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第十四章

女帝襲来

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 ――今回ばかりは、と。

 港へは帆船ではなく潜水艦のまま近づいた。

 勿論巡視艇が慌てて数隻近づいて来たが、アルトに出て貰って取り敢えずは“穏便に”入港。
 女王の到着待ちする事になった。

 今回は中身豪華客船仕様の潜水艦で来てるから、外に宿を取る必要なんて皆無なのだよ。

 女王が来たらこの船にご招待する、と伝言を飛ばして貰って待機。

 女王はその知らせから一週間後に、豪奢な馬車の隊列でやって来た。勿論お付きの人達もいっぱい。

 全員乗せようと思えば乗せられるんだけどね。
 残念な事に戦艦て、外部への攻撃手段は多々あれど、内部に侵入されちゃうと、ね……。結局白兵戦になっちゃうわけよ。
 そしたら多勢に無勢、相手はプロ集団。
 勝てるわけ無いだろが!

 なので、女帝と侍従侍女一人ずつと護衛の近衛騎士一人に乗船許可を出した。女帝以外の人選はあちら任せで。

 その位の人数なら、拳銃でも倒せるでしょ。
 ……賊じゃない人殺しは……良心が咎めるけど、平和で法律やら何やらに守られていた日本と違って、戦わなきゃ私は良いように使われるだけなんだから、そこは覚悟を決めなきゃならない。

 女帝到着から半日。

 翌日の会談を求められた。
 参加人数を改めて注意しつつ了承の意を伝える。

 翌朝。

 アルトを迎えに立たせる。

 「ふむ。すっかりあの娘の従者が板についたか、7番?」

 「……やむを得なかったとはいえ、血の契約を交わしてしまっていますから。陛下の部下ではありますが、陛下が彼女に危害を加えようとすれば、俺は契約から陛下に刃を向けるでしょう。そうならぬ様願っておりますが」

 アルトの言葉に近衛が憤り、剣に手を添えた。

 「……よい。これを危険な任務に当たらせた、それ故の結果。ならば少なくとも命令を下した本人たる者がそれを責められはしない。だが、こちらも譲れぬものはあると心得よ」

 「……可能な限り穏便な結着になる事を強く望みます」

 そして、彼の先導で船に一歩足を踏み入れた女帝一行は。

 まず足を止め、呆然と目の前の光景に見入った。

 そこはセントラルホール。
 吹き抜けで複数階層が見渡せ、豪奢なシャンデリアが輝くホール。

 2000年代地球の技術がふんだんに織り込まれた空間に、誰も言葉が出ない模様。

 さて、呆けている皆さんをレストランにご案内しますか。
 お店のチョイスは、母国の味を知っているアルトの勧めでイタリアンレストランにした。

 「難しい話は後にして、まずはお食事をどうぞ」

 イタリアンのフルコースを振る舞った。

 フフフ、高い上にそんな洒落た料理よりカルボナーラスパゲティの方が美味しいと感じる庶民な私も、まだ食べた事のない特上コースのお味は如何ですかね、女帝様?
 
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