上 下
147 / 162
第十四章

難民保護指令

しおりを挟む
 広すぎる船内に、私達だけだった頃に比べ、研究者とドワーフが増え、一気に船が賑やかになった。

 ……と言ってもまだまだスペースに余裕はあるんだけど。

 それを知ってなのか。
 女帝から新たな指令が下った。

 しかし今回の指令は召喚云々ではなく。

 「……は? なんで私が難民保護までしないといけないの?」

 研究者の件は、オズに諦めさせる為に必要だったし、今彼らには召喚が無効になる魔法の開発を進めてもらっている。
 ドワーフには彼らの研究に必要な道具の作成と、他、作品は寄港地で売って現金に替えたりしてるし、役立ってくれている。

 「国が安定してない? 食えない子がいる? 今にも死にそう? 私が知るか。女帝が保護すればいいじゃない」

 しょうもない国の、しょうもない為政者の犠牲者。そう言われれば可哀想には思うけど、私に保護義務なんて無いよね?

 「……貴重な技術者なんだ。出来れば保護して欲しい」

 逃げ隠れするには絶好の船だからね。

 「私、召喚術の件については私も消えたくないから承諾したけどさ。世界の平和だの見も知らない人達の生き死になんて私にはどうでも良い事な訳。なのに何で女帝は私を便利に使おうとしてるの?」

 証明書云々の対価だとしても、召喚術の対応で充分足りてると思うんだよね。

 そう言って拒否したら、女帝からお呼び出しがかかった。

 お叱りのつもりかしらね?
 勿論行かねーよ!

 そう返事するようアルトに言った。
 ……とは言え。彼女の直属だからね、彼。そんな返事を送れるはずもない。

 新たな刺客が送り込まれても面倒だし。

 ハァ、仕方ない。自分できっちり断りに行こう。

 「その代わり、私達は城には行かない、話があるなら港でしましょう、と返事をしておいて」

 すぐに逃げる術のない相手の懐で、なんて不利な状況でのお説教なんか聞くか。

 言い逃げって言いふらされても良い。

 やりたくない仕事を無理矢理押し付けられてたまるか!

 その返事は渋々ながら出してくれたアルトに免じて、私は船をウィズリア連邦国へと向けた。

 さーて、実にならないオハナシアイより、お勉強しよう。
 錬金術、面白そう。

 私もそろそろドワーフさん達に道具を頼んでみようかな?

 「あのー」

 「おう! 主様か! どうした?」

 「……その主様って呼び方止めてくれませんかね?」

 「いやいや、俺たち全員雇って給金くれて、親も嫁も子供も暖かくて安全な寝床とうまい飯に加えて娯楽に勉強まで与えてもらってるんだ。その主様のためならどんな仕事だってやるぜ!」

 「……。なら、これを作ってくれない?」
 
しおりを挟む

処理中です...