚える。
「喚ばれた奴に多少は同情するが。……まぁせめて苦しまない様に死なせてやる位しか俺には出来ないがな」
コクリ、と。グラスに注いだ血でゆっくり喉を潤していく。
基本、魔族と人間族は水と油の関係だ。
……そして、魔族の中でも吸血鬼は特に嫌われる事の多い種族だ。
獣人と魔族の関係はそれ程悪くはないが、それでさえ吸血鬼は嫌われがちなのだ。
だから、連邦国の外で血を手に入れるなら……狩りをしなくてはならない。
「ったく、難儀な一族に生まれちまったぜ」
血で汚れたグラスを洗い、アルトはようやく馴染み始めた名前を尚も口の中で転がしながら、ベッドに身を横たえた。
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