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波乱含みの旅路で。
国境の街に着きました。
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「……えーと、ご、ごめんなさい」
翌日。
今日はレイフレッドはシリカさんと前の馬車に、スコットさんが私の馬車に乗っている。
「それは何に対する謝罪ですか?」
「え? あー、流石にちょっと言い過ぎちゃったからねえ。……シリカにも叱られたし」
今の彼は可愛いマスコット姿。
……あざとい奴である。これはシリカさんよりよっぽどくせ者だ。
今日中には国境の街ムーアに着く。そこから魔族の国の側の国境の街ヒースまで一日。
シリカさんの国まではまだそこから距離はあるけど、明日には魔族の国に入る。
「でもさあ、やっぱり思っちゃうんだよね。何で妖精族よりひ弱な人間が魔族の中でも強い種族で、人間に嫌われる種族ベスト3に入るような吸血鬼と契約も結ばないまま平気で血をあげられるのか。その気になればくびり殺す事も血を吸い尽くす事だって簡単なんだよ?」
スコットさんはどうしてもそこが納得いかないらしい。
「……レイフレッドとの初対面だったあの時、吸血鬼だと言われて邪険にされていた彼に初めて血をあげた時。正直にいえば同情と好奇心……野良猫にエサをやる様な気持ちが無かったとは言えません」
異世界に転生して初めて会った異種族。確かにあのとき私はうきうきと浮かれ興奮していた。
「……でも、二回目以降はレイフレッドだからあげても良い――いいえ、あげたいと思っています」
毎日の生活の中で一つずつ積み上げてきたものが確かにある。
「もしあそこに居たのが私の婚約者様のような輩であったら私は間違いなく捨て置いたでしょう」
あんな男を側に置いて養うなんて絶対嫌だ。
「逆に彼が吸血鬼以外の種族だったとしても私は彼を側に置いたわ。……例えば悪魔だったとして――会ったその日に魂をくれと言われたら困ったと思うけど。今ならあげられる」
この世界の悪魔はあくまで神眼石を持つ広義での同種。だから魔界になんか行けないし、魂をムシャムシャ食べるなんて事も出来ない。
ただ、神眼石に貯まっていくスキルやステータスをあげる〝何か〟を横取りして食べる契約を結ぶスキルを持っているという。その〝何か〟を魂の力とこの世界では呼ぶ。
「……でもさ、分かってる? 僕らパートナーはどう言い繕ったところで所詮吸血鬼の餌だ。吸血鬼が番――生殖のパートナーを選んだら、ピンチの時以外はやっぱり番や子供が一番になる。……もう側には居られなくなるよ?」
「……そうならない様に今必死に努力してるんです」
「――へぇ、自覚はあるんだ」
「さあ。残念ですが明言は出来ない立場なので何とも言えませんね」
名前の通り、荒れ野がどこまでも続く平原の中の街が、夕暮れ近くなってようやく見えてくる。
「今日は久々に宿とって休むぞ」
門での検問を終えて街に入る。
「あー、酒飲みたいです。道中飯は嘘みたいに充実してましたけど、旅の間の酒は怖くて飲めませんからね」
寒い時の一杯までは許されても、夜の見張りや馬車の運転など酔っ払っては命にかかわる案件はいくらでもある。
……まだ子供の私達には関係ない話だけどね。でもまあ私も食材の仕入れはしたい。
「宿だけ先に決めて夜まで別行動、寝て起きたら出発で良いんじゃない?」
と、いうわけでやって来ました市場!
「やっぱり街によって市場の感じも随分違うのね」
国境の街なのだから珍しい物があるのではと期待したが、むしろルクスドの市場の方がずっと充実していた。
荒れ野の中の街だからか、魚介は干したものや加工品ばかりだし、野菜も少し萎びている。
代わりに畜産が盛んなようで肉や卵は新鮮なものが並んでいる。
スパイスの類いや酒も豊富。
「うーん、新鮮な野菜が欲しかったんだけど……。でも卵が新鮮なのは嬉しいわね。おじさーん、そこの卵一籠と鶏肉二羽ちょうだい!」
「あいよー!」
アイテムボックスに入れれば鮮度は保たれる。
……同行者の目を誤魔化すために馬車に魔道具の冷蔵庫を付けたけど、やっぱりアイテムボックスにしまうのが一番確実。
補充できなかったのは痛いけど、ルクスドで買った新鮮な野菜はまだ残ってる。
「ヒースもここと似た環境だって聞くし、もうしばらく野菜の補充は厳しいかな……」
「お嬢様、料理屋なら美味しく調理された野菜が食べられるのでは?」
「うーん、市場の様子を見る限りはここはお肉が美味しい街だと思うわよ? レイフレッドはお肉の方が良いんじゃない?」
「――いえ。……昨日、スコットさんに言われるまで僕は全く気付けていませんでした。お嬢様が食事にとても気を使ってらっしゃると」
「え? あー、そりゃなるべく片寄った食べ方しないようにはしてるし、ビタミン鉄分たんぱく質は気を付けて摂るようにはしてるけど。そんな何かのアスリートみたくストイックな事はしてないからね? せっかくご当地の美味しいものがあるんだから、素直にそれ食べよう!」
……スコットさんめ。他にも何か余計な入れ知恵してないだろうな。
「分かりました。でも、よろしければ後でその話、詳しく教えていただけますか、お嬢様」
「まあ素人知識だけど、栄養の知識はあった方が良いか。じゃあいつもの自習時間に順を追って教えるわ」
「ありがとうございます、お嬢様」
翌日。
今日はレイフレッドはシリカさんと前の馬車に、スコットさんが私の馬車に乗っている。
「それは何に対する謝罪ですか?」
「え? あー、流石にちょっと言い過ぎちゃったからねえ。……シリカにも叱られたし」
今の彼は可愛いマスコット姿。
……あざとい奴である。これはシリカさんよりよっぽどくせ者だ。
今日中には国境の街ムーアに着く。そこから魔族の国の側の国境の街ヒースまで一日。
シリカさんの国まではまだそこから距離はあるけど、明日には魔族の国に入る。
「でもさあ、やっぱり思っちゃうんだよね。何で妖精族よりひ弱な人間が魔族の中でも強い種族で、人間に嫌われる種族ベスト3に入るような吸血鬼と契約も結ばないまま平気で血をあげられるのか。その気になればくびり殺す事も血を吸い尽くす事だって簡単なんだよ?」
スコットさんはどうしてもそこが納得いかないらしい。
「……レイフレッドとの初対面だったあの時、吸血鬼だと言われて邪険にされていた彼に初めて血をあげた時。正直にいえば同情と好奇心……野良猫にエサをやる様な気持ちが無かったとは言えません」
異世界に転生して初めて会った異種族。確かにあのとき私はうきうきと浮かれ興奮していた。
「……でも、二回目以降はレイフレッドだからあげても良い――いいえ、あげたいと思っています」
毎日の生活の中で一つずつ積み上げてきたものが確かにある。
「もしあそこに居たのが私の婚約者様のような輩であったら私は間違いなく捨て置いたでしょう」
あんな男を側に置いて養うなんて絶対嫌だ。
「逆に彼が吸血鬼以外の種族だったとしても私は彼を側に置いたわ。……例えば悪魔だったとして――会ったその日に魂をくれと言われたら困ったと思うけど。今ならあげられる」
この世界の悪魔はあくまで神眼石を持つ広義での同種。だから魔界になんか行けないし、魂をムシャムシャ食べるなんて事も出来ない。
ただ、神眼石に貯まっていくスキルやステータスをあげる〝何か〟を横取りして食べる契約を結ぶスキルを持っているという。その〝何か〟を魂の力とこの世界では呼ぶ。
「……でもさ、分かってる? 僕らパートナーはどう言い繕ったところで所詮吸血鬼の餌だ。吸血鬼が番――生殖のパートナーを選んだら、ピンチの時以外はやっぱり番や子供が一番になる。……もう側には居られなくなるよ?」
「……そうならない様に今必死に努力してるんです」
「――へぇ、自覚はあるんだ」
「さあ。残念ですが明言は出来ない立場なので何とも言えませんね」
名前の通り、荒れ野がどこまでも続く平原の中の街が、夕暮れ近くなってようやく見えてくる。
「今日は久々に宿とって休むぞ」
門での検問を終えて街に入る。
「あー、酒飲みたいです。道中飯は嘘みたいに充実してましたけど、旅の間の酒は怖くて飲めませんからね」
寒い時の一杯までは許されても、夜の見張りや馬車の運転など酔っ払っては命にかかわる案件はいくらでもある。
……まだ子供の私達には関係ない話だけどね。でもまあ私も食材の仕入れはしたい。
「宿だけ先に決めて夜まで別行動、寝て起きたら出発で良いんじゃない?」
と、いうわけでやって来ました市場!
「やっぱり街によって市場の感じも随分違うのね」
国境の街なのだから珍しい物があるのではと期待したが、むしろルクスドの市場の方がずっと充実していた。
荒れ野の中の街だからか、魚介は干したものや加工品ばかりだし、野菜も少し萎びている。
代わりに畜産が盛んなようで肉や卵は新鮮なものが並んでいる。
スパイスの類いや酒も豊富。
「うーん、新鮮な野菜が欲しかったんだけど……。でも卵が新鮮なのは嬉しいわね。おじさーん、そこの卵一籠と鶏肉二羽ちょうだい!」
「あいよー!」
アイテムボックスに入れれば鮮度は保たれる。
……同行者の目を誤魔化すために馬車に魔道具の冷蔵庫を付けたけど、やっぱりアイテムボックスにしまうのが一番確実。
補充できなかったのは痛いけど、ルクスドで買った新鮮な野菜はまだ残ってる。
「ヒースもここと似た環境だって聞くし、もうしばらく野菜の補充は厳しいかな……」
「お嬢様、料理屋なら美味しく調理された野菜が食べられるのでは?」
「うーん、市場の様子を見る限りはここはお肉が美味しい街だと思うわよ? レイフレッドはお肉の方が良いんじゃない?」
「――いえ。……昨日、スコットさんに言われるまで僕は全く気付けていませんでした。お嬢様が食事にとても気を使ってらっしゃると」
「え? あー、そりゃなるべく片寄った食べ方しないようにはしてるし、ビタミン鉄分たんぱく質は気を付けて摂るようにはしてるけど。そんな何かのアスリートみたくストイックな事はしてないからね? せっかくご当地の美味しいものがあるんだから、素直にそれ食べよう!」
……スコットさんめ。他にも何か余計な入れ知恵してないだろうな。
「分かりました。でも、よろしければ後でその話、詳しく教えていただけますか、お嬢様」
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「ありがとうございます、お嬢様」
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