唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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スキル「クリエイト」を獲得しました。

旅の話を聞かせて貰いました。

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    プログラム最終日の今日、私を荷物込みで家へ送り届けてくれるはずのお祖父様。
    「ははは、 流石は我が孫娘!    ……なんだがのぅ、アンリや。ここ数日俺は勿論カーライルのもちぃと忙しくしておってな」
    どうやら私への問い合わせに対応していて手が空かないらしい。
    ……九割は自業自得な分、文句も言えないし。

    「で、実はな。その問い合わせをしてきた連中の中にユリスの旦那が居るんだ。アンリは旦那の話が聞きたいと言っていたろう?」
    つまり、ユリス商会の会頭さんが来るから、お祖父様の仕事が終わるまでお話を聞いてなさい、って事らしかった。
    私はそれで構わない――というか、むしろ嬉しいんだけど。

    「レイフレッド、貴方は……」
    「僕はさっさと帰るよ。遅く帰って余計ないざこざ起こしたくない」
    一緒に連れ帰ってお父様に説明しようと思ってたんだけど、レイフレッドに先手を打たれてしまった。
    「僕は教会近くのクルス慈善院て名の孤児院に居る。……本当にお前の父親を説得できたなら、その時は諦めてアンタの従者にでも何でもなってやるよ」
    なんだか意地の悪い顔で笑いながら言い捨て、一人で帰って行ってしまった。

    「アンリ、あの子と仲良くなったのかね?」
    「……さあ、彼の方はまだどう思っているかは分かりませんけど、私は仲良くしたいと思っていますわ。――お祖父様は反対なされますか?」
    「むぅ、種族の違いのみで人を見下す愚を頭では理解しておる。だが、感情の方は中々に難しい。何より奴は男だ!    可愛い孫娘を心配して何が悪い?」
    「まぁ、お祖父様。私を心配して下さるのは嬉しいですけど、私の側から全ての男性を排除してしまうおつもりですか?    ……会いにも来て下さらない将来の以外と仲良くするなと仰せですか?」

    爺馬鹿発言をするお祖父様に潤んだ目を向ける。
    「……我ら平民は貴族には逆らえん。だが奴らが誠意無く押し付けてきた取引にこちらばかり誠実に応対するなど馬鹿らしいの。しかし、連中の機嫌を損ねればどう言い訳しようと終いじゃ」
    うっと怯んだお祖父様は苦々しい顔をした。

    ……お祖父様は職人ギルドのギルドマスターだ。
    お貴族様が日々使っている物を作っているのは平民の職人。
    直接商取引を行う商業ギルド程でなくも貴族とのやり取りに振り回される事もあるだろう。
    「貴族は理不尽なもの。どんな言いががりを付けられるか分からん、あまり危うい橋を渡るのは感心せん」
    その言葉には単なる爺馬鹿なだけでない重さが含まれていた。

    「アンリ、お前は賢く才能にも恵まれておる。よくよく進むべき道を見極めろ。よく考えた上で出した答なら、それは最後まで責任もって進め」
    「……はい、お祖父様」
    「それ、そこの部屋にユリスの旦那が居る。時間になったら呼びに来るからな」
     「ありがとうございます」

    歩くごとに内装の様子が少しずつ変わり、この辺りの区画は職人ギルドにしては小洒落た装いになっている。
    お祖父様が開けてくれた扉の向こうは応接用の部屋のようで、お茶の仕度がなされたテーブルを挟んで対のソファーが置かれている。
    「おお、このお嬢さんがカーライル君の娘さんかい?」

    小柄。丸顔にメタボ腹。波平ヘア。
    この取り合わせとしては随分と可愛らしいおっちゃん。
    小太りではあっても脂ぎった様な不潔な感じは皆無だし、顔つきもニコニコと人畜無害な笑みを浮かべているから、つい警戒心が薄れてしまう。

    ……でも、本当に人畜無害な人間では大商会の会頭の地位には立てない。
 
    「先日はウチの愚息がご挨拶させていただいたと聞いておりますが、改めてご挨拶を。私、ユリス商会会頭のスレイ=ユリスと申します」
    「初めまして、アンリ=カーライルです。先日は私こそ興味深いお話を聞かせていただきまして」
    私は最大限に気を張って挨拶をする。
    「ユリス様にお会いできたら、是非旅のお話を伺いたいと思ってましたの」

    「……あー、ユリスの旦那、そう言う訳だからまぁしばらく頼むわ」
    「これは噂通り――いや噂以上の様で。事情を知らなければ、孫の嫁にと口説いていたでしょうな」
    そうか、この人は例の婚約話を知ってる人なのか。
  
  「ではお嬢さん、何からお話ししましょうか」

    改めてソファーに座り直し、新しくお茶を用意してもらう。
    そうして長いお喋りを始める。

     この人、こんな見かけで冒険者ギルドのギルドカードを 持っていた。

    曰く、最低限の自衛も出来ない者は例え護衛付きでも旅になど出るもんじゃない、と。

    「魔物や野盗相手にして勝てるなら勿論それが一番だがね。それに勝てる護衛が居るなら、自分で負かす必要はない。だが、最低限護衛の邪魔にならない様に自衛できる位の実力は必要だ」
    敵を相手にパニックになったり人質に取られたりするのは最悪だ。

    無論、旅の間の粗末な食事や野宿に耐えられる等はごくごく当然。

    「自分で馬を操れぬなら、御者と護衛は別に雇うべきだね」
    護衛の手は常に空けておくべきで。
    「野宿が必要な旅なら最低でも二人は護衛が要る」
    夜の見張り番など、きちんと考えていなければ、あっという間に命の危機。

    前世の様な気軽な旅は辻馬車が常に運行されているような整備された街と街道でしかあり得ない。

    「ですが、それだけの投資と危険に見合うだけのものは得られた。無計画で無謀な旅は失うばかりですが、計画的で慎重な旅ならば得るものは確かにあるのです」

    他にも実体験に沿った彼の経験談は途中自慢話も混じったけど、おおむね参考にすべき貴重な情報が多くあった。

    お祖父様が迎えに来るまでたっぷり喋り通し、私は大満足で一週間ぶりの我が家に帰った。

    そして。
    「お父様、お話しがあります」

    私が見出だした道を進むため、お父様との交渉に臨んだ。
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