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第十二章

魔帝国オズ

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 「凄い、凄いけどこんな物々しい港は初めて見た……」

 まだまだ遠目ではあるけれど。

 これまでも巡視船が港に入る船に対し警戒している、と言うのは少し大きな港では珍しくはなかった。
 ……が、だ。

 「まさかその巡視船の護衛みたく戦艦が引っ付いてるとは……」

 戦艦ったって、帆船に大砲積んでる小型の軍船だけどもね。

 しかも港にはもっと大きな軍船がニ隻も停泊しているし、港には武器を持った、明らかな戦闘要員――それも同じ制服来てるところを見ると軍か警備兵かは知らないが何かの組織なのは間違いなさそう。

 「あー、あの国は魔族が多くてな。船に積まれた大砲もそれなりに脅威だが、それ以上に魔法が恐ろしいんだよ」

 「……同じ魔族としては大変恥ずかしい事に、あの国の魔族はいわゆる脳筋馬鹿なのが多くてな。知的な奴は数少なくて、頭がある程度良ければ国に囲われる。が、王や側近、城の役人まで頭で考えるよりまずぶん殴るの事を選ぶやつが大半でな。実に短絡的な国なんだよ」

 「……脳筋で短絡的はウチの王も似たようなモンだな。だからこそ種族間抗争をネタにしょっちゅうドンパチやらかしてるんだ」

 「その脳筋な連中を女帝は心底嫌っていてな。故に我が国とも仲は良くない」

 「けれど、大国と言われる国の一つである事は間違いありませんよ? ……その、人間の国ではございませんので我が神国とは付き合いのない国ではありましたけれど、これほどの大国が混乱すれば、周辺諸国は嫌でも影響を受けます……!」

 「そういう訳で、女帝も滅びまでは望んでいない。……そして下手に“魔王”を引きずり下ろしても面倒な事になる」

 「ん、魔王? そんなものは居ないと神様が言ってなかったっけ?」

 「ああ。“自称”魔王だからな。しかし魔族であるから人間より寿命は長く、単純な戦闘力も高い。そして力こそが正義という連中の集まりだけあって、一番強い王を崇める事を国民は疑問にも思わない。故に、この国の中だけでは奴は“自称”ではなく魔王と呼ばれている」

 そして、王の譲位は正式な決闘でのみ行われる、らしい。

 「どんなに強かろうが、年には勝てん。いずれ若手に抜かれていくもの。王が負ければ、王を負かした者が次代の王となる、がだ。
 その正式な場以外で不意打ちなんかしてみろ、そいつは国の恥晒しとして忌み嫌われる。
 例え公爵位の者であっても、やらかした後はあの国の最下層の民が罵っても不敬罪には問われない。そんな国だ。
 王の政策に異をとなえるなら、正面から堂々と王に勝たにゃならん。
 少なくとも俺がアイツに勝つのは万に一つもあり得ない」

 ……前回がイージーモードだったのは分かってるけど。
 ちょっと突然難易度一気に上がり過ぎじゃありませんかね、女帝様!
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