唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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波乱含みの旅路で。

見返り? ナニソレ美味しいのかしら。

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   「嘘……って事はやっぱり怪我してるんでしょう?」
   「かすり傷です。吸血鬼の僕ならすぐ治るこの程度で怪我したと騒いでは冒険者は務まりませんよ」
    私の問いにレイフレッドはふいと横を向く。

    「そうね。本当にかすり傷ならその程度の怪我は日常茶飯事の冒険者は失格よ。……かすり傷なら、ね」
    「……お嬢様?」
    「いい、ちゃんと治療しないといけない傷を放っておいて悪化させるのも冒険者として失格なのよ。……さあレイフレッド、貴方の怪我は本当にかすり傷?」
    私はレイフレッドに迫る。

    「……ゴブリンの剣で突かれた傷が幾つかと引っ掻き傷が少々、ですが――」
    「あはは、格好付けて。……ゴブリンの錆び錆びの剣の傷は見た目大したことなくても毒が回ると厄介だよ。まあ吸血鬼の大人ならその程度の毒くらいなんて事ないけど君みたいな子供じゃまだ抵抗力も弱い。血ぃ吸っとかないと厳しいよ?    そうだろう、シリカ?」
    「あたしは学者なんでね、旅の道中やフィールドワーク中の自己防衛の為に冒険者ギルドにも加入してるが、本来戦いは専門じゃない。それでも、今の戦いに無駄が多かったのは見てとれたな」
    「……」

    ようやく明かしたレイフレッドに厳しい言葉を連ねる二人。
    「無駄、ですか?    私には凄く綺麗な戦い方をしてるように見えたのに……?」
    あれだけ沢山のゴブリンの相手をしたんだから多少の怪我は当然と思っていた私は少しムッとしながらも、今はレイフレッドに血をあげる方が先だと服に手をかけた。
    ……スコットさんが居るから、手首からでいいよね?

    「ウン、派手に動き回って格好は良かったよ。けど、見世物の剣舞と実戦は別物だよ。余計な動きが多すぎて隙が出来てたから怪我をした。……君の実力なら本当は無傷で倒せたのに、勝手に格好付けて怪我してお嬢さんの血を余計に必要とする状況を作り出した」
    なのに、スコットさんが腕まくりをしていた私の腕を掴んだ。
    「ねえ、彼は君が見返りもなく血を差し出すのに本当に相応しい相手だと思ってる?」

    「おい、アンタお嬢様に触れるな……!」

    「君はとても希少な人材だ。王に願い出れば王家の庇護のもとで一生好きに生きられる。わざわざ吸血鬼の加護を受けるために血を差し出す必要は無いんだよ……?」
    「は?    私はそんなもののために血を差し出したつもりはありませんよ?    王家の庇護にも吸血鬼の加護にも興味ありませんから。でも、レイフレッドは必要なので彼を側に置く為にしている事です。見返り?    側に居てくれたらそれで十分です。さあ、手を放してくださいな」
    成人男性姿のスコットさんの力は強くて、私の力では振りほどけない。

    「こんな、妖精族よりひ弱な人間が?    人間の国の中で大人しく暮らすならともかく、魔族の国に自分一人アウェーな状況で飛び込もうとしてるのに……?    僕より強い魔族なんていっぱい居るよ?」
    ……一応これからまだ一緒に旅をする相手だからと我慢してたけど、そろそろいいかな?

    「……手を放して。でないと私も抵抗しますよ」
    一応、警告はした。
    「ははっ。人間のお嬢ちゃんに何ができ――」
    「水よ出でよ、氷結しこの者の腕を固めてしまえ!」
    「ウギャ!」

    水で濡らしてやった腕をそのまま凍りつかせてやれば、その冷たさを痛みと感じたスコットは反射的に私の腕を放した。
    「確かに腕力体力は劣るでしょうが、全く反撃手段が無い訳じゃありません。……レイフレッドの補助があれば尚更に」
    自由になった腕をレイフレッドに差し出す。

    「そもそも私達の戦闘訓練は二人で戦うことを前提としていました。……ルクスドでは初心者独りでゴブリンの群れを相手にするなんてまず無いですし。誰でも最初は失敗するのが当たり前なのに、叱責や指導ならともかくレイフレッドを貶める発言は許せません」
    怪我を隠したのは良くない事だったけど。
    「レイフレッドはちゃんとゴブリンの群れから私を守ってくれたもの。レイフレッド、ありがとう。とっても格好良かったけど、次は怪我しないように戦ってよね」
    「お嬢様……」
    「ほらほら、明日も明後日も旅は続くんだから。レイフレッドが動けなくなったら誰が私を守ってくれるのかしら?」

    「――僕が。次こそ完璧にお嬢様をお守りしてみせます」

    ……って。あれ。何でレイフレッドは泣いてるの。何、私が泣かせたのかしら?
    「れ、レイフレッド……!?    わ、私は別に怒ってる訳じゃないからね……!?」
    取り敢えず動揺しまくりの私は落ち着かせようとレイフレッドの黒髪に触れ頭をなでくりまわす。
    ……もふもふとは違うけど、なんか触り心地が良い。
    「ほら、いいから早く血を飲みなさい!」

    「……シリカさん、助けて下さい」
    「さてな。流石にやり過ぎた君の自業自得の結果まで助けるべきなのかな?」
    「いやだって。あんなパートナー見たこと無いですよ。何ですかあれ。もうパートナーじゃなくてつがいですよアレ」
    「知らないんだ、仕方あるまい。だが自らの目で見れば自ずと気付くだろう。その上での事なら私も擁護くらいはしただろうがね。あの子達は吸血鬼の生き方を知らない。知らなくて当然の環境に居たんだ。それを知っていてのアレはやりすぎだ」

    「……はぁ。本当にあの子、血を吸われる事に何の抵抗も無いんですね」
    「どうかな。他の男の相手は嫌がるんじゃないかね、アレは」
    「すごい子引き当てたもんですね。とんでもないハードモードになるはずが凄いイージーモードでのクリア……。恨まれそうですね、まだパートナーが決まってない成人間近な崖っぷち組に」
    「……まあそれとなく警告はしておこう」
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